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14話 これからの話をしたい。
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♢
翌朝。
ソリアーノ家の兵らにより、父や妹が捕縛されたことを知ったのは、式場の控え室でのことだった。
「旦那様の横暴は日頃から目に余るものがありましたから、私どももどこか清々しておりますよ」
と、こう言うのはお付きのメイドたち。
昨日は無理を言って近場の街に宿泊してもらっていたが、私の無事を知るや式場まで駆けつけてくれた。
今は総出で、式へ向けてのセットアップをしてくれている。
ソリアーノ家からは祝い事を専門とするスタイリストの紹介があったけれど、辞退させてもらった。
日頃から、私の衣服や美容の管理をしてくれていたのはお付きの彼女らだ。
人生で一度きりの祝い事なればこそ、彼女らにお願いしたかった。
「エライザさまは、捕まってからもずっと自分は悪くない、この綺麗な自分じゃなくて姉を選ぶアルフレッドは気の狂った男だ、とか騒いでるんだそうです。
それが効かないとわかったら、色仕掛けまでやったとか。
でも貴族裁判院は、そのあたり厳しいから門前払いだったそうですよ」
我が妹ながら、呆れる。
安売りしすぎて、もう振りまく色香も残ってなさそうだ。
「旦那さま、いえ元旦那さまの方は、なぜか裸で目隠しをした状態で捕まったとか」
「ふふっ、それ私がやったの。エライザのフリをしてねぇ」
「あらあらバレッタさまも結構危ないことをしますね。でも、おかげで傑作な話を聞けましたわ」
父も妹も、使用人たちの中ではすこぶる評判が悪かったらしい。
下半身だけで生きてるのよあの二人、なんて発言を聞いた時には、はしたなくも、つい吹き出してしまった。
いけないいけない。結婚式の前なのだ。もっと凛として咲く花のようにーーなんて。
高望みはしない。
けれど、いつまでもアルフレッドの隣を歩ける女性であれるように。
せめて自分に胸を張って生きていきたい。
お衣装の着付けが終わる。メイクは自分でも少し弄って、あえてエライザに似ないよう気をつけた。
もう私の人生に、彼女のような歪んだ光はいらない。もう私は、暗闇だけを歩くのはやめたのだ。
準備が整い、時間がくる。廊下を伝っていけば、式場への扉が開いた。
一緒にバージンロードを歩く父はいない。
この手で切り捨ててきた。
けれど大丈夫だ。アルフレッドのところまでくらい、一人で歩いていける。
私はこれから、彼と幸せになるのだ。
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