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7話 因縁

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「ちょっと暗くなるわよ」

持ち合わせていた布で持って、目隠しもする。
さらには口を開けてもらい、頭の裏から巻いてきた布を咥えさせた。

父はそれでも、何の違和感も持たないらしい。

「なるほど、こう言うのもたまには面白いじゃないか」

と、口髭をぴくぴくさせていた。


正面に回り込んでみれば、なんとも情けない格好だった。
大の大人が騙されているとも知らず、ほとんど半裸の状態でベットに座っているのだ。

まるで目の前に虎がいるとも知らず、草をはみ続ける草食動物そのもの。

いつもいつも私を笑い物にしてきた彼のその無様さに、思いがけず溜飲が下がった。

つい笑いこぼしそうになって、手を口に当てる。

それから室内を見渡し目をつけたのは、彼が護身用に持っていた小刀だ。
獲物はすぐそこですでに罠に嵌っている。私は決して悟られぬよう慎重に、それを手にする。

「ここからどうするのだ? ワシはなにをすればいいんだ」

いまだ禁忌の欲望に溺れ、寝ぼけたことを宣う父。

「そうね、寝てればいいと思うわ」
「……え」

私はそんな無防備な頭に、思いっきり刀を叩きつけた。

万が一を考え、鞘は付けたままにしていた。
となれば、所詮は女の力である。一度では足りないかもしれないと、今度は首を狙う。

父は抵抗しようと暴れるが、身動きはすでに封じてあった。
手首を縛った布を強引にちぎろうとしているが、そう簡単にはいかないらしい。

「な、なにをする、エラ……!」
「めでたい人ね、あなた。最後まで何にも気づかないなんて」

積年の恨みを、一撃ごとに込め続けた。

父は悶え喘ぐが、口は封じていたので、ただの嗚咽にしかならない。
殴打の衝撃でベッドが軋むが、それが外に聞こえたところで何の問題もない。

警備員たちは、ただの激しい情事だと思い込むだろう。


父はやがて気を失い、うつ伏せに倒れた。

虫よりも、浅くひ弱な息とはいえ、息はある。
意識だけを落とすことに、無事成功したようだった。

よっぽど殺してやりたかったが、それで自分の明日が暗転するのは馬鹿らしい。

生かして、国の刑吏に引き渡し牢に突っこむつもりだ。
せいぜいそこで、重い罰に苦しむがいい。

最後に一発、横腹に殴打をくれてやりそれでやめにした。
これ以上は、ただの私怨になってしまう。
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