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6話 首ったけ

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「さぁまずはいつものごとく、布団でともな温まろうか、エラ。なにをするにも、まずはそれからだ」
「はい、この時間を楽しみにしておりましたわ」

昔は、父の腕の中に憧れた。愛されたくて、仕方なかった。

でも今は、いっそ吐き気がする。実際、嗚咽も漏らしてしまった。

娘を手篭めにするばかりか、その禁忌の愛に犯され、私を一度は亡き者にした男に手を引かれ、ベッドへと入るのだ。

鞭打ちにされる方が、いくらか軽い刑だと思える。

「ほんとお父様のお布団は温かい。それを思うと、醜い姉は、無惨ねぇ。今ごろ地面に転がって冷たくなってる頃かしら」

だが、もう後には引けない。それに、覚悟だってとうに決まっていた。

「あぁバレッタも運が悪かった。あいつも可愛く生まれていれば愛してやったものを、あぁも不細工になるとは」
「あたしと同じ娘なのに、酷い言い様ねぇ」
「あれを我が娘と思ったことがないものでな。俺の愛するのは、お前だけだ、エラ」

父は私の首に手を回し、ぐっとのしかかるように顔を近づけてくる。

照明が蝋燭数本と室内がほの暗かったため、気付かれなかった。
ただこれ以上近づかれては、変装がバレてしまう可能性もある。
私は恥ずかしがるふりをして、顔を背けた。

そのままベッドを降りて、

「お父様。今日は少し変わったことをしましょ?」

寝巻きの襟に手をかけながら、提案した。父が生唾を飲む音が聞こえる。

「なにをするんだ、エラ。君の望みならば、付き合おう」
「さすが、お父様。あたし、今日はちょっと攻めたい気分なの。憎い姉が死ぬ日だもの。ちょっと気が昂ってるの」

服を脱いで、とそう懇願した。

エライザの格好で、エライザが社交の場で男性を誘惑していた仕草と目づかいで。

不審がられる可能性も考えていた。

しかし父はよほどエライザに首ったけらしい。

もしくは、彼が散々に偽物とこき下ろしてきた私の化粧姿に、迸る衝動を止められなかったか。

「面白いことを言うものだな、エラ。ふふ、たまにはそう言うのもよかろう」

彼はいそいそと腰元の結び目を解き、あっという間に裸になる。
残すは、上下ともに肌着一枚の姿となった。

私はそれを見るや、頬を緩める。口端だけで笑い漏らしながら、彼の後ろへと回った。

「今度はいったいなんだ、エラ」
「さっきも言ったわよね、お父様。今日のあたしは攻めたい気分なの」

彼が脱ぎ捨てた寝巻きを紐がわりにして、彼の手首を縛る。
きつくきつく、と精一杯の力を振り絞った。

レニス家の家系は、その身体に風の魔力を宿す。
私はそれを利用して、結び目の外側から内側へ向けて、常に圧力が働く魔法を仕掛けた。
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