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7話

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...なんて妄想をしていました。

実際はそんなことあるはずもなく。

現実はそこまで甘くないのよ?
 
男は起きるなりこう言った。

「なぜ俺に取り入ろうとした?」

冷たく無機質な声が胸に刺さる。まるで昨日の姿が嘘だったのかのように思えるが、未だに痛むあそこがじんじんと昨日の出来事証言してくれる。

私はそっと目を逸らし、白い壁を見つめた。

あぁ、なんで言えばいいのだろう。

昨日欲に負けてこんな私を殺そうとした恐ろしい男とあんなことやこんなことをしてしまって、挙げ句の果てには嘘をついてしまった。

しかも自分になんの得もない嘘を。

本当にどうしようか....

男はそんな反応の私をきっと睨みつけた。

私が言い訳しようとしているのを見抜いているのだろう。

「早くしろ」

苛立ったような声にびくりと震える。

酷い、酷い。

こんなことってないじゃない。

私は不幸にも死んだだけなのに。

どうしてこんな目に。

不公平だ。

私の心はだんだんヒビが入っていき、乾いていく。

「...ひっく、ぐすん」

私は声を押し殺して泣いたが、それでも静かな部屋には響き渡った。

誰だって泣きたくなる。

死んで、転生するなんて持ち上げられて。

来てみれば殺されかけたと思うと、犯されて。

確かに流された私も悪いと思うけど、だれああなるに決まっている。

目的なんてないのに。

どうして私はここにいるんだろう。

何のためにこの世界に来たのか。

もう、いっそのこと死んでしまいたい...。

ここで最低なことを言えば殺してもらえる?

この男に殺されるのか?

嫌だ。



この男にだけは殺されたくない。

こんな最低な男、大っ嫌いだ。

——バッ!私は立ち上がり、ドアへ向かう。

が、所詮は私は女な訳で。

「どこへ行く?まさか逃げるつもりじゃないだろうな?」

立った瞬間に腕を掴まれた。

ビクッ。

ひぇぇぇ。

どうしよう?

一瞬でも逃げられると思っていた自分が恥ずかしい。

「えと、水を飲みに?」

思わず疑問形になってしまった言葉に男は顔を歪めた。

——ヤバい。

流石にバレたよね、殺されるのかな...どうなっちゃうんだろう...

私は再び不安と焦りでいっぱいになり、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。

「っ、おい!」

いきなり怒鳴られびくっと再びからだが、反応し、その苛立ったような顔にふるふると体が勝手に小刻みに震えてしまう。

——カタカタカタカタ。

両手で自分の腕を腕をだきながら私は怯えた表情で男を見上げた。

殺さない、なんて言葉、今日になっら通用しないのかもしれない。

殺さなくても、斬られたり...とか。

「水を、取ってくる」

男は苦しげに呟き部屋からそっと出た。

——逃げなきゃ。

そう思うのに体が動かなかった。





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