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海賊王の息子カナメ、進路を決める。1
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アクアイル王立第27小学校6年1組
「では、進路調査票を後ろから集めてください。見えないように裏返してね」
担任のリュミドラ先生が指示すると、生徒たちは鞄から進路調査票を取り出した。
一番後ろの席に座るカナメは、調査票を裏返して前の生徒に渡す。
「おいカナメ、おまえなんて書いたんだよ」
隣の席のジェイクが脚で、カナメの椅子を軽く蹴飛ばしてくる。
ジェイクはクラスの悪ガキ集団のひとりで、何かとカナメに絡んでくる面倒くさい奴だ。
「やめろよ。ジェイクには関係ないだろ」
「頭良くても、貧乏だと魔法学校には行けねーもんな。オヤジと一緒で、フリーターになんのか?」
父親のことを言われて、カナメはむっとする。
ジェイクの父親はハイランクの剣士で、母親は農務省のお偉いさんだ。ジェイクはそのことをいつも鼻にかけている。
ジェイク自身も成績は良く、将来は魔法学校を出て魔法機関に入る(これは、アクアイル王国での王道のエリートコースだ)のだと常々豪語している。
「父さんはちゃんと働いてる」
カナメが静かに言い返すと、ジェイクはわざとらしく鼻で笑った。
「バイトだろバイト。バイトはちゃんと働いてるって言わねーんだよ」
「父親が剣士なのがそんなに偉いのか?」
「偉いに決まってるだろ」
ジェイクは威張るように胸を逸らした。
アホだな、こいつ。
カナメはスルーすることにして、前に向き直った。
「あ、おい、何無視してんだよ」
再び絡むジェイクに、
「こらそこ! 二人とも静かにしなさい!」
リュミドラ先生の叱責が飛ぶ。
「おまえのせいで怒られただろ」
ジェイクが相も変わらず小声で絡んでくる。
いや、明らかにおまえのせいだし。
カナメは呆れてため息をついた。
「ただいまー」
「おかえり、すぐメシできるぞ」
カナメが帰宅すると、父親のヴィートがエプロン姿で出迎えた。台所には魚を焼く良い匂いが漂っている。
カナメは着替えて手を洗うと、父さんの横に立った。
「手伝うよ」
「お、ありがとな。じゃあ、黒パンを切ってくれ」
「了解」
パン籠から取り出した黒パンを、ナイフで薄くスライスしていく。
小皿にバターを盛り、食卓に二人分のカトラリーを並べた。
「学校、どうだった?」
いつものように父さんが聞いてくる。
進路調査票のことはまだ話していない。父さんには相談せずに、自分で決めた。
「んー、普通」
答えてから、「またジェイクに絡まれた」と付け加えた。
それを聞いた父さんは、ははっと明るく笑う。
「好かれてんだな、その子に」
「逆だよ。意地の悪いことばっかり言ってくるし。馬鹿だし」
「こら。クラスメイトをそんな風に言うんじゃない」
父さんはげんこつを作って、軽くカナメの頭にぶつけた。
「はーい」
父さんは、長身で大柄で、強面だ。
髪は短いアッシュグレーで、肌の色は濃いめ。瞳は濃いグリーンだ。
彫が深く眼光鋭く、おまけに頬に大きな傷跡があるので、危ない職業の人だと間違われることもしばしばだ。
見た目は怖いけど、カナメにとっては優しくておおらかな父親だ。
カナメはクラスでも小柄な方で、黒い髪に黒い瞳、細い目をしている。
親子だけれど、一見して血が繋がっていないことが分かる。
そう、カナメは、アクアイルのある教会に捨てられていた赤ん坊だった。
当時、その教会で住み込みの手伝いをしていた父さん(24歳だったらしい。24歳の父さんなんて、カナメには想像できない)が、赤ん坊だったカナメを引き取ったのだという。
父さんは独身だった。そして今でも独身だ。
だから、カナメには母親がいない。
二人は食事をしながら、たくさん話をする。
父さんがパートタイムで働いている道具屋や花屋に来たお客さんのこと、カナメの学校のこと。
王宮都市アクアイルの噂話に花を咲かせることもあれば、国のシステムについて父さんが難しい話をしてくれることもある。
父さんは何故か、光の大陸にある色々な国のことをよく知っている。
授業が5時間目までしかない時は、父さんの職場まで行って、一緒に帰ることにしている。
そういう話をすると、クラスメイトからは「おまえんとこ、お父さんと仲良いよな」とからかわれる。
多分、二人きりの家族だから、他の家よりは親子の距離感が近いのだとカナメは思っている。
その日、放課後に、父さんのバイト先であるティトの道具屋を訪問すると、父さんはエプロンを外して出かける支度をしていた。
「何軒か配達があるから、今日はティトさんの家で夕飯を食べさせてもらいなさい」
「分かった」
カナメは頷き、ご馳走になりますと店主のティトさんに頭を下げた。
「こちらこそ。夜の配達を頼んでごめんな」
ティトさんは20歳くらいで、無造作ヘアの茶髪がいかにもイマドキの若いお兄さんって感じだ。
でも、ティトさんの店はおとぎ話に出てくる隠れ家のような雰囲気のある店で、いつも大繁盛だから、商売上手なのだろう。
その夜は、ティトさんと、ティトさんの彼女で薬師のニーナさん、ティトさんの弟で魔法学校1年生のミスカ君と4人で食事をした。
ニーナさん手作りの料理は、鳩のローストも野菜の煮込みも、フレッシュなハーブがたっぷり使われている。
「美味しい?」
ティトさんはどうやってこんな美女を捕まえたんだろうって不思議なくらい美人なニーナさんは、ちょっと不安そうに聞いてくる。
「すごく美味しいです。盛り付けもオシャレだし、なんか、女の人が作る料理って感じで」
カナメは素直に感想を述べた。
「面白いこと言うな。ヴィートさんはいつもどんなもの作るの?」
ティトさんが尋ねた。
「ええと、得意なのはアクアパッツァです。後は、サーモンのグリルとか、イワシのパスタとか、タコのアヒージョとか」
「うまそー。魚料理が多いんだね」
ミスカ君がそう言う横で、ティトさんとニーナさんは視線を交わして、なんとも言えない表情をした。 それは、なにかを懐かしむような、残念がるような、不思議な表情だった。
「ミスカは、進学先どうするの?」
少し居心地が悪くなったカナメを知ってか知らずか、ミスカ君が話題を変えた。
「・・職業訓練学校に進もうと思ってる」
そう答えると、3人ともが驚いた顔をした。
「魔法学校とか、王国軍の付属学校は考えないの? カナメ君、学術も武道も成績上位だって聞いたわよ」
「魔法学校、楽しいよ。小学校と違って校区がないから、国中から面白い子たちが集まってるし。勉強は大変だけど、先生は凄い人ばっかりだし、行事やイベントも沢山あるし。寮の食堂のごはんも美味しいし」
魔法学校OGのニーナさんと現役魔法学校生のミスカ君が力説する。
魔法学校は、アクアイル王国で一番優秀な学校だ。
魔法使いとして冒険に出る人だけではなく、政治家や官僚や国際公務員も多く輩出しているエリート校だ。自然、卒業生のネットワークも強固だ。王宮都市の一等地に立派な校舎と施設を構え、優秀な教師陣を揃えている魔法学校は、王立ながら学費が高いことでも有名だ。
ニーナさんやミスカ君には言わないが、アクアイル王国の魔法学校至上主義とでもいうべき学歴偏向には疑問を抱いている。それに、将来なりたい職業が既に決まっているカナメは、魔法学校ではなく、その夢により近い道を開いてくれる職業訓練学校に進むと決めていた。
職業訓練学校には何十もの職業コースがあって、即戦力となる知識と技能を身に着けることができる。
「もし学費のことを気にしているんだったら、魔法学校には奨学金制度もあるのよ。ミスカ君の成績なら十分適用されるわ」
ニーナさんが言う。
「職業訓練学校で勉強したいことがあるんです。それに、職業訓練学校なら卒業後すぐに就職が見つかるっていうから、父さんの力にもなれるし」
「どのコースを希望しているの?」
「・・海事コースです」
答えると、ニーナさんとティトさんは驚いたように顔を見合わせた。
それから、さっきと同じ何かを懐かしむような表情になった。
「凄いわね、親子って」
ニーナさんはそう言って、カナメの頭を優しく撫でた。
「昨日、おまえのオヤジ、うちに配達に来たぜ」
翌日、カナメが登校するなり、ジェイクが声をかけてきた。
「知ってる」
今朝、朝ごはんを食べながら父さんが話していた。
冒険用の携帯薬一式を配達に行ったら、ジェイクが応対したと。
「ごつい身体してんのに、道具屋の配達とかダセーの」
変わらぬ憎まれ口を叩くジェイクに、カナメは聞いた。
「ジェイクの家、いつも夜ご両親いないのか?」
ジェイクは少し表情を曇らせ、それでも偉そうに答えた。
「おう。父ちゃんは年中冒険に出てるし、母ちゃんも農務省の課長で忙しいからな」
ジェイクは嫌な奴だが、夜に一人で家にいるというのは、なんだか可哀想だ。
可哀想だなんて言うと、またやかましいから絶対言わないけど。
「そっか。大変だな」
心から言うと、ジェイクは戸惑ったようにそっぽを向いた。
「んだよ、スカしやがって。ま、ウザいおまえとも卒業でお別れだからな。俺は魔法学校入るし」
ウザいなら絡んでこなきゃいいのに。
カナメは溜め息をついて、ロッカーから教科書を取り出した。
「では、進路調査票を後ろから集めてください。見えないように裏返してね」
担任のリュミドラ先生が指示すると、生徒たちは鞄から進路調査票を取り出した。
一番後ろの席に座るカナメは、調査票を裏返して前の生徒に渡す。
「おいカナメ、おまえなんて書いたんだよ」
隣の席のジェイクが脚で、カナメの椅子を軽く蹴飛ばしてくる。
ジェイクはクラスの悪ガキ集団のひとりで、何かとカナメに絡んでくる面倒くさい奴だ。
「やめろよ。ジェイクには関係ないだろ」
「頭良くても、貧乏だと魔法学校には行けねーもんな。オヤジと一緒で、フリーターになんのか?」
父親のことを言われて、カナメはむっとする。
ジェイクの父親はハイランクの剣士で、母親は農務省のお偉いさんだ。ジェイクはそのことをいつも鼻にかけている。
ジェイク自身も成績は良く、将来は魔法学校を出て魔法機関に入る(これは、アクアイル王国での王道のエリートコースだ)のだと常々豪語している。
「父さんはちゃんと働いてる」
カナメが静かに言い返すと、ジェイクはわざとらしく鼻で笑った。
「バイトだろバイト。バイトはちゃんと働いてるって言わねーんだよ」
「父親が剣士なのがそんなに偉いのか?」
「偉いに決まってるだろ」
ジェイクは威張るように胸を逸らした。
アホだな、こいつ。
カナメはスルーすることにして、前に向き直った。
「あ、おい、何無視してんだよ」
再び絡むジェイクに、
「こらそこ! 二人とも静かにしなさい!」
リュミドラ先生の叱責が飛ぶ。
「おまえのせいで怒られただろ」
ジェイクが相も変わらず小声で絡んでくる。
いや、明らかにおまえのせいだし。
カナメは呆れてため息をついた。
「ただいまー」
「おかえり、すぐメシできるぞ」
カナメが帰宅すると、父親のヴィートがエプロン姿で出迎えた。台所には魚を焼く良い匂いが漂っている。
カナメは着替えて手を洗うと、父さんの横に立った。
「手伝うよ」
「お、ありがとな。じゃあ、黒パンを切ってくれ」
「了解」
パン籠から取り出した黒パンを、ナイフで薄くスライスしていく。
小皿にバターを盛り、食卓に二人分のカトラリーを並べた。
「学校、どうだった?」
いつものように父さんが聞いてくる。
進路調査票のことはまだ話していない。父さんには相談せずに、自分で決めた。
「んー、普通」
答えてから、「またジェイクに絡まれた」と付け加えた。
それを聞いた父さんは、ははっと明るく笑う。
「好かれてんだな、その子に」
「逆だよ。意地の悪いことばっかり言ってくるし。馬鹿だし」
「こら。クラスメイトをそんな風に言うんじゃない」
父さんはげんこつを作って、軽くカナメの頭にぶつけた。
「はーい」
父さんは、長身で大柄で、強面だ。
髪は短いアッシュグレーで、肌の色は濃いめ。瞳は濃いグリーンだ。
彫が深く眼光鋭く、おまけに頬に大きな傷跡があるので、危ない職業の人だと間違われることもしばしばだ。
見た目は怖いけど、カナメにとっては優しくておおらかな父親だ。
カナメはクラスでも小柄な方で、黒い髪に黒い瞳、細い目をしている。
親子だけれど、一見して血が繋がっていないことが分かる。
そう、カナメは、アクアイルのある教会に捨てられていた赤ん坊だった。
当時、その教会で住み込みの手伝いをしていた父さん(24歳だったらしい。24歳の父さんなんて、カナメには想像できない)が、赤ん坊だったカナメを引き取ったのだという。
父さんは独身だった。そして今でも独身だ。
だから、カナメには母親がいない。
二人は食事をしながら、たくさん話をする。
父さんがパートタイムで働いている道具屋や花屋に来たお客さんのこと、カナメの学校のこと。
王宮都市アクアイルの噂話に花を咲かせることもあれば、国のシステムについて父さんが難しい話をしてくれることもある。
父さんは何故か、光の大陸にある色々な国のことをよく知っている。
授業が5時間目までしかない時は、父さんの職場まで行って、一緒に帰ることにしている。
そういう話をすると、クラスメイトからは「おまえんとこ、お父さんと仲良いよな」とからかわれる。
多分、二人きりの家族だから、他の家よりは親子の距離感が近いのだとカナメは思っている。
その日、放課後に、父さんのバイト先であるティトの道具屋を訪問すると、父さんはエプロンを外して出かける支度をしていた。
「何軒か配達があるから、今日はティトさんの家で夕飯を食べさせてもらいなさい」
「分かった」
カナメは頷き、ご馳走になりますと店主のティトさんに頭を下げた。
「こちらこそ。夜の配達を頼んでごめんな」
ティトさんは20歳くらいで、無造作ヘアの茶髪がいかにもイマドキの若いお兄さんって感じだ。
でも、ティトさんの店はおとぎ話に出てくる隠れ家のような雰囲気のある店で、いつも大繁盛だから、商売上手なのだろう。
その夜は、ティトさんと、ティトさんの彼女で薬師のニーナさん、ティトさんの弟で魔法学校1年生のミスカ君と4人で食事をした。
ニーナさん手作りの料理は、鳩のローストも野菜の煮込みも、フレッシュなハーブがたっぷり使われている。
「美味しい?」
ティトさんはどうやってこんな美女を捕まえたんだろうって不思議なくらい美人なニーナさんは、ちょっと不安そうに聞いてくる。
「すごく美味しいです。盛り付けもオシャレだし、なんか、女の人が作る料理って感じで」
カナメは素直に感想を述べた。
「面白いこと言うな。ヴィートさんはいつもどんなもの作るの?」
ティトさんが尋ねた。
「ええと、得意なのはアクアパッツァです。後は、サーモンのグリルとか、イワシのパスタとか、タコのアヒージョとか」
「うまそー。魚料理が多いんだね」
ミスカ君がそう言う横で、ティトさんとニーナさんは視線を交わして、なんとも言えない表情をした。 それは、なにかを懐かしむような、残念がるような、不思議な表情だった。
「ミスカは、進学先どうするの?」
少し居心地が悪くなったカナメを知ってか知らずか、ミスカ君が話題を変えた。
「・・職業訓練学校に進もうと思ってる」
そう答えると、3人ともが驚いた顔をした。
「魔法学校とか、王国軍の付属学校は考えないの? カナメ君、学術も武道も成績上位だって聞いたわよ」
「魔法学校、楽しいよ。小学校と違って校区がないから、国中から面白い子たちが集まってるし。勉強は大変だけど、先生は凄い人ばっかりだし、行事やイベントも沢山あるし。寮の食堂のごはんも美味しいし」
魔法学校OGのニーナさんと現役魔法学校生のミスカ君が力説する。
魔法学校は、アクアイル王国で一番優秀な学校だ。
魔法使いとして冒険に出る人だけではなく、政治家や官僚や国際公務員も多く輩出しているエリート校だ。自然、卒業生のネットワークも強固だ。王宮都市の一等地に立派な校舎と施設を構え、優秀な教師陣を揃えている魔法学校は、王立ながら学費が高いことでも有名だ。
ニーナさんやミスカ君には言わないが、アクアイル王国の魔法学校至上主義とでもいうべき学歴偏向には疑問を抱いている。それに、将来なりたい職業が既に決まっているカナメは、魔法学校ではなく、その夢により近い道を開いてくれる職業訓練学校に進むと決めていた。
職業訓練学校には何十もの職業コースがあって、即戦力となる知識と技能を身に着けることができる。
「もし学費のことを気にしているんだったら、魔法学校には奨学金制度もあるのよ。ミスカ君の成績なら十分適用されるわ」
ニーナさんが言う。
「職業訓練学校で勉強したいことがあるんです。それに、職業訓練学校なら卒業後すぐに就職が見つかるっていうから、父さんの力にもなれるし」
「どのコースを希望しているの?」
「・・海事コースです」
答えると、ニーナさんとティトさんは驚いたように顔を見合わせた。
それから、さっきと同じ何かを懐かしむような表情になった。
「凄いわね、親子って」
ニーナさんはそう言って、カナメの頭を優しく撫でた。
「昨日、おまえのオヤジ、うちに配達に来たぜ」
翌日、カナメが登校するなり、ジェイクが声をかけてきた。
「知ってる」
今朝、朝ごはんを食べながら父さんが話していた。
冒険用の携帯薬一式を配達に行ったら、ジェイクが応対したと。
「ごつい身体してんのに、道具屋の配達とかダセーの」
変わらぬ憎まれ口を叩くジェイクに、カナメは聞いた。
「ジェイクの家、いつも夜ご両親いないのか?」
ジェイクは少し表情を曇らせ、それでも偉そうに答えた。
「おう。父ちゃんは年中冒険に出てるし、母ちゃんも農務省の課長で忙しいからな」
ジェイクは嫌な奴だが、夜に一人で家にいるというのは、なんだか可哀想だ。
可哀想だなんて言うと、またやかましいから絶対言わないけど。
「そっか。大変だな」
心から言うと、ジェイクは戸惑ったようにそっぽを向いた。
「んだよ、スカしやがって。ま、ウザいおまえとも卒業でお別れだからな。俺は魔法学校入るし」
ウザいなら絡んでこなきゃいいのに。
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