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15:母からの電話★
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「ほら、航平も触って」
有馬の手に導かれ、二本の性器に触れる。どちらも熱くて、脈打ってる。
駄目だ。もう、頭が全然回らない。
花火の音がうるさくて、耳鳴りがする。
「なあ、これ、何?」
「兜合わせ。したことない?」
「あるわけないだろ…んんっ」
「結構気持ちいいでしょ?」
有馬が腰を上下する度に性器が擦れ、刺激がダイレクトに腰に来る。どちらのものとも分からない先ばかりで太ももまで濡れている。
未知の快感から早く逃れたくて、早く絶頂に達したくて、航平は畳の上で身じろぎをした。
「っ、有馬、もう無理」
「腰動いてるね、可愛い」
「…あ、あ、もう、イくから」
訴えるのに、有馬は余裕の表情で首をかしげている。
「うーん。本当はお尻もいじってあげたかったけど、今日はこれくらいにしておこうか」
なんだか凄いこと言われているのに、全く頭に入ってこない。
なんでもいいから、早く終わらせて欲しい。
有馬の腰も手も、ゆるやかすぎてもどかしい。自分で扱きたいけれど、指はもう思うように力が入らない。
「イきたい?」
問われて、夢中で首を振る。
「じゃあ、イかせてって言って」
「……」
馬鹿じゃねえのか、さっさと降りろ、この変態!
そう怒鳴りたかったけれど、声は出なくて、代わりに有馬を睨みつける。
「言わないとイかせないよ?」
「……嫌だ」
「ずっと苦しいままでいいの」
「……嫌だ」
「ふふ、どっち」
有馬が笑う。苦しくて苦しくて、もうすぐ目の前にある絶頂に手が届かなくて。
行き場のない快感に、視界が滲んだ。
「え、航平?」
「も、嫌だ。有馬、きらい」
そう言ったら、有馬はこちらがびっくりするくらい傷ついた顔をして、ごめんと謝った。
「ごめん。航平があんまり可愛いからいじめすぎた」
髪を撫でながら、啄むようなキスをしてくる。
それから、指に力を込めた。
「ごめんね、俺も限界だし。一緒にイこ」
それは一瞬だった。
「あああっ!」
有馬の指が力強くけれど細やかに動いて、与えられた刺激で航平はすぐに達した。
外の花火が、目の前まで飛んできたみたいにチカチカして、頭が真っ白になって、浮遊感に捉われて。
溜まっていたものを思うがままに吐き出した。
長くて、気の遠くなるような射精だった。
「好きだよ、航平」
荒い息を吐く航平の額に、口づけが降ってくる。
呼吸を繰り返す度に興奮が冷えていく。射精の余韻に身を任せて、航平は天井を見上げた。
やってしまったとか、有馬の奴あとでぶっ飛ばしてやるとか。もう後でいい。
なんかすっげえ、疲れた。あと、気持ちよかった。
「航平、拭くよ」
有馬が濡れたタオルで身体を拭いてくれるが、返事をするのも億劫だ。
あー、もうこのまま寝たい。
目を閉じようとしたが、鳴り響いた着信音がそれを許さなかった。
襖を開いて、縁側に置きっぱなしだったスマホを手に取る。花火はいつの間にか終わっていた。
画面を見ると母の美津子からだ。
情事を見ていたかのようなタイミングに肝が冷えた。
余程のことがない限り、母からの電話には必ず出ることにしている。
航平は大急ぎで深呼吸をして息を整えた。パンツを穿き、浴衣を整える。
「もしもし」
「航平? 出ないかと思った」
「ごめん、ちょっと、その、着替えてて」
「こんな時間に?」
「うん、ええと、牛乳を零しちゃって」
どんな言い訳だ。有馬は浴衣を着ながら声を殺して爆笑している。
「牛乳は臭くなるからきちんと洗うのよ」
「分かってるよ。それより、何かあった?」
「あなた、来週こっちに来るでしょう。ペニンシュラ・ホテルのマンゴープリン買ってきてくれない? 今テレビでやってて、美味しそうなのよ」
確かに、母の声の向こうで賑やかしい音声がしている。
「いいけど。暑いから鎌倉まで持つかな」
「保冷剤を多めに入れてもらえば大丈夫よ」
「了解。他に欲しいものある?」
呑気な会話をしていると、有馬が近づいてきて、聞えよがしに大きな声で言った。
「航平、鎌倉行くの? 僕も行きたいな」
「あら、お友達? いいわよ、一緒にいらっしゃいよ」
人好きな母は、案の定食いついてくる。
視線で抗議すると、有馬がちろっと舌を出して見せた。
「お夕飯食べていくでしょう? お友達にリクエスト聞いておいて」
「ちょっと待って。有馬、夕飯、何がいいかって」
通話口を押さえて聞くと、有馬はすぐに、鎌倉野菜の天ぷらと答えた。
こういう時に、「なんでもいい」ではなくて、すぐに答えてくれるのは助かる。
そのとおり母に告げると、揚げ物いいわね、久しぶりだわと喜んでいる。
実家に有馬を連れていくのは気恥ずかしいこと極まりないが、母が喜ぶのであればそれで良かった。
来週の待ち合わせ時間を決めて、泊まっていけばという有馬の勧めを振り切って、有馬家を出た。
母からの電話のせいで、怒るタイミングを逸してしまった。
振り向くと、玄関まで見送ってくれた有馬はまだそこにいて、手を振っている。
俺は、さっき、あの男と、あんなことを。
冷静に反芻するととんでもない羞恥が襲ってきて、航平は身震いする。
行き場のない感情の消化の仕方が分からなくて、とりあえず、全力疾走で家まで帰ることにした。
有馬の手に導かれ、二本の性器に触れる。どちらも熱くて、脈打ってる。
駄目だ。もう、頭が全然回らない。
花火の音がうるさくて、耳鳴りがする。
「なあ、これ、何?」
「兜合わせ。したことない?」
「あるわけないだろ…んんっ」
「結構気持ちいいでしょ?」
有馬が腰を上下する度に性器が擦れ、刺激がダイレクトに腰に来る。どちらのものとも分からない先ばかりで太ももまで濡れている。
未知の快感から早く逃れたくて、早く絶頂に達したくて、航平は畳の上で身じろぎをした。
「っ、有馬、もう無理」
「腰動いてるね、可愛い」
「…あ、あ、もう、イくから」
訴えるのに、有馬は余裕の表情で首をかしげている。
「うーん。本当はお尻もいじってあげたかったけど、今日はこれくらいにしておこうか」
なんだか凄いこと言われているのに、全く頭に入ってこない。
なんでもいいから、早く終わらせて欲しい。
有馬の腰も手も、ゆるやかすぎてもどかしい。自分で扱きたいけれど、指はもう思うように力が入らない。
「イきたい?」
問われて、夢中で首を振る。
「じゃあ、イかせてって言って」
「……」
馬鹿じゃねえのか、さっさと降りろ、この変態!
そう怒鳴りたかったけれど、声は出なくて、代わりに有馬を睨みつける。
「言わないとイかせないよ?」
「……嫌だ」
「ずっと苦しいままでいいの」
「……嫌だ」
「ふふ、どっち」
有馬が笑う。苦しくて苦しくて、もうすぐ目の前にある絶頂に手が届かなくて。
行き場のない快感に、視界が滲んだ。
「え、航平?」
「も、嫌だ。有馬、きらい」
そう言ったら、有馬はこちらがびっくりするくらい傷ついた顔をして、ごめんと謝った。
「ごめん。航平があんまり可愛いからいじめすぎた」
髪を撫でながら、啄むようなキスをしてくる。
それから、指に力を込めた。
「ごめんね、俺も限界だし。一緒にイこ」
それは一瞬だった。
「あああっ!」
有馬の指が力強くけれど細やかに動いて、与えられた刺激で航平はすぐに達した。
外の花火が、目の前まで飛んできたみたいにチカチカして、頭が真っ白になって、浮遊感に捉われて。
溜まっていたものを思うがままに吐き出した。
長くて、気の遠くなるような射精だった。
「好きだよ、航平」
荒い息を吐く航平の額に、口づけが降ってくる。
呼吸を繰り返す度に興奮が冷えていく。射精の余韻に身を任せて、航平は天井を見上げた。
やってしまったとか、有馬の奴あとでぶっ飛ばしてやるとか。もう後でいい。
なんかすっげえ、疲れた。あと、気持ちよかった。
「航平、拭くよ」
有馬が濡れたタオルで身体を拭いてくれるが、返事をするのも億劫だ。
あー、もうこのまま寝たい。
目を閉じようとしたが、鳴り響いた着信音がそれを許さなかった。
襖を開いて、縁側に置きっぱなしだったスマホを手に取る。花火はいつの間にか終わっていた。
画面を見ると母の美津子からだ。
情事を見ていたかのようなタイミングに肝が冷えた。
余程のことがない限り、母からの電話には必ず出ることにしている。
航平は大急ぎで深呼吸をして息を整えた。パンツを穿き、浴衣を整える。
「もしもし」
「航平? 出ないかと思った」
「ごめん、ちょっと、その、着替えてて」
「こんな時間に?」
「うん、ええと、牛乳を零しちゃって」
どんな言い訳だ。有馬は浴衣を着ながら声を殺して爆笑している。
「牛乳は臭くなるからきちんと洗うのよ」
「分かってるよ。それより、何かあった?」
「あなた、来週こっちに来るでしょう。ペニンシュラ・ホテルのマンゴープリン買ってきてくれない? 今テレビでやってて、美味しそうなのよ」
確かに、母の声の向こうで賑やかしい音声がしている。
「いいけど。暑いから鎌倉まで持つかな」
「保冷剤を多めに入れてもらえば大丈夫よ」
「了解。他に欲しいものある?」
呑気な会話をしていると、有馬が近づいてきて、聞えよがしに大きな声で言った。
「航平、鎌倉行くの? 僕も行きたいな」
「あら、お友達? いいわよ、一緒にいらっしゃいよ」
人好きな母は、案の定食いついてくる。
視線で抗議すると、有馬がちろっと舌を出して見せた。
「お夕飯食べていくでしょう? お友達にリクエスト聞いておいて」
「ちょっと待って。有馬、夕飯、何がいいかって」
通話口を押さえて聞くと、有馬はすぐに、鎌倉野菜の天ぷらと答えた。
こういう時に、「なんでもいい」ではなくて、すぐに答えてくれるのは助かる。
そのとおり母に告げると、揚げ物いいわね、久しぶりだわと喜んでいる。
実家に有馬を連れていくのは気恥ずかしいこと極まりないが、母が喜ぶのであればそれで良かった。
来週の待ち合わせ時間を決めて、泊まっていけばという有馬の勧めを振り切って、有馬家を出た。
母からの電話のせいで、怒るタイミングを逸してしまった。
振り向くと、玄関まで見送ってくれた有馬はまだそこにいて、手を振っている。
俺は、さっき、あの男と、あんなことを。
冷静に反芻するととんでもない羞恥が襲ってきて、航平は身震いする。
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