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二人で使いましょうか@夕暮れのキッチン
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直樹がフィリピン出張から戻ると、近間がキッチンで料理をしていた。
「ただいま」
「おかえり」
熱帯夜の街から帰宅した時、明るく涼しい部屋で出迎えてくれるひとがいるのは本当にいい。
それが近間さんだなんて、幸福に過ぎる。
直樹は鍋の火加減を調節する近間の髪にキスを落とした。
ネクタイを緩めながら平鍋を覗きこむと、アサリの酒蒸しのようだ。
「おまえ、出張中は接待続きだって言ってたから、あっさり系の方がいいと思って。あとは茄子の揚げ浸しだけど、足りるか?」
優しい人だ。
愛おしさが胸に広がり、今度はうなじに口付けた。
「充分ですよ」
「メシの前にシャワー浴びてこいよ」
帰宅してすぐ調理を始めたのだろう。
近間は白のワイシャツとスラックスに、見慣れないギャルソンエプロンを着けている。
「新しいエプロン、買ったんですか?」
「三宅さんから、この前のインド料理のお礼だってさ。でもこれ、腰から下しかないからあんまり意味ないよな」
直樹は近間の腰を掴み、くるりと向きを変えた。
怪訝そうに立つ近間をまじまじと鑑賞する。
「カッコいいです。オシャレカフェのギャルソンみたいです。写真撮りたいです」
矢継ぎ早に言う直樹に、近間は苦笑した。
「おまえ、本当コスプレちっくなの好きだよな」
「違います。近間さんだからです」
シンプルな黒のエプロンだが、細めの紐が幾重にも腰に巻かれているので、細い腰と長い脚が強調されている。
クールでスタイリッシュで、でもって、エロい。
……エプロン着けたまま、下だけ脱がせて後ろからガンガン攻めたてたい。
ここでしたら、流石に怒るかな。
いやでも、1週間ぶりだし。
近間さん、なんだかんだ言っても気持ちいいこと大好きだし。
特に立ちバックの時はめちゃくちゃ気持ち良さそうに喘いで、締め付けてくるし。
そんときのうなじとか背骨のラインとかぐっとくるんだよな…。
考えていると、ぐっと下腹部に血が溜まった。
かちかちかち。
開いたアサリが鍋の中で音を立て出した。ふわりと出汁の香りが広がる。
腹は減っているが、先にもっと満たしたいものがある。
葛藤していると、近間がIHのスイッチを切った。鍋の中が静かになる。
近間は直樹の股間をちらっと見た後、エプロンを摘まんだ。
「三宅さん、2人で使って下さいねって言ってたんだけど、これ1枚しか入ってなかったんだよな」
近間が妖艶に微笑んで見上げてくる。
誘われている。
直樹はごくりと唾を飲み込んで、近間の腰を引き寄せた。
割れ目に指を這わせるように尻を撫でると、近間は吐息を吐いた。
直樹は捕食者の顔になって囁いた。
「じゃあ、2人で使いましょうか」
翌朝、三宅が給湯室に行くと、近間がコーヒーを淹れていた。
「おはようございます」
「おはよう。コーヒー、飲む?」
今日も相変わらず男前で爽やかだ。眼福眼福。
「いただきます」
カップを受け取った三宅は、湯気越しにじっと近間を見つめた。いつもにこにこしているけれど、今朝は特に機嫌が良さそうだ。
それになんだか。
「近間さん、いつにも増してお肌がつやつやしてます」
それを聞くと、近間は片目をつぶってみせた。
こんなにウィンクがサマになる一般日本人男性もいないだろう。
近間に対する恋心などとっくに地の果てに捨て去っているが、それでも胸がときめくのは許してほしい。
「エプロンのおかげかな」
「ギャルソンで正解でした?」
「他に選択肢あったの?」
「それはもう迷いに迷いましたよ。お役に立てて良かったです」
親友の米国大使館員のクロエと一緒に高島屋シンガポール店にエプロンを買いに行き、ギャルソンと白フリルのどっちがより萌えるかで盛り上がったのは内緒にしておこう。
「ただいま」
「おかえり」
熱帯夜の街から帰宅した時、明るく涼しい部屋で出迎えてくれるひとがいるのは本当にいい。
それが近間さんだなんて、幸福に過ぎる。
直樹は鍋の火加減を調節する近間の髪にキスを落とした。
ネクタイを緩めながら平鍋を覗きこむと、アサリの酒蒸しのようだ。
「おまえ、出張中は接待続きだって言ってたから、あっさり系の方がいいと思って。あとは茄子の揚げ浸しだけど、足りるか?」
優しい人だ。
愛おしさが胸に広がり、今度はうなじに口付けた。
「充分ですよ」
「メシの前にシャワー浴びてこいよ」
帰宅してすぐ調理を始めたのだろう。
近間は白のワイシャツとスラックスに、見慣れないギャルソンエプロンを着けている。
「新しいエプロン、買ったんですか?」
「三宅さんから、この前のインド料理のお礼だってさ。でもこれ、腰から下しかないからあんまり意味ないよな」
直樹は近間の腰を掴み、くるりと向きを変えた。
怪訝そうに立つ近間をまじまじと鑑賞する。
「カッコいいです。オシャレカフェのギャルソンみたいです。写真撮りたいです」
矢継ぎ早に言う直樹に、近間は苦笑した。
「おまえ、本当コスプレちっくなの好きだよな」
「違います。近間さんだからです」
シンプルな黒のエプロンだが、細めの紐が幾重にも腰に巻かれているので、細い腰と長い脚が強調されている。
クールでスタイリッシュで、でもって、エロい。
……エプロン着けたまま、下だけ脱がせて後ろからガンガン攻めたてたい。
ここでしたら、流石に怒るかな。
いやでも、1週間ぶりだし。
近間さん、なんだかんだ言っても気持ちいいこと大好きだし。
特に立ちバックの時はめちゃくちゃ気持ち良さそうに喘いで、締め付けてくるし。
そんときのうなじとか背骨のラインとかぐっとくるんだよな…。
考えていると、ぐっと下腹部に血が溜まった。
かちかちかち。
開いたアサリが鍋の中で音を立て出した。ふわりと出汁の香りが広がる。
腹は減っているが、先にもっと満たしたいものがある。
葛藤していると、近間がIHのスイッチを切った。鍋の中が静かになる。
近間は直樹の股間をちらっと見た後、エプロンを摘まんだ。
「三宅さん、2人で使って下さいねって言ってたんだけど、これ1枚しか入ってなかったんだよな」
近間が妖艶に微笑んで見上げてくる。
誘われている。
直樹はごくりと唾を飲み込んで、近間の腰を引き寄せた。
割れ目に指を這わせるように尻を撫でると、近間は吐息を吐いた。
直樹は捕食者の顔になって囁いた。
「じゃあ、2人で使いましょうか」
翌朝、三宅が給湯室に行くと、近間がコーヒーを淹れていた。
「おはようございます」
「おはよう。コーヒー、飲む?」
今日も相変わらず男前で爽やかだ。眼福眼福。
「いただきます」
カップを受け取った三宅は、湯気越しにじっと近間を見つめた。いつもにこにこしているけれど、今朝は特に機嫌が良さそうだ。
それになんだか。
「近間さん、いつにも増してお肌がつやつやしてます」
それを聞くと、近間は片目をつぶってみせた。
こんなにウィンクがサマになる一般日本人男性もいないだろう。
近間に対する恋心などとっくに地の果てに捨て去っているが、それでも胸がときめくのは許してほしい。
「エプロンのおかげかな」
「ギャルソンで正解でした?」
「他に選択肢あったの?」
「それはもう迷いに迷いましたよ。お役に立てて良かったです」
親友の米国大使館員のクロエと一緒に高島屋シンガポール店にエプロンを買いに行き、ギャルソンと白フリルのどっちがより萌えるかで盛り上がったのは内緒にしておこう。
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