46 / 77
8.仕合とバイタルアラーム
8-6
しおりを挟む
「こんなところで会えるとは思わなかったぜ。そのイカしたお面、チート使って手に入れたって本当か? アホみてぇな身体能力を見せびらかして有名人きどりたぁ、さぞ気分がいいだろうなあ」
「呪具のデメリット知ってる? それでもそんなこと言えるなら、俺よりアンタのほうがよっぽど鬼面に向いてんよ」
そこまで言ってから、コロが右手の指先を自分の面に当てて、とんとんと軽くたたく。
「チートとやらで頑張ってドロップして、そのだっせぇ傷跡と悪人ヅラを隠せるようになるといいっすね。センパイ?」
「このクソガキ……! いい度胸だ、オレと勝負しやがれ! 《仕合》だ!」
まんまと挑発にのった侍が、コロに向かって節くれだった指を突きつける。すると、両者の間に大きなウインドウが出現した。
ヒノモトでは《仕合》と呼ばれる、アバター同士の一対一の戦闘を行うことができる。デスペナルティは存在しないので、友人同士がスポーツ感覚で使用することが多い。
ただし、それは両者が合意のうえであることが大前提だ。今回のように片方がケンカ目的でふっかけてきたとしても、相手にしなければ成立しない。
「そんなの無視していいからね、コロ」
コロの肩越しに顔を覗かせて、空中に現れたウィンドウを確認する。案の定、相手の仕合の申し込みに対して、同意か拒否かを選択する画面のようだ。コロが拒否すれば、侍はおとなしく引き下がるしかない。ひょっとしたら「逃げるのか」とかなんとか言われるかもしれないけど、そんなことはどうでもよかった。カッコ悪いのは、向こうのほうだ。
けれど、コロが選択したのは――「同意」のボタン。
「コロ! なにやってんの!?」
「下がってろ、ハルキ。危ないぞ。あ、わかってると思うけど回復とかしなくていいからな」
「仕合は一対一がルールでしょ、わかってるよ! だから余計に嫌だったんじゃないか!」
後ろからコロの腕をつかみ、どういうことなのかとガクガク揺すぶるも、コロの反応は鈍い。いつもなら軽いノリでおどけて返すところなのに、顔をこちらに向けることもなく、相手の侍を見据えたままだ。なんだろう、機嫌が悪い? いや、それよりも――。
「コロ……?」
「おうおう、今生の別れみてぇだな。無様に散る覚悟はできたかあ?」
「呪具のデメリット知ってる? それでもそんなこと言えるなら、俺よりアンタのほうがよっぽど鬼面に向いてんよ」
そこまで言ってから、コロが右手の指先を自分の面に当てて、とんとんと軽くたたく。
「チートとやらで頑張ってドロップして、そのだっせぇ傷跡と悪人ヅラを隠せるようになるといいっすね。センパイ?」
「このクソガキ……! いい度胸だ、オレと勝負しやがれ! 《仕合》だ!」
まんまと挑発にのった侍が、コロに向かって節くれだった指を突きつける。すると、両者の間に大きなウインドウが出現した。
ヒノモトでは《仕合》と呼ばれる、アバター同士の一対一の戦闘を行うことができる。デスペナルティは存在しないので、友人同士がスポーツ感覚で使用することが多い。
ただし、それは両者が合意のうえであることが大前提だ。今回のように片方がケンカ目的でふっかけてきたとしても、相手にしなければ成立しない。
「そんなの無視していいからね、コロ」
コロの肩越しに顔を覗かせて、空中に現れたウィンドウを確認する。案の定、相手の仕合の申し込みに対して、同意か拒否かを選択する画面のようだ。コロが拒否すれば、侍はおとなしく引き下がるしかない。ひょっとしたら「逃げるのか」とかなんとか言われるかもしれないけど、そんなことはどうでもよかった。カッコ悪いのは、向こうのほうだ。
けれど、コロが選択したのは――「同意」のボタン。
「コロ! なにやってんの!?」
「下がってろ、ハルキ。危ないぞ。あ、わかってると思うけど回復とかしなくていいからな」
「仕合は一対一がルールでしょ、わかってるよ! だから余計に嫌だったんじゃないか!」
後ろからコロの腕をつかみ、どういうことなのかとガクガク揺すぶるも、コロの反応は鈍い。いつもなら軽いノリでおどけて返すところなのに、顔をこちらに向けることもなく、相手の侍を見据えたままだ。なんだろう、機嫌が悪い? いや、それよりも――。
「コロ……?」
「おうおう、今生の別れみてぇだな。無様に散る覚悟はできたかあ?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~
百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしまった。
この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。
憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。
そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。
名前は、早乙女 久。
プレイヤー名は オクツ。
運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。
何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。
初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。
ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。
アルケミア・オンライン
メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。
『錬金術を携えて強敵に挑め!』
ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。
宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────?
これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。
【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-
双葉 鳴|◉〻◉)
SF
Atlantis World Online。
そこは古代文明の後にできたファンタジー世界。
プレイヤーは古代文明の末裔を名乗るNPCと交友を測り、歴史に隠された謎を解き明かす使命を持っていた。
しかし多くのプレイヤーは目先のモンスター討伐に明け暮れ、謎は置き去りにされていた。
主人公、笹井裕次郎は定年を迎えたばかりのお爺ちゃん。
孫に誘われて参加したそのゲームで幼少時に嗜んだコミックの主人公を投影し、アキカゼ・ハヤテとして活動する。
その常識にとらわれない発想力、謎の行動力を遺憾なく発揮し、多くの先行プレイヤーが見落とした謎をバンバンと発掘していった。
多くのプレイヤー達に賞賛され、やがて有名プレイヤーとしてその知名度を上げていくことになる。
「|◉〻◉)有名は有名でも地雷という意味では?」
「君にだけは言われたくなかった」
ヘンテコで奇抜なプレイヤー、NPC多数!
圧倒的〝ほのぼの〟で送るMMO活劇、ここに開幕。
===========目録======================
1章:お爺ちゃんとVR 【1〜57話】
2章:お爺ちゃんとクラン 【58〜108話】
3章:お爺ちゃんと古代の導き【109〜238話】
4章:お爺ちゃんと生配信 【239話〜355話】
5章:お爺ちゃんと聖魔大戦 【356話〜497話】
====================================
2020.03.21_掲載
2020.05.24_100話達成
2020.09.29_200話達成
2021.02.19_300話達成
2021.11.05_400話達成
2022.06.25_完結!
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~
志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。
社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。
‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!?
――
作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。
コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。
小説家になろう様でも掲載しています。
一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる