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6.橋の上のコロウ
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ヒノモトオンラインをはじめて十日目にして、メイくんの連続ログイン記録がとぎれた。「きょうはヒノモトに行かない」とメイくんに学校で言われたときは「じゃあ僕もやめておこうかな」と思ったはずなのに。結局いつもの時間になったら新聞社の真ん中で突っ立っていたんだから、不思議なこともあるものだ。
目的は特にない。メイくんがいれば必然的に物怪退治に駆け回ることになるけど、ひとりではとてもそんな気になれなかった。そもそも巫女はサポートに特化している職業なので、ソロでの戦闘は向いていないのだ。
まるで迷子になってしまったかのような心細さを覚えながらも、僕は自分なりの楽しみ方を考えようと頭をひねる。急にうなり出した僕を心配してくれたのか、カウンターの中にいたお姉さんが、ひょこひょことこっちの様子をうかがっているのが見えた。
「そうだ、またお祭りでも見てみよう」
麗春祭は、まだまだ続いている。以前もメイくんがログアウトしたあと、ひとりだけで楽しむことができた。会場もここから近いから、ちょうどいい。僕はお姉さんにあいさつをしてから外に出ると、そのまま一直線に橋をめざした。
プリン妖怪を倒したあとにメイくんと食べたプリンはおいしかったな。今度は抹茶味に挑戦してみるのもいいかも。そんなことを考えていたら楽しくなってきて、歩くペースもだんだん速くなる。
「……にしても、あんなところに堂々といるもんなんだな。鬼面って」
すれ違った書生の二人組の会話に、思わずぴたりと足が止まった。――鬼面。その言葉で真っ先に浮かんだのは、あの毒の泉で会った鬼面のアバターだ。そういえば、あれから一度も見掛けない。
「普通に買い物とかするんだな。びっくりしたわ」
「そりゃ、NPCじゃないからね。一般のプレイヤーが中にいるんだから、アイテムを買えなかったら不便でしょ。まあ、街にいられる時間は限られるだろうけど」
「それって、あの鬼の面の呪いってやつのせい?」
「あ、あの――!」
毒の泉で出会った鬼が近くにいる。その事実を認識した瞬間、僕は弾かれたように振り返って二人組の背中に声をかけた。
「すみません! その鬼の面の人って、どこで見たんですか?」
「え? あ、ああ、マルキヨにいたけど……あ、知ってるかな。マルキヨ。マルヤマキヨコっていう薬局店のことなんだけど」
「でもちょっと時間がたってるから、もう移動してるかもしれないよ?」
「わかりました、ありがとうございます!」
親切な二人組に深々とお辞儀をしてから、僕は駆け出した。橋ではなく、マルキヨがある方向へ。巫女の袴姿では動きにくいので、走りながらバンカラスタイルへチェンジする。現実世界でも、一瞬でパジャマから制服になれたら便利なのに。
目的は特にない。メイくんがいれば必然的に物怪退治に駆け回ることになるけど、ひとりではとてもそんな気になれなかった。そもそも巫女はサポートに特化している職業なので、ソロでの戦闘は向いていないのだ。
まるで迷子になってしまったかのような心細さを覚えながらも、僕は自分なりの楽しみ方を考えようと頭をひねる。急にうなり出した僕を心配してくれたのか、カウンターの中にいたお姉さんが、ひょこひょことこっちの様子をうかがっているのが見えた。
「そうだ、またお祭りでも見てみよう」
麗春祭は、まだまだ続いている。以前もメイくんがログアウトしたあと、ひとりだけで楽しむことができた。会場もここから近いから、ちょうどいい。僕はお姉さんにあいさつをしてから外に出ると、そのまま一直線に橋をめざした。
プリン妖怪を倒したあとにメイくんと食べたプリンはおいしかったな。今度は抹茶味に挑戦してみるのもいいかも。そんなことを考えていたら楽しくなってきて、歩くペースもだんだん速くなる。
「……にしても、あんなところに堂々といるもんなんだな。鬼面って」
すれ違った書生の二人組の会話に、思わずぴたりと足が止まった。――鬼面。その言葉で真っ先に浮かんだのは、あの毒の泉で会った鬼面のアバターだ。そういえば、あれから一度も見掛けない。
「普通に買い物とかするんだな。びっくりしたわ」
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毒の泉で出会った鬼が近くにいる。その事実を認識した瞬間、僕は弾かれたように振り返って二人組の背中に声をかけた。
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「え? あ、ああ、マルキヨにいたけど……あ、知ってるかな。マルキヨ。マルヤマキヨコっていう薬局店のことなんだけど」
「でもちょっと時間がたってるから、もう移動してるかもしれないよ?」
「わかりました、ありがとうございます!」
親切な二人組に深々とお辞儀をしてから、僕は駆け出した。橋ではなく、マルキヨがある方向へ。巫女の袴姿では動きにくいので、走りながらバンカラスタイルへチェンジする。現実世界でも、一瞬でパジャマから制服になれたら便利なのに。
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