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1.コンニャク妖怪と巫女の謎
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アラームが鳴るよりも早く目が覚めると、なにかに勝ったようで気持ちがいい。それが五分前とか一分前とかだと「自分には超能力があるんじゃないか」なんて小学生みたいなことを考えて楽しくなってしまう。僕は布団を跳ね除けて、勢いよくベッドから降りた。
遮光カーテンを開けると、朝の柔らかな光が一気に飛び込んでくる。世界が真っ白に変わるこの瞬間は、いつだってワクワクする。窓を開けて、鳥の鳴き声と一緒に風を招き入れれば、レースのカーテンが楽しそうにふわりと踊った。
「よかった。きょうも、いい天気になりそう」
ほっと息をついてから、手早く制服に着替える。入学したてのころはダボダボだった学ランも、一年が過ぎた今、やっと体になじんできたような気がする。支度を終えてドアノブに手をかけたところで、ふと部屋の隅に放置したまま使っていない細長い鏡へと、視線が吸い寄せられた。
正面に回り込めば、きっとそこには黒い髪の普通の男の子が映るだろう。そう、僕は男の子だ。四季島夏樹。中学二年生になったばかりの十三歳。女の子になりたいと思ったことは、多分ない。
それなのに、どうしてゲームの中の僕のアバターは、僕にそっくりの女の子になってしまったのか。今の僕の髪を腰までまっすぐに伸ばして、全体的に少しだけ柔らかく、少しだけ細く、少しだけ小さくしたあの姿は――。
「なーつきちゃーん! そろそろ起きてー!」
「!」
リビングからのお母さんの声で、僕は慌ただしく現実へと引き戻される。
「お寝坊は絶対に許しません妖怪に、枕を隠されちゃうよー!」
「起きてるから! 恥ずかしいから大声で変なこと言わないで!」と、お母さんに向かって返事をしながら、僕は急いで部屋を飛び出した。
遮光カーテンを開けると、朝の柔らかな光が一気に飛び込んでくる。世界が真っ白に変わるこの瞬間は、いつだってワクワクする。窓を開けて、鳥の鳴き声と一緒に風を招き入れれば、レースのカーテンが楽しそうにふわりと踊った。
「よかった。きょうも、いい天気になりそう」
ほっと息をついてから、手早く制服に着替える。入学したてのころはダボダボだった学ランも、一年が過ぎた今、やっと体になじんできたような気がする。支度を終えてドアノブに手をかけたところで、ふと部屋の隅に放置したまま使っていない細長い鏡へと、視線が吸い寄せられた。
正面に回り込めば、きっとそこには黒い髪の普通の男の子が映るだろう。そう、僕は男の子だ。四季島夏樹。中学二年生になったばかりの十三歳。女の子になりたいと思ったことは、多分ない。
それなのに、どうしてゲームの中の僕のアバターは、僕にそっくりの女の子になってしまったのか。今の僕の髪を腰までまっすぐに伸ばして、全体的に少しだけ柔らかく、少しだけ細く、少しだけ小さくしたあの姿は――。
「なーつきちゃーん! そろそろ起きてー!」
「!」
リビングからのお母さんの声で、僕は慌ただしく現実へと引き戻される。
「お寝坊は絶対に許しません妖怪に、枕を隠されちゃうよー!」
「起きてるから! 恥ずかしいから大声で変なこと言わないで!」と、お母さんに向かって返事をしながら、僕は急いで部屋を飛び出した。
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