【完結】英雄小学生アフター~氷の女王と春の歌姫~

森原ヘキイ

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第八章 寂しがりやに、さようなら

8-10

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「え……?」

 すぐ隣で吹き上がった細い噴水が壁の役目をしてくれていると、完全に安心しきっていた。水はあくまでも水であり、そこを通り抜けて来ることなど誰にでもできるはずなのに。だから、空に向かって高く伸びる水の中から白い花が咲き、そのまま大きく開いて自分の頭を飲み込もうとしている光景も、ユウは当然のこととして受け入れるしかなかった。

 異世界で尖兵の手に触れられたことを、走馬燈さながらに思い出していく。凍りついたように動けなくなり、痺れるように意識が消えていった。再び目を開けて最初に見たものは、今にも壊れてしまいそうなほど青白く、それでも涙が出るほどに美しいエリヤの顔。
 もう絶対に、あんな表情はさせないと、自分自身に約束したはずなのに。

 ごめん。エリヤ。
 ごめん。みんな。

 大きく目を見開くことしかできないユウの視界が、真っ白に染まる――その、最後の刹那。

「ピギャ!」

 不思議な音を立てながら弾丸のように飛んできた黒いなにかが、まさにユウの額を掴もうとしていた兵士の手を真横から粉砕した。目の前で欠片がパラパラと降っていく様子を、ユウは呆然としながら見つめる。黒いなにかは、そのまま地面を勢いよくバウンドして、今度は噴水の裏にいるだろう兵士の本体へと飛んで行った。少し遅れて、からんという乾いた音だけがユウの耳に届く。

「っ、キミは……」

 噴水が消えた向こう側に残っていたものは、自分を襲った氷の兵士の残骸。そして、その傍らには、まるでユウを助けてくれたかのような軌道を描いた、黒いなにかの姿。

「ピ! ピ!」

 スケートリンクイベントで出会った、あのロボット型のペンギンが、ユウを見上げて嬉しそうに鳴いていた。
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