58 / 124
第五章 再会からの、ごきげんよう
5-6
しおりを挟む
「モウ一度ルールヲ破ッタラ会場ノ外ニ叩キ出シマス」
クマの警備ロボットに担がれてロビーに戻って来たマコトは、そのままぽいっと放り投げられる。「すみませんでしたっ! ご迷惑をおかけしました!」と、クマの背中に向けて水飲み鳥のように頭を下げ続けるマコトに向けられた、スターレットファンたちの視線が痛い。
「これから、どうしよう……」
握手はアイドルひとりにつき一回だけという決まりなので、ヒカリの列に並び直すことはできない。あの曲を作ったヒカリの友達について、もう一度ヒカリ本人から聞き出すという手は使えない。タイシなら、もっとうまくできたのだろうか。ミサキだったら、ユウだったら、エリヤだって、きっと自分よりうまくできたはずだ。ゴンタのケーキ屋で待機してくれている仲間たちを思って、マコトは深いため息をつく。
「……あ、そうだ。まだ、ゴンタさんのお願いが残ってるんだった」
せめて、彼に託された任務だけはまっとうしたい。握手会の後半戦まで待つことに決めたマコトは、時間までミュージアムの中を散策することにした。
若い感性が手掛けた、まったく新しいデザイン。それが、このミュージアムのキャッチフレーズらしい。ガラスでできたルービックキューブや、ガラスでできたプラネタリウムが合体したような奇抜な外観に驚かされたマコトだが、内側から見る光景もまた不思議だった。
壁から天井までが、ほぼガラスでできているので、外の景色が丸見えだ。青い空と緑の木々に囲まれた空間に、日の光が波紋のように差し込んでいる。ロビーや握手会場から離れているため、雑音はまったく聞こえない。日向に置いた水槽の中を泳ぐ魚はこんな気持ちなのだろうかと、マコトはぼんやり思った。
クマの警備ロボットに担がれてロビーに戻って来たマコトは、そのままぽいっと放り投げられる。「すみませんでしたっ! ご迷惑をおかけしました!」と、クマの背中に向けて水飲み鳥のように頭を下げ続けるマコトに向けられた、スターレットファンたちの視線が痛い。
「これから、どうしよう……」
握手はアイドルひとりにつき一回だけという決まりなので、ヒカリの列に並び直すことはできない。あの曲を作ったヒカリの友達について、もう一度ヒカリ本人から聞き出すという手は使えない。タイシなら、もっとうまくできたのだろうか。ミサキだったら、ユウだったら、エリヤだって、きっと自分よりうまくできたはずだ。ゴンタのケーキ屋で待機してくれている仲間たちを思って、マコトは深いため息をつく。
「……あ、そうだ。まだ、ゴンタさんのお願いが残ってるんだった」
せめて、彼に託された任務だけはまっとうしたい。握手会の後半戦まで待つことに決めたマコトは、時間までミュージアムの中を散策することにした。
若い感性が手掛けた、まったく新しいデザイン。それが、このミュージアムのキャッチフレーズらしい。ガラスでできたルービックキューブや、ガラスでできたプラネタリウムが合体したような奇抜な外観に驚かされたマコトだが、内側から見る光景もまた不思議だった。
壁から天井までが、ほぼガラスでできているので、外の景色が丸見えだ。青い空と緑の木々に囲まれた空間に、日の光が波紋のように差し込んでいる。ロビーや握手会場から離れているため、雑音はまったく聞こえない。日向に置いた水槽の中を泳ぐ魚はこんな気持ちなのだろうかと、マコトはぼんやり思った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
稀代の悪女は死してなお
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)
カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ……
誰もいない野原のステージの上で……
アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ———
全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。
※高学年〜大人向き
見える私と聞こえる転校生
柚木ゆず
児童書・童話
「この中に、幽霊が見える人はいませんか?」
幽霊が見える中学1年生の少女・市川真鈴のクラスに転校生としてやって来た、水前寺良平。彼のそんな一言が切っ掛けとなり、真鈴は良平と共に人助けならぬ幽霊助けをすることになるのでした――。
ルーカスと呪われた遊園地(上)
大森かおり
児童書・童話
このお話のつづきは、ルーカスと呪われた遊園地(中)に公開しました。ご覧いただく方法は、大森かおりの登録コンテンツから、とんで読むことができます。
かつて日本は、たくさんの遊園地で賑わっていた。だが、バブルが崩壊するとともに、そのたくさんあった遊園地も、次々に潰れていってしまった。平凡に暮らしていた高校二年生の少女、倉本乙葉は、散歩に出かけたある日、そのバブルが崩壊した後の、ある廃墟の遊園地に迷い込んでしまう。そこで突然、気を失った乙葉は、目を覚ました後、現実の世界の廃墟ではなく、なんと別世界の、本当の遊園地に来てしまっていた! この呪われた遊園地から出るために、乙葉は園内で鍵を探そうと、あとからやってきた仲間達と、日々奮闘する。
【完結】玩具の青い鳥
かのん
児童書・童話
かつて偉大なる王が、聖なる塔での一騎打ちにより、呪われた黒竜を打倒した。それ以来、青は幸福を、翼は王を、空は神の領域を示す時代がここにある。
トイ・ブルーバードは玩具やとして国々を旅していたのだが、貿易の町にてこの国の王女に出会ったことでその運命を翻弄されていく。
王女と玩具屋の一幕をご覧あれ。
ラズとリドの大冒険
大森かおり
児童書・童話
幼い頃から両親のいない、主人公ラズ。ラズは、ムンダという名の村で、ゆいいつの肉親である、羊飼い兼村長でもあるヨールおじいちゃんと、二人仲よく暮らしていた。
ラズはずっと前から、退屈でなにもない、ムンダ村から飛び出して、まだ見ぬ世界へと、冒険がしたいと思っていた。しかし、ラズに羊飼いとして後継者になってほしいヨールおじいちゃんから、猛反対をされることになる。
困り果てたラズは、どうしたらヨールおじいちゃんを説得できるのかと考えた。なかなか答えの見つからないラズだったが、そんな時、突然、ムンダ村の海岸に、一隻の、あやしくて、とても不思議な形をした船がやってきた。
その船を見たラズは、一気に好奇心がわき、船内に入ってみることにした。すると、なんとそこには、これまで会ったこともないような、奇想天外、変わった男の子がいて、ラズの人生は、ここから歯車がまわり始める——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる