6 / 124
第一章 目と目が合って、おひさしぶり
1-6
しおりを挟む
「三、二、一……!」
カウントの途中から自然と始まった唱和に、拳をぎゅっと握りしめたマコトも参加する。その終わりの瞬間、氷の城の中心で小さな変化が生まれた。
じわりと浮かんだ、青い光。それは紫にも赤にもなりながら、血液のようにゆっくりと城全体を満たしていく。決して派手なパフォーマンスではない。目に突き刺さるまぶしいライトアップでもない。けれど、儚くも神秘的な輝きを目の当たりにして、津波にも似た大きな歓声と拍手がわき起こった。そんな中、マコトは驚くことも笑うこともなく、言葉を発することも身動きすることもなく、ただただ氷の城を見つめ続ける。
知っている、とマコトは思った。自分は、この光景を知っていた。つらかった。痛かった。冷たかった。苦しかった。でも、それと同じくらい。いや、それよりも遥かに。
楽しくて。優しくて。温かくて。うれしくて。心が震えるほどに愛おしい記憶が、マコトの中に確かにあったはずだった。
けれど、それがなにかはわからない。知らない。覚えていない。そのことが、悔しくて悔しくてたまらない。ぎゅっと奥歯をかみしめたマコトの顎と首筋が、小刻みに震える。
「あ、あれ……? ボク、なんで……?」
しばらくして、頬が乾いて冷たくなっていることに気がついたマコトは、そこでようやく自分が泣いていたという事実に驚いた。まだ涙の残る目元を慌てて拭いながら見回した視界の中に、すぐ近くでたたずんでいた少女の姿が映り込む。
カウントの途中から自然と始まった唱和に、拳をぎゅっと握りしめたマコトも参加する。その終わりの瞬間、氷の城の中心で小さな変化が生まれた。
じわりと浮かんだ、青い光。それは紫にも赤にもなりながら、血液のようにゆっくりと城全体を満たしていく。決して派手なパフォーマンスではない。目に突き刺さるまぶしいライトアップでもない。けれど、儚くも神秘的な輝きを目の当たりにして、津波にも似た大きな歓声と拍手がわき起こった。そんな中、マコトは驚くことも笑うこともなく、言葉を発することも身動きすることもなく、ただただ氷の城を見つめ続ける。
知っている、とマコトは思った。自分は、この光景を知っていた。つらかった。痛かった。冷たかった。苦しかった。でも、それと同じくらい。いや、それよりも遥かに。
楽しくて。優しくて。温かくて。うれしくて。心が震えるほどに愛おしい記憶が、マコトの中に確かにあったはずだった。
けれど、それがなにかはわからない。知らない。覚えていない。そのことが、悔しくて悔しくてたまらない。ぎゅっと奥歯をかみしめたマコトの顎と首筋が、小刻みに震える。
「あ、あれ……? ボク、なんで……?」
しばらくして、頬が乾いて冷たくなっていることに気がついたマコトは、そこでようやく自分が泣いていたという事実に驚いた。まだ涙の残る目元を慌てて拭いながら見回した視界の中に、すぐ近くでたたずんでいた少女の姿が映り込む。
0
あなたにおすすめの小説
ラズとリドの大冒険
大森かおり
児童書・童話
幼い頃から両親のいない、主人公ラズ。ラズは、ムンダという名の村で、ゆいいつの肉親である、羊飼い兼村長でもあるヨールおじいちゃんと、二人仲よく暮らしていた。
ラズはずっと前から、退屈でなにもない、ムンダ村から飛び出して、まだ見ぬ世界へと、冒険がしたいと思っていた。しかし、ラズに羊飼いとして後継者になってほしいヨールおじいちゃんから、猛反対をされることになる。
困り果てたラズは、どうしたらヨールおじいちゃんを説得できるのかと考えた。なかなか答えの見つからないラズだったが、そんな時、突然、ムンダ村の海岸に、一隻の、あやしくて、とても不思議な形をした船がやってきた。
その船を見たラズは、一気に好奇心がわき、船内に入ってみることにした。すると、なんとそこには、これまで会ったこともないような、奇想天外、変わった男の子がいて、ラズの人生は、ここから歯車がまわり始める——。
レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか
宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。
溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。
アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」
果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レイルークは誰の手(恋)をとるのか。
これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分)
⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。
物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。
『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。
ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。
一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。
もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。
かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。
野良犬ぽちの冒険
KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる?
ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。
だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、
気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。
やさしい人もいれば、こわい人もいる。
あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。
それでも、ぽちは 思っている。
──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。
すこし さみしくて、すこし あたたかい、
のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。
童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)
カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ……
誰もいない野原のステージの上で……
アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ———
全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。
※高学年〜大人向き
生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち
はるかず
児童書・童話
生まれることもできない卵の雛たち。
5匹の殻にこもる雛は、卵の中でそれぞれ悩みを抱えていた。
一歩生まれる勇気さえもてない悩み、美しくないかもしれない不安、現実の残酷さに打ちのめされた辛さ、頑張れば頑張るほど生まれることができない空回り、醜いことで傷つけ傷つけられる恐怖。
それぞれがそれぞれの悩みを卵の中で抱えながら、出会っていく。
彼らは世界の美しさを知ることができるのだろうか。
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる