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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話

穢れた龍

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龍の祠に行くにはまず、 深い森に入る。
中心部に向かい盛り上がり始めずっと登っていくと龍の祠に到着するのだ。
しかし、 今までこの場所を表示しているマップはグレーダウンしていて入れないと表されていた。

それが、 今は


「………行けるんだ。」

1歩足を踏み入れたら、 マップはグレーダウンからカラーに変わる。
それは侵入可能エリアを示していた。

4人はゴクリと生唾を飲み込んでから山へと足を踏み入れた。

「…………足場がわるい」

「はい。……それに陽の光があまり入らないですね、 薄暗いです。」

ファーレンは足元を見ながら呟くと、 リィンは上を見上げて言った。
何層にも木の葉が重なり合い木漏れ日すら遮っている。
薄暗い森の中は先も見づらく4人は眉を寄せ顔を見合わせた。

「………進もっか」

「そうですね」

周りを警戒しながらも足を進める。
出てくる敵は小鹿、 子りす、 子うさぎと小動物ばかりで軽く手で振り払うだけで吹き飛んでいく。
そんな小動物の敵が現れる森だが一つだけそうじゃない敵が出てくるのだ。




ぱぱぱぱぱぱーーーん!!




「「『…………………………』」」

ふわふわな角食パン。
1斤に手足が付いていてボディービルダーがするポーズを決める。
だが、 その手足はマッチのように細い。
胴体が無くてパン1斤に手足があるのだ。
すごく小さい。

4人はポージングするパンを眺める。
そして、 クリスティーナが徐にパン切り包丁を取り出し

ぱぱぱぱぱぱーーーん!?

手足を切断させた。

「ふぁ!?」

『あ、これでいいんだ。パン1斤ゲットだぜー』

ペコちゃんのように舌を出しながらパンを掲げるクリスティーナ。
パンはモンスターから普通のパンになっていた。
このパン、 ふわふわであるが次に出たのはモチモチ、 次はチョコチップ、 レーズンパン、 バナナパン、 バターパンと種類が豊富である。
クリスティーナは現れたパンモンスターの手足をかたっぱしから切り捨ててパンをゲットしていった。
チョコチップのパンを切り分けたクリスティーナ、 それを食べながら進むスイ達。
クリスティーナが先頭に立ちパン無双しながら進むのだが、 スイは小さく呟いた。

「……………こんなにパンモンスターでるなら、 レアのバキューム食パンってここで出るのかな?」

うーん……と悩みながら言うと、 クリスティーナの目が更に輝いた。

『バキューム食パン!!かもーーんぬ!!』

しかし、 物欲センサーが反応したのかレアモンスターは出ること無く祠がある山頂に近づいてきた。

「………ん?」

祠が見えてきた時、 何か薄い膜を通ったような感覚があった。
スイは違和感を覚えて振り返るが見た目に変わりはない。

「スイ?どうした?」

「……………いや、 なんでもない」

歩かないスイに気付いてファーレンが声をかける。
少し後ろを見つめた後早足で3人を追いかけた。



スイが気になった違和感は、 穢れた龍のテリトリーに入った証拠だった。
ボスエリアと同じく侵入したら討伐か死に戻りするかしか出る事が出来ないエリアに侵入したのだ。
だが今までにない違和感にスイは首をかしげていた。

なんだろう、 このまとわりつく様な気持ちの悪さは………

その理由は、 穢れた龍と対峙した時にわかった。




『着いたわね、 祠』

「………龍はどこだろ」

山頂にある祠。
その扉はしっかりと閉まっているのだが、 扉には2枚のお札が貼られていた。
1枚はすぐ下に落ちていて、 全部で3枚なのがわかる。
戸惑いながらもスイは落ちたお札を拾う。
少し暖かい感じがした。

明らかに封印に使われていたものだろう。


「……これで封印されていたのかな」

「まだ2枚貼られていますね」

『という事は、 まだ龍は出て来てないってことよね?』

「今居ないし多分。……あれ?もしかして封印解いて倒せって事じゃね?」

「たぶん、 そうだろうねぇ…………あっつ!」

『え?どうしたの?』

はぁ、 吐息を吐き出してスイは祠に貼っているお札に触れた。
剥がさないとか……と思っていたら予想外にかなり熱いそのお札に驚いて手を離す。

「お札…凄く熱い」

そっと指先でチョンとつつくが熱さは変わらなかった。
リィンも同じように触れるがやはり熱い。
あっ!……と声を上げたリィンに全員が心配したあと、 これどうすればいい?と悩み出す。

「………仕方ないから一気に剥がすよ。戦闘準備に入って」

スイはハープを取り出しながら言った。
そんなスイの様子にそれぞれ離れて武器を装備する。
確認した後、 一気に2枚のお札を剥がした。
熱さに顔を歪め直ぐにお札を手放すと、 祠はひとりでに開き出した。

「………っう!」

溢れ出る瘴気…というのだろうか、 胸が押しつぶさるそうに苦しい。
それはこの場所のテリトリーに入った時に感じた違和感と同じだった。
極小に薄まってはいたが。

「(っ!あの時の違和感これだったのね!)」

直ぐに祠から離れてファーレンの隣に立つ。
今回も前衛の代わりにスイがそこに収まるのだが本能が感じ取ったのだ。
すぐに離れろ、と。

小さな小さな祠である。
その扉も小さい。
その祠から巨大な龍の腕が伸びてきた。
扉から出た片腕だけで祠の扉はパンパンである。


「これが………龍…………」


瘴気をまき散らかし、 小さな祠を破壊しながら出てきた穢れた龍は、 身体中が腐り肉が崩れ落ちる。
骨がむき出しに晒されギシギシと音を鳴らすが、 その動きは十分脅威だと、 4人は身体を震わせ引き攣った笑みを浮かべながら穢れた龍を見上げたのだった。


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