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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話

ログインしますた

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あの後ファーレンは話を聞くからと1度パーティを離脱。
明日の朝10時にホワイトライスケーキの宿で待ち合わせすると決めた4人。
スイたち3人は1度ホワイトライスケーキに戻りログアウトする事に決めた。

途中エルフの里に寄りたがったスイをクリスティーナが無理やり引きずり連れていく場面もあるが道中は順調だった。
モンスターとの遭遇もあり、 まだレベリング足りないねーと話しながらも3人はまったりしていて最初の時の苦戦もあまりしなくなったころにホワイトライスケーキに着いたのだった。
お互い挨拶をかわしてから宿をとりログアウトした。





ログインしますた。






いつものふかふかベッドではなく、 宿の平たいベッドで目が覚めたスイ。
伸びをしてから起き上がると、 ゲーム仕様で体が痛くないのが助かるなーと思った。

「ちょっとお風呂入りたいかも」

しばらくシャワーも浴びていなくて汚れが目立ってきた。
しかしまだ温泉は使用不可の為、 宿のシャワーを借りる。
少し早めにログインして良かった、 とさっぱりしてから食堂に行くと、 クリスティーナとリィンが軽食を取っている所だった。

「あ、 スイさん!」

「お待たせしましたー」

テーブルにつくと、 クリスティーナが同じ軽食を頼んでくれる。
一緒にお茶を注文し、 先に貰った。

「リィンさん空腹値は大丈夫ですか?」

「あ、 はい……先程クリスティーナさんから……」

「そうですか、 良かった」

『情熱的だったのよー、 私を見た瞬間リィンちゃんったら目の色変えるんだもの!もうお姉さんこまっちゃう』

「ぶふっ」

お茶をちょうど口に含んだ時にクリスティーナがクネクネしながら言う。
あぁん!とわざとらしく立ち上がり言うから周りのプレイヤーや住民の視線を集めた。
リィンが慌ててクリスティーナを止めて座らせると、 その先には会いたくないクランが。

「………スイ?」

「アーサー……」

これはたまたま偶然の出会いでアーサーがスイを追いかけていた訳では無い。
その為アーサーは物凄く驚いた顔をしていた。

「あー…えと、 元気?」

「元気だけど…」

「そっか、 それは良かった……な」

歯切れ悪く話すアーサーに首をかしげながらフレンチトーストを口に入れた。

『何1人なの?いつも一緒にいるフレンドは?』

「これから集まるところ、 なんだけど…」

何か話しかけたい雰囲気を全面におしだしているがセラニーチェに言われた言葉でアーサーは大分落ち着いている。

「あの、 さ!良かったら一緒に「クエストはしませんよ?」あ、はい」

前のめりで聞いてきたアーサーに、 リィンがお茶を飲みながら静かに答えた。
その冷たい反応にアーサーはタジタジである、
寒々しい雰囲気を全面に押し出しているリィンにスイは腕を擦り合わせた。
それはクリスティーナも同じで同時に片手を高々と上げる。

「『ホットミルク2つ追加で!!』」

さすが親友、 息ぴったりだ。
はぁーい!と返事が聞こえる中、 食堂の扉が開いた。
少し息を切らしているファーレンが入ってきてスイたちを探している。

「っ!いたぁ!」

スイたちと別れたファーレンは、 だいぶ遅れて第3の街に到着していた。
時間も遅いため、 街に着いた瞬間にログアウトしたのである。
その為噴水広場でログインしたファーレンは約束の食堂へと急いだ。
そして

「おまたせ!」

「なぁ!?」

そう言いながらスイの2口しか食べてないフレンチトーストを取り食べる。
空腹ゲージがレッドゾーンなのだ。
そんなファーレンをアーサーは目を丸くして見ていたが、 1口飲み込んだ瞬間目を見開くファーレンには気付かない。

「うまぁぁぁ!あまぁぁぁい……とろけるぅぅ」

これなにぃぃ?と頬に手を当てて聞くファーレンに

「フレンチトースト」

『卵に牛乳、 砂糖を食パンに吸わせて焼くのよー』

名前とどんなものかを教えながら、 クリスティーナは追加でフレンチトーストを2皿注文した。

「!?……………食パンが、吸う……?え?モンスター??」

「「『ぶふっ!』」」

食べようと口に運んでいる途中のフレンチトーストをじっと見つめて言うファーレンに思わず吹き出すスイたち。
アーサーは、 え?と目を丸くしてファーレンを見ていた。

「はい、 おまち!」

丁度いいタイミングでエプロンドレスを翻しながらウェイトレスがフレンチトーストを配膳しに来た。
そのフレンチトーストを受け取りファーレンに渡すとまじまじと見たあと、 ウェイトレスを見て

「食パンモンスター、 こんなに狩ってご飯の用意するの大変ですね」

「???………あぁ、 バキューム食パンの事ですね?流石にあれはレアですからあまり出ませんよー!お客さんのは普通の食パンです!またバキューム食パン出た時にお客さんが食堂来れたらいいですね」

うふふ、 と笑って言ったウェイトレスにクリスティーナの目が光る。
バキューム食パン!?なにそれ!!
聞こうとしたが他から呼ばれて走り出したウェイトレスを止めることは出来なかった。

『………バキューム食パン……レア………うふふ……うふふふふふ』

「怖いわ!!」

悦ってるクリスティーナを叩くスイ。
反動で丸テーブルに頭を突っ込むがクリスティーナは幸せそうだ。
新たな食材の情報を手に入れたのだから。
そんなスイとクリスティーナは通常運転、 ファーレンは目を向けることも無くフレンチトーストにかぶり付き、 リィンはあら?とクリスティーナを見るくらいだ。

そんな様子にアーサーはビックリし、 たまたま来たアーサーのクラメン達はクリスティーナの不気味な様子に近付けず遠くで見守っていた。



「よーし!龍退治に行こうか」

食堂で朝食を済ませた4人は必要なアイテムの確認、 購入を済ませたあと街の入口に来ていた。
スイのフレンチトーストを食べたファーレンは謝り回復薬を1つ買って渡してある。
要らないと言ったが、 気持ちだからと押し切られ必要な物だしと受け取る。

こうして、 4人は龍の祠がある山へと向かい出発した。







ちなみに、 アーサー達とは食堂であっさりと別れた。
しつこく粘られるのでは……と思っていたがそんな事もなく、 龍退治前に要らない疲れを蓄積する事なく出発できた事にスイはホッとしたのだった。








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