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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話
疫病と神話
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「…………………………………」
椅子に座るスイは眉を寄せて本を閉じ、 頭を抱えた。
2冊とも本に厚みはなく、 読み切ることは難しくはなかった。
それも書き方がとても上手かったからだろう、 活字ばかりの本を億劫とも思わなかった。
時間にして1時間半ちょっとか、 凝り固まった体を軽く解してから椅子の背もたれに体を預けた。
「……………疫病に、 神話………かぁ」
絵本は神話が書かれていた。
それは世界の始まりの話。
何も無いこの世界に6種類の精霊王がどこからともなく現れる。
光 闇 水 火 土 風
彼ら精霊王は世界を照らし土を耕し雨をふらせ風が吹き火を起こした。
そしてその影で影を産む。
こうして世界は生き物が住める大地がつくられ、まずは動物を手のひらから生み出した。
属性ある魔物達である。
それから立派な樹木から人を成し、 生まれていく。
彼らは特殊な容姿をしていてエルフと呼ばれた。
長い生命に、 全てを見抜く瞳。
こうして様々な種族が生まれた後、 溢れる程に増えた人族を中心に世界は回り始めた。
争い事が起きないよう、 等しく安寧に過ごせるよう精霊王達は全ての生き物たちから負の感情を、半分預かり封印した。
これから生まれる生き物たちも、 幸せに暮らせるようにと。
しかし、 いつしか精霊王の恩恵を忘れていった世界の子供たちに、 光の精霊王が激怒する。
『わたしが光照らさねば生きられぬ小さき者達よ!何故わたしを崇めない!何故わたしに感謝の意を持たない!!』
光の精霊王の怒りは凄まじく、 世界から光を消し闇に染まった。
それにより闇の精霊王は慌てて他の精霊王と共に光の精霊王を説得にむかう。
光と闇は相反する存在ではあるが、 均一に世界に恩恵を与えていた。
そのバランスが崩されたのだ。
それは精霊王達にしても一大事、 世界の崩壊にも繋がりかねないからだ。
しかし、 光の精霊王は怒り話を聞いてはくれない。
それどころか、 世界が闇で覆われた事で魔物達は活性化し、 狩りの効率があがり喜ぶ者や、 普段ない闇夜を楽しむ者まで出てきた。
これにより、 光の精霊王の怒りの矛先は闇の精霊王へとむかう。
『そなたがそそのかしたのか、 そうだったのか!我を崇めず闇を選ぶと言うのか!!』
世界を照らす光の精霊王は傲慢であった。
全て自分が一番でないと気がすまないのだ。
みんなでそうではないと説得したが、 我を忘れた光の精霊王はそれを許さなかった。
『苦しめばよい!生き物全て!苦しめばよいのだ!!』
光の精霊王は膨れ上がった怒りのままに、 世界中から集められ封印されていた抱えきれない程の負の感情を一気に解放した。
その負の感情から巨大な穢れた龍が生まれる。
腐敗し悪臭を撒き散らし、 疫病を流行らせた。
たくさんの生き物が倒れふし、 そこで手を伸ばすのだ。
精霊さま……助けてください。
種族関係なく倒れる生き物たちに次第に冷静さを取り戻す光の精霊王。
『……………わたしは…なんということを…』
すぐさま他の精霊王達に頭を下げた光の精霊王はこの穢れた龍を封印する。
しかし、 1度解放された事にかわりはない。
生き物たちは負の感情を芽生えさせ、 病気や疫病が体を蝕む事が増え、 穢れた魔物が現れた。
こうして世界は闇に侵食された世界に変わったが、 精霊王への恩恵を忘れなくなった。
今ははるか昔の物語である。
「………疫病や病気の発生と、 精霊王かぁ」
絵本を置き、 もう1冊をとる。
「……………今から200年前の出来事、 エルフの里から始まった疫病について………」
エルフの里から始まった疫病についてここに記す。
始まりは小さなホクロであった。
体の一部に出来たそのホクロは気付かないくらいに小さいのだが、 それは次第に広がり痛みがひどくなる。
何もしていなければ痛みはないが触れると激痛が起こるのだ。
後に爛れ出血し、 悪臭を漂わせ死に至る。
この進行速度は個体により様々である。
疫病の最初の発生者は187歳女性、 どこから感染したのかは判明できず。
疫病が蔓延してからひと月、 特効薬は見つからず。
しかし、 光属性と闇属性の混合治療で回復の兆しあり。
ダークフェアリーライトを検証
第1段階、 小さなホクロができる
第2段階、 ホクロがアザにかわる
第3段階、 広がり体の大部分をアザが覆う、 痛みが出始める
第4段階、 布が擦れるだけで激痛が襲う
第5段階、 出血し爛れ腐れ始める。生臭い悪臭が漂い後に死に至る。
ダークフェアリーライトでの治療は第3段階まで成功。
アザが少し残るが完治を確認する。
しかし、 第3段階以上に回復の兆しなし。
他の検証を試みる。
当時医療を司るエルフが書き綴った物のようだ。
この書物には第4段階からの回復方法は書かれていなかった。
だが、 今のエルフの里で流行っている疫病と酷似している。
たぶん、 これだろう。
スイはその本をテーブルに置いたまま同じ棚から疫病についての本を探し始めた。
「…………200年前の疫病かぁ、 私の種族イベントと重なって起きてるってことかな?それとも種族イベントがあるから起きたのかも………?」
椅子に座るスイは眉を寄せて本を閉じ、 頭を抱えた。
2冊とも本に厚みはなく、 読み切ることは難しくはなかった。
それも書き方がとても上手かったからだろう、 活字ばかりの本を億劫とも思わなかった。
時間にして1時間半ちょっとか、 凝り固まった体を軽く解してから椅子の背もたれに体を預けた。
「……………疫病に、 神話………かぁ」
絵本は神話が書かれていた。
それは世界の始まりの話。
何も無いこの世界に6種類の精霊王がどこからともなく現れる。
光 闇 水 火 土 風
彼ら精霊王は世界を照らし土を耕し雨をふらせ風が吹き火を起こした。
そしてその影で影を産む。
こうして世界は生き物が住める大地がつくられ、まずは動物を手のひらから生み出した。
属性ある魔物達である。
それから立派な樹木から人を成し、 生まれていく。
彼らは特殊な容姿をしていてエルフと呼ばれた。
長い生命に、 全てを見抜く瞳。
こうして様々な種族が生まれた後、 溢れる程に増えた人族を中心に世界は回り始めた。
争い事が起きないよう、 等しく安寧に過ごせるよう精霊王達は全ての生き物たちから負の感情を、半分預かり封印した。
これから生まれる生き物たちも、 幸せに暮らせるようにと。
しかし、 いつしか精霊王の恩恵を忘れていった世界の子供たちに、 光の精霊王が激怒する。
『わたしが光照らさねば生きられぬ小さき者達よ!何故わたしを崇めない!何故わたしに感謝の意を持たない!!』
光の精霊王の怒りは凄まじく、 世界から光を消し闇に染まった。
それにより闇の精霊王は慌てて他の精霊王と共に光の精霊王を説得にむかう。
光と闇は相反する存在ではあるが、 均一に世界に恩恵を与えていた。
そのバランスが崩されたのだ。
それは精霊王達にしても一大事、 世界の崩壊にも繋がりかねないからだ。
しかし、 光の精霊王は怒り話を聞いてはくれない。
それどころか、 世界が闇で覆われた事で魔物達は活性化し、 狩りの効率があがり喜ぶ者や、 普段ない闇夜を楽しむ者まで出てきた。
これにより、 光の精霊王の怒りの矛先は闇の精霊王へとむかう。
『そなたがそそのかしたのか、 そうだったのか!我を崇めず闇を選ぶと言うのか!!』
世界を照らす光の精霊王は傲慢であった。
全て自分が一番でないと気がすまないのだ。
みんなでそうではないと説得したが、 我を忘れた光の精霊王はそれを許さなかった。
『苦しめばよい!生き物全て!苦しめばよいのだ!!』
光の精霊王は膨れ上がった怒りのままに、 世界中から集められ封印されていた抱えきれない程の負の感情を一気に解放した。
その負の感情から巨大な穢れた龍が生まれる。
腐敗し悪臭を撒き散らし、 疫病を流行らせた。
たくさんの生き物が倒れふし、 そこで手を伸ばすのだ。
精霊さま……助けてください。
種族関係なく倒れる生き物たちに次第に冷静さを取り戻す光の精霊王。
『……………わたしは…なんということを…』
すぐさま他の精霊王達に頭を下げた光の精霊王はこの穢れた龍を封印する。
しかし、 1度解放された事にかわりはない。
生き物たちは負の感情を芽生えさせ、 病気や疫病が体を蝕む事が増え、 穢れた魔物が現れた。
こうして世界は闇に侵食された世界に変わったが、 精霊王への恩恵を忘れなくなった。
今ははるか昔の物語である。
「………疫病や病気の発生と、 精霊王かぁ」
絵本を置き、 もう1冊をとる。
「……………今から200年前の出来事、 エルフの里から始まった疫病について………」
エルフの里から始まった疫病についてここに記す。
始まりは小さなホクロであった。
体の一部に出来たそのホクロは気付かないくらいに小さいのだが、 それは次第に広がり痛みがひどくなる。
何もしていなければ痛みはないが触れると激痛が起こるのだ。
後に爛れ出血し、 悪臭を漂わせ死に至る。
この進行速度は個体により様々である。
疫病の最初の発生者は187歳女性、 どこから感染したのかは判明できず。
疫病が蔓延してからひと月、 特効薬は見つからず。
しかし、 光属性と闇属性の混合治療で回復の兆しあり。
ダークフェアリーライトを検証
第1段階、 小さなホクロができる
第2段階、 ホクロがアザにかわる
第3段階、 広がり体の大部分をアザが覆う、 痛みが出始める
第4段階、 布が擦れるだけで激痛が襲う
第5段階、 出血し爛れ腐れ始める。生臭い悪臭が漂い後に死に至る。
ダークフェアリーライトでの治療は第3段階まで成功。
アザが少し残るが完治を確認する。
しかし、 第3段階以上に回復の兆しなし。
他の検証を試みる。
当時医療を司るエルフが書き綴った物のようだ。
この書物には第4段階からの回復方法は書かれていなかった。
だが、 今のエルフの里で流行っている疫病と酷似している。
たぶん、 これだろう。
スイはその本をテーブルに置いたまま同じ棚から疫病についての本を探し始めた。
「…………200年前の疫病かぁ、 私の種族イベントと重なって起きてるってことかな?それとも種族イベントがあるから起きたのかも………?」
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