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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話
アザと書籍探し
しおりを挟む「どうした? 何かあったか?」
しゃがみ込み俯くスイの隣に同じく屈み背中を撫でるハーヴェイ。
静かなその声を聴きながら深呼吸して顔を上げた。
顔色は良くないが、 さっきよりもだいぶ落ち着いた。
「匂いが………生臭い匂いが家に入ってからずっとするのよ…奥に行けば行くほど酷くなって扉が開いた時は………………」
グッ……と手に力を入れて眉を寄せるスイを見たあと、 ハーヴェイは目を金色に光らせた。
「……………なんだこれ」
「え?」
生理的に溢れる涙を軽く拭きながらハーヴェイを見ると険しい表情でスイを見る。
なに?なんかおかしい?
「…………」
スっと手を伸ばしてスイの頬を軽く拭う。
しかし、 とくに何もついていない。
「……なに?」
「なんか……黒い何かがスイの肌に……」
「え………?」
ハーヴェイが言うには黒いアザのようなものがスイの頬や体など至る所にあると言う。
しかし、 それも少しずつ減っているという。
そして全てが消えるとスイのあの生臭い匂いが無くなって吐き気も収まった。
ゲーム仕様で嘔吐はしないが、 嘔吐くのは止められない。
「……………はぁ」
顔を上げて息を吐き出すと、 額に溜まった汗をハーヴェイが袖でそっと拭う。
「……大丈夫か?」
「うん、 大丈夫」
「いつから匂いがしてた?」
「家に入ってからすぐ」
「俺には分からなかったな……どうする?待っているか?」
「…………いく」
気を取り直してもう一度家の中へ。
やはり生臭い匂いはしていて鼻を抑えながら歩くスイ。
うぇ…………くっさ
生ゴミしかない部屋に閉じ込められる位に酷い
いや、 閉じ込められたことないけど。
「…………ハーヴェイ、 何度もごめんね」
「気にしなくていいよ」
パラベンの母、 パメラはとても綺麗な人だった。
見た目20代後半くらいだろうかやつれていて髪のツヤも無くなっているが元気な頃は煌めく銀髪を風に靡かせながら外を歩いていたんだろう。
ゆっくりと体を起こしたパメラの体には至る所にアザがあり、 生臭い匂いはパメラからしていた。
眉を寄せてパメラを見るスイはそっと部屋を出ていった。
「スイさん?」
「リィンさん」
家の前で考え込むスイ。
道行くエルフ達の何人かにはアザがあり、 範囲が広い人ほどうっすらと生臭い匂いがしている、 外を歩く人はパメラほど酷くはないみたいだ。
眺めているスイの後ろからリィンが声を掛けた。
外に出たスイが気になって着いてきたようだ。
「パメラさんからしてた、 あの匂い」
「生臭いって言ってたやつですか?」
「そう」
アザが酷ければ酷いほど痛みは強く匂いがする様だ。
これは一体…………
………………………疫病…………か
200年前に流行った疫病
それを調べ始めた途端にこれだ。
なにか、 関係があるんだろうか…………
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「………おっきい」
「で、 何を調べるんすか?」
ここは書庫館。
人族にある図書館である。
エルフ特有の書籍や長寿であるエルフだからこそある数千年前の書籍もあり、 持ち出し禁止だが閲覧は可能。
もちろん取り扱い注意である。
中心が吹き抜けになっている書庫館は周りがズラッと書籍で埋まっていて端々にテーブルが置いてある。
書籍は年代ごとに置かれていて司書はその全てを記憶している為、 司書に聞いて探すのが利口だ。
「アザが広がっていて痛みもある。 他のエルフ達にも症状が出ているから病気の可能性が高いだろうな。アザが出る病気を中心に調べるか」
ここに来る間に道行くエルフ達にも話を聞いたが皆同じ症状をいう。
感染病だろうか……
しかし
「……………多いなぁ……大変そう」
スイは書籍が並ぶ本棚を見上げた。
五階建てになっている建物全てにぎっしりと並ぶ書籍。
探す前に挫けそう。
「………協力、 してくれないんだ?」
「しますとも!!」
スイのやる気が上がった所で司書に話を聞きそれぞれに動き出した。
年代別なある病気の欄を虱潰しに調べているクリスティーナ達を横目にスイはもう一度司書の元へと向かう。
「あの……」
「はい、 なんでしょうか?」
「……………200年前の疫病について知りたいんです」
「はい、 その書籍でしたら…………」
書籍に聞いた疫病についての本は三階にあるとの事だ。
スイは果てしなく長い階段をひたすら上る。
「………エレベーターほしい」
はぁ……
ため息混じりに階段を上るスイをそれぞれ必死に本をめくるクリスティーナ達は誰も気付いていなかった。
「………ここか」
本を端からツーーー……となぞり探すと、 疫病の本と一緒に絵本が置いてあった。
「…………絵本?」
1度絵本を戻し疫病の本を開くと、 表紙に書かれた文書に目を細めた。
[マシュマロ歴1860年に莫大な被害を受けた疫病についてここに記す。
この書籍を読む者は神がいた時代、 神器歴の書物を読むことを強く進める]
「神器歴………?」
先程戻した絵本をもう一度取り、ページを捲ると1ページ目に神器歴と記載されていた。
「……これも読めってことか。………それにしても」
マシュマロ歴って……えーーー………
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