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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話

寝起きドッキリ

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「んっ…………」

ベッドから上半身を起こし伸びをしたスイ。
ハーヴェイの家のベッドはふかふかで物凄く気持ちいい。
それを堪能した後、 ベッドから出て身だしなみを整えている最中にクリスティーナももぞもぞと起き出した。

「あ、 おはよ」

『おはよー』

「『………………………変なの』」

今までスイの家に2人でいて、 今は仲良くベッドに横になりギアを被っている2人。
お泊まりなのにギアを忘れなかった執念にスイは呆れもしたがクリスティーナらしいと笑ったものだ。

クリスティーナも起き上がりサッと準備して最終チェックに髪を結び直してスイへと振り返る。

『変な所はないかしら』

「………変と言ったら全て変だけど……」

『全てって全否定!!』


「ハイハイ、 じゃあ準備も終わったし行こ「わあぁぁぁぁぁぁ!!!」……うか?」

ドアノブを掴みちょうど開けた時だった、 隣からファーレンの悲鳴が聞こえたのは。

『なに!?どうしたの!?』

「ファーレンだよね! 今の声!」

2人は急いで走り隣の部屋へと入っていく。

「どうしたの!?」

『何かあった……………の?』

ガチャリと音を鳴らして開けた先には、 薄手のネグリジェを着たリィンがファーレンの上に跨って首筋に顔を埋めている所だった。
2人は必死にリィンの肩を掴み引き離そうとするファーレンとしがみつきうっとりとした顔で歯を立てるリィンを交互にみた。

「………あれ? あの子天使族じゃなかったっけ?」

「『ハーヴェイさん!!』」

スイの後ろから現れたハーヴェイは、 スイの肩に腕を乗せて頭に顎をのせ軽く体重を掛けて立ってリィンを見る。

「ご飯出来たから呼びに来たけど、 これはどんな状態?」

『見ての通りサキュバス化してますねー』

「…………あぁ、 ハーフなんだ」

『そうです。 ………ハーヴェイさん、 スイが再起不能になっちゃう』

「うん、 しってる」

顔を真っ赤にしてアニメで目をグルグル渦巻きになっているようなスイにハーヴェイはクスクス笑った。

「それで、 あれどうするの?」

『ああ、 あれはすぐに戻ります』

妖艶にファーレンを見ながら生気を奪うリィン。
ゲージがどんどん回復されてオールグリーンになった時、 灰色の翼が天使の真っ白な翼へと変わった。
虚ろだった目に光が戻り瞬きを数回した後、 見える1面の肌色に「………あれ?」と呟いた。

「…………ん?」

ファーレンの頭の横に両手を着いて上体を起こしたリィン。
スイ達から見たらファーレンの腹に座り頭の横に手を着くリィンが押し倒している様にみえる。
ハーフパンツ1枚のファーレンの上にネグリジェ姿のリィン。

『わぁーお!』

パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!

『いいよー!いいよー!そのアングル!!リィンさんちょっとこっちみて!』

「え?……」

「ファーレン!そのまま!顔隠したままちょっとだけこっちみて!!早く!!」

リィンがキョトンと呼ばれた方を見ると、 クリスティーナがスクショを撮りまくっている。
そんな横には密着しているスイとハーヴェイ。

「スイさん!」

「うわぁ!腰捻んないで!当たってるってー!!」

「……………え?」

ファーレンの叫びに下を見るリィン。
完全に座り込んでいるリィンの座布団と化しているファーレンは顔を真っ赤にしながらリィンから必死に顔を逸らしている。

「え!?」

『いいよー!ファーレン照れ顔いいわぁー』

「照れてねーよ!!」

ファーレンにしてみれば男とわかっても可愛い女の子姿、 性格も可愛いリィンが自分に股がっているのだ。
焦らない、 照れないわけがない。

「いけない扉を開きそうだね?ファーレン」

「開かねーわ!!」

「きゃっ…」

回復したスイがニヤニヤしながらファーレンを見ると、 顔を真っ赤にしたファーレンがリィンの肩に手を置いて体を起き上がらせた。
その動きにリィンは後ろに倒れて腹から足までずり下がる。
座る足の上に、リィンがちょこんと座っている。
ファーレンの腰に手を当てて体を支えながら。

『はぁぁぁぁん!!それもいいー!!…………お店で売れないかしら写真。 それか撮影会とか………』

「するかーーー!!」






♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「朝から騒がしくしてすいませんでした………」

朝食の並べられたテーブルにつくリィンは顔を赤らめ体を小さくしながらハーヴェイに謝罪した。

「それはいいけど……大丈夫?」

顔を覆って悶えているファーレンを見ながら言うハーヴェイ、 リィンは更に顔を赤くさせた。

まだ朝の衝撃から抜け出せないファーレンは必死に野菜スープを飲みだした。
掻き込む勢いで食べ熱さに悶えている。

「食べながらで悪いけど、 今日俺は昨日往診した場所にもう一度行くけどみんなはどうする?」

「いきます!」

「………言うと思いました」

リィンはガックリと肩を落としながらサラダを口に入れた。








食事を済ませたスイ達はまず昨日ハーヴェイが向かった家へと行くことにした。
住宅街を歩き建売住宅が並ぶ家の1つ。
ハーヴェイはインターホンを鳴らした。

「はーい……お、 ハーヴェイ!」

「様子見に来た」

「ん、ありがとな!………そっちは?」

「原因探すの手伝ってくれる人達」

「そっ……かぁ、 ありがとうな」

ハーヴェイの友人、 パラベンは疲れたように笑った。
昨日見た時よりも明らかにやつれてる様子のパラベンにハーヴェイは眉を上げた。

「パラベン?お前……」

「とりあえず上がってよ」

「…………………」

パラベンとハーヴェイに続きスイ達も家に入ると、 スイは何か生臭い匂いを感じた。
ん?……と周りをチラチラ見ながらついて行くが特に家の中が荒れている様子もない。
どこから来てるのだろうか。
向かっている場所は母親の部屋らしく、近付く毎に匂いがキツくなる。
スイは顔を歪ませ口、 鼻を手で覆った。

『スイ?どうしたの?』

「………臭い」

『え?臭い?』

「生臭くない?」

『え?ぜんぜん。 むしろラベンダーのいい香りするわよ?』

「………………………………」

クリスティーナの言葉にさらに眉を寄せた。

『どうしたの?』

「………………なんでもない」

自分だけ?周りを見ると匂いに気付いている人はいないみたいだ。
なんで?
そう思いながらついて行き、 角の部屋で止まった。
扉が開かれ一気に匂いが溢れ出す。

「うっ………!!」

耐え難い匂いにスイは顔を青ざめ玄関に向かって一目散に走り出した。
強烈な匂いにその場には居られなかった。

『え!?スイ!?』

「どうしたんです!?」

「……………………………………」

走り出したスイにクリスティーナとリィンが声を上げハーヴェイは眉を寄せて見ていた。
そして、 周りを確認するが変わりはない。

「……………スイになにか見えたか感じたものがあったのか?」

ハーヴェイの目ですら原因特定が出来なかったこのアザに反応したスイをハーヴェイは追いかけた。








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