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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話

サーヴァの店と目立ちたがり

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第1の街ヴェリアーナ。
ゲームを始めて最初に降り立つ街は変わらず幻想的な雰囲気を醸し出していた。
その街並みを見ながらスイは目的の楽器屋へと向かう。
そんなスイを、奏者がコソコソと後を付けて歩き出した。






「こんにちは、サーヴァさーん!!」

背中を向けて何か作業をしているサーヴァ。
店の入口が開き、鈴がなった瞬間スイは走りより屈んでいるサーヴァの背中に飛び乗った。
ぐぇ!!とサーヴァのうめき声が聞こえ、地面に両手を付ける。
そんな様子を店の窓から見ているプレイヤーが目を見開かせていた。

「久々だ!サーヴァさん久々!!」

「おもてーよ!クソガキ!!」

「乙女に何を言う!!」

「来ていきなり飛びつくやつがあるか!」

「ここにいる!」

振り払われサーヴァの背中から降りたスイは胸を張りながら言い、サーヴァは腰痛てぇぎっくり腰なったらどうしてくれる…とさすっている

「で?久しぶりじゃねーか。今回はどうした?」

「うん、届けもの頼まれてさ」

「届けものだァ?……なぁおい、あいつはお前の仲間か?」

ストレージから箱を取り出している時、サーヴァは外を指さした。

「んん?」

窓に張り付いている男性プレイヤーがこちらをガン見していた。

「!?」

「………知り合いじゃ無さそうだな」

サーヴァはドアを開けて中を見ている男性を壁に寄りかかりながら見た。

「なんのようだ?」

「うぉ!ばれた!!」

男性の驚き様にサーヴァは眉を寄せてその様子を見て、スイは店内から出ずに見ていた。
サーヴァに出るなと言われた為だ。

「なんの用だ?……お前も奏者か」

サーヴァは男性が持つリュートを見て言った。このリュートは確かにサーヴァが売ったものだ。
男性はサーヴァを押しのけ店内に転げる勢いで入ってきて

「あの!フェアリーロードに奏者もう1人いらない!?2人居た方がいいと思うんだよね!君が居ない時とかバフいなくなる訳でしょ!?」

リュートを見せて言ってくる男性をサーヴァは眉をひそめて見ている。
どうやら自分を売り込みに来たらしいが、いきなり馴れ馴れしく話しかけられスイは良い気がしない。
そんな中、店のドアがまた開いた。

「前から言ってるが、フェアリーロードの加入は募集してねーよ」

「あ、カガリさん」

ドアに寄りかかり腕を組んで言うカガリの隣にはアレイスターとナズナが居た。
スイはパタパタと3人に駆け寄ると、ナズナがポフッと抱き着いてくる。

「………あー、迷惑かけたみたいですんません」

カガリがペコっとサーヴァに頭を下げると、スイも申し訳なさそうにサーヴァを見た。

「ごめんなさい、サーヴァさん」

「いや、こいつはお得意さんだしな。こいつが悪いわけじゃねーし気にすんな」

ポンッとスイの頭を軽く叩いた後、カウンターにある椅子に座るサーヴァ。
その後について行き、持ったままだった箱を渡した。

「サーヴァさん、これ」

「あ?さっき言ってた届けもんってやつか?」

カガリたちが話し合っているのを横目にサーヴァは箱を開けた。
中には片手用の盾が入っていてピクリと眉を動かす。

「………これぁ、リーゼロッテか?」

「うん」

やっぱり知り合い?と聞くとあぁ…と返事が帰ってくる。
その盾を取り出しいろんな角度から見たサーヴァは、カウンターに盾を置いてスイを見る。

「…そうだな、1週間……2週間くらいを目安にまた来い」

「2週間…わかった。あ、あとこれ」

現在ハープと一緒に使っているリスのヴァイオリン。
それを差し出すと、サーヴァは受け取り見はじめる。

「………いい楽器じゃねーか」

楽器本体や弦などを見てサーヴァは笑う。
ちゃんと戦闘に向いているのは一目で分かったサーヴァはスイにヴァイオリンを返した。

「楽器自体はハープよりもいいやつだ。ただ、戦闘向きの自バフが得意で、ハープみたいな全体バフは苦手だ。それを頭に入れてやってみろ」

「………わかった」

「ハープも見せてみろ」

「うん」

手入れを繰り返し、大事に使っているハープだ。
それをサーヴァは見て眉を寄せる。

「ちょっと借りるぞ」

サーヴァはそれを持ち返事も待たず奥へと入っていった。
スイはそれをただ見送るだけ。

「スイ、話終わったか?」

「あ、カガリさん…サーヴァさんハープ持って行ってしまって…ん?」

振り返りカガリを見ると隣には先程の男性がいる。
カガリはニヤリと笑い終わったら顔貸せよ、と悪い顔をしている。
えぇ…と引いている間にサーヴァは戻ってきてスイにハープを返してきた。

「あのよ、大事に使ってんのはすげぇわかんだけどよ、ここ」

スイが持つまさしくその場所、そこをサーヴァが指さした。

「かなり脆くなってる。……あー、あれだ。お前の力にこいつが追いついてないんだ」

「え……」

「負荷がかかりすぎてるんだよ」

今まで、スイと一緒に戦ってきたハープは耐久値の問題ではなく楽器の内部がスイの力を受けて負荷がかかっていたようだ。

「補強はしたがな、脆くなってることに代わりはねーから無茶はすんな。折れるぞ」

呆然とハープを見るスイ
手に馴染んだそのハープをスイはギュッと抱きしめた。

「……………壊してなんかやるもんかぁぁ」

「お、おう」





こうして、サーヴァの店を出たスイ達はそのまま街の外へと向かっている。

「カガリさん?どこ行くんですか?」

「熊だよ」

ニヤリと笑って言うカガリ、その横にはナズナもニヤニヤと笑ってアレイスターは頬に手を当て微笑んでいた。
そんなフェアリーロードの後を鼻息荒く着いてくる男性。

どうやら彼は第2陣プレイヤーで奏者に転職したらしい。
早い段階で転職した為、スイの次に古い奏者だろう。

彼はサポートと戦闘同時にできる職が好きだがこのゲームに該当するものは無かった。
しかし、スイを見て考えは変わる。
ベータ時代からしていた槍を使う前衛を投げ打ってまで奏者に転職した。
全ては



「キリンジさん凄い!」

「やっぱりキリンジ居るだけで戦闘が100倍しやすいぜ!」


他のプレイヤーに賛辞を受けたいが為だ。
特にフェアリーロード等の有名所は目に付きやすく、賛辞を受けやすい。
そこに入りまだまだ発展途上の奏者で成り上がる
上手くスイを出し抜けたら…

そう思っているこの男性プレイヤーキリンジ。
微塵もそんな様子を見せないでいた。実際カガリやナズナ、アレイスターもそんな思惑は気付かなかったのだ。
ただ、元々加入お断りである。
あまりにもしつこく見事なバフを見せるという為、イライラし始めたカガリが

じゃあ見せてもらおうじゃねーか

そういったのだ。
カガリ曰く、こいつはいけ好かねぇ。
好みの問題もあるようだ。

こうして全員が森を歩く。
キリンジはどうやらサーヴァから戦える楽器を手に入れたようで、バフと戦闘どちらもこなしていた。
戦って、バフをしてはたまにカガリやナズナ、アレイスターの反応を伺っている。
自分を売り込んできた事もあり、全体的にしっかりとこなしていた。
それはカガリも見て頷いている。
でも、ナズナはあまりいい顔はしていなかった

「ナズナさん、どうだろう。俺もなかなかじゃない?」

隣を歩くナズナに話しかけるが、ナズナは顔を顰めてキリンジを見た。

「…………スイの真似?」

「っ!」

そう、ナズナが気に入らない様子で見ていたのは動きがスイに似ているのだ。
あの爆発的な強さはないが、どのタイミングでなんのバフを掛け、どこで攻撃にうつるのか。
楽器の特性で全て同じではないが、それでも似通った場所は沢山あった。
お手本を見て動いているようだ。

「………い、いや!そんなこと……」

「行くぞ」

カガリはキリンジの言葉を遮り先に進む。
そんなカガリや、フェアリーロードを見て下唇を噛み締めついて行った。

「……カガリさんいいんですか?」

チラッと後ろを歩くキリンジを見やった。
明らかに怒りを含んだ顔をしている、気に入らないのだ。
スイはカガリに最初言われた通り戦闘に参加せずだまって付いていく。









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