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第3章 ホワイトライスケーキと疫病の話
翠の体とギアのデータ数値
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翌日、翠はラフな格好に軽い化粧を施して自宅を出た。
まだ暑く日差しも強い為、黒の日傘をさして炎天下の中を歩く。
向かう先は大学病院で、事故の際に運ばれた病院もここである。
定期的に検診が必要で、今日、その検診の日であった。
予約はしていてもさすが大きな病院、それなりに待たされた後指示されレントゲンを撮る。
そして、先生とご対面だ。
「やぁ、久しぶりだね東堂さん。変わりはないかい?」
「お久しぶりです。特にはないですかね」
「そうかそうか。とりあえず見せてもらおうかな」
レントゲンを映し出すライトがついた後、中年太りした先生は翠に体を向けた。
少し腕をさすってから肘よりも上へと捲りあげ先生に見えるようにすると、その腕をとる。
「………うん、痛みはあるかい?」
「やっぱり寒い時とか、動かしすぎたら痛みは有りますね」
「うーん……1年様子見たけど、これ以上はまた手術をして入れ替えても回復は難しいと思う。」
「………そうですか。」
「まぁ、レントゲンを見る限りは悪化もしていないからこのまま経過観察かな。」
先生の視線に釣られるように見たのは4枚のレントゲン写真で、それぞれに両手両足が写っていた。
事故により最初は回復不可とまで言われた翠の腕は日常生活を可能にするくらいまで奇跡の回復を遂げている。
しかし、この回復により翠が受ける負担は軽いものではなかった。
まず、両腕は複雑骨折をしていて中には粉砕している場所もある。
これらを治す為に無数の医療用ボルトなどで人工骨と自身の骨を繋ぎ合わせる必要があった。
だが、人工骨を使う際拒否反応がおきたのだ。
これにより、一時期翠は生死の狭間を行き来することとなった。
拒否反応は、2種類用意されているうちの1つの人工骨からで、部位に合わせて付けているため拒否反応がない人工骨では耐久性が足りなく代わりの使用が出来なかった。
これにより、医師から提示された案は
自身の足の骨を腕に移植し、足に人工骨を埋め込む。
というものだった。
足の人工骨と腕の人工骨とでは種類が違う為拒絶反応も起きない。
その分、リハビリや翠の体にかかる負担も大きい。
しかし、そうしないと翠の腕は動くことすらままならない状態になると言われ、選べる選択肢はあまりにも少なすぎた。
義手などの提案もあった。
しかし、少しでも自分の手でヴァイオリンに触れたい。
なにより血の通った腕を失くしたくない。
こうして、翠は18時間にも及ぶ手術を受け過酷なリハビリを続ける事となった。
こうしてなんとか腕を動かし手を動かし指を動かせる事が可能になった翠。
その代償に体内にある沢山の医療器具に体にできた傷跡。
そして、定期的な受診だった。
それでも、リハビリが終わり自分の足で歩いた時は動く手足に感謝した。
まだ、私の人生は終わってない!
前向きに捉える翠に、家族や親友のあかねの存在はとても大きかった。
こうして経過観察を言い渡された翠は深く深呼吸した。
「…………悪化してない、よかった」
またいつ腕が動かなくなる、強い痛みが来る、手術をしなくてはならない。
そう言われるのでは、とハラハラしたものだった。
「…………もしかして、ゲームの怪力ってここからきてる?………なんてまさかねー」
ないない!とパタパタ手を振り、痛み止め処方、会計が終わり病院を後にした。
「よーし!景気づけにビールでも買おっかな!」
気分上々でコンビニに寄る。
「………らーっしゃいませー」
やる気のない店員を横目にビール6本パックとくんさきを手にレジへと向かった。
「………………700円くじ2回どーぞー」
差し出された箱に手を入れ2枚引き抜く。
どちらも当たりで、店員が取りに向かった。
1リットルの野菜ジュースに10本入り電池を一緒に袋に入れられる。
…………クジで電池って当たるんだ、わっ!1200円する!700円クジで1000円オーバーあたったラッキー。
無表情でかなり喜ぶ翠は袋を受け取り足早に帰宅した。
「っっ!ぷはー!!うまー」
暑い中のビール最っ高!
Tシャツハーフパンツに着替えてクーラーを付けた。
「…………冷えるな」
すぐにカーディガンと薄手の膝掛けを使い暖かくて涼しい空間を作った。
「…………いいね、休日」
まったりと過ごす幸せな日々を翠は噛み締める。
「ゲートオープン」
ギアを被り、ゲームを始める。
軽い浮遊感のあと、目覚めるのは自室のベッド……
その、はずだった。
最初の何も無い空間に立つスイ。あの時と違って明るく室内を照らしている。
あるものと言ったらスクリーンだけだ。
「……なんでここに?」
«やぁプレイヤーネームスイ。君がログインするのをまだかまだかと待っていたよ!»
現れたのはゲームマスターだった。
突然の事で驚き口をパクパクさせるスイに、ゲームマスターは朗らかに笑った。
«ごめんごめん、びっくりするよね»
まぁまぁ、座ってよ!
そう言っていきなり現れた白い丸テーブルに、同じデザインの二脚の椅子。
ゲームマスターは直ぐに座り、両手を組んでその上に顎を乗せスイを見上げる。
戸惑いながら座ると、ゲームマスターはニコリと笑った。
«いきなり呼び出してごめんね。話が終わったら直ぐにゲームに戻すからね»
「はぁ…」
«君の力の話をしないといけないから、ボクは君を呼んだんだ。»
そっと両腕の傷がある場所へと触れて口を開く。
«ボク達運営はね、君の有り得ない位の力を正直バグかと思ったんだ。失礼な事言ってごめんね。でもゲームバランスが崩れたらこまるから、僕らは原因を調べたんだ。»
衝撃的な内容に、スイは困惑する。
«それでね、わかったことがある。それは君のここ»
指さされた傷跡。
«君の腕では無くてね、腕の中にある医療器具に数値が反応しているんだ。»
「…………え?」
«うん、順を追って話すね。まず、ギアについてなんだけど医療にも用いられるのは知ってるかな?今ではゲームとしてと、体内の情報管理の為に家庭で使う人が増えたためにリーズナブルで手に入れる事が出来るようになったね。2面性をもつギアだけど、ゲームを開始するにあたり健康面や身体的データを取っている。これは、安全にゲームが出来る為にしている事。»
翠はそれに頷いた。
最初のゲーム規約にそれは書いてあったからしっている。
«そのデータを元に初期ステータスができる。脳波の測定、体に気付かないくらいの負荷を掛けて99パーセントの体のデータをとる。
これが通常のデータ習得ね。ただ、君の場合その両腕両足に埋め込まれた無数の医療器具、これにギアは反応したんだ。元々医療用だからね、特に医療用器具みたいな大きなものは見逃したりしない。手足の筋肉は落ちてて骨の状態もデータではいいとは言えない。むしろステータス的にはマイナス要素だ。でも、その人工骨と無数の医療器具。ギアは肉体の1部としてステータスに盛り込んだ。スイさんにとっては紛れもなく肉体の1部だしね»
「…………………」
«だから、あの腕力や脚力による爆発的な力が生まれていたんだ»
「………脚力?」
«うん、君の足にも人工骨の医療用器具があるだろう?それもステータスになるからね»
「でも、他のステータスに変わりはなかったですが…」
«あぁ、だって脚力って項目はないでしょ?だからステータスには表示されないよ。ねぇ、腕の力は強いから重たい武器を持つことが出来るけど、足の力がないと歩いたり走ったり、君はジャンプもしてるよね。あれ、全部出来ない事だよ»
まさかの新事実にスイはポカンと口を開けた。
«これはね、同じように体が不自由なプレイヤーとも比較してる。医療用器具や処置なんかの違いで君みたいな凄いパワーは発揮してないけど、少なからずステータスが上乗せされてた。それと同じように医療用器具を使っていなくて、でも体に不具合がある人のステータスが下がっているのも確認してる、……言い方ちょっと悪いかな。
ステータスは基本いじれないけど、アイテムなんかで上げることは出来るから、このステータスが下がっている人には救済処置をするつもりだよ»
「そう、なんですね」
呆然と頷いたスイを見てからゲームマスターは立ち上がりおもむろに頭を下げた。
«ボク達運営が、しっかり管理と情報収集をしていなかったからこういう結果になりました。様々な状態でのテスターをする事が足りなかったと痛感しています。そのせいであなたには多大な迷惑を掛けることになりました。大変申し訳ありませんでした»
小さな子供の姿だが、確かに運営の中身は立派な大人である。
彼は誠心誠意謝る。そんな人をスイが許さないはずがなかった。
「…………理由はよくわかりました。私の事は気にしなくて大丈夫です。」
«……………それと、許可なくあなたの体について調べた非礼を許してください。正直ここまでの内容であると認識が甘かった。»
「…………………もう、いいです。腕と足についてはもう私が決めて選んだ道ですから。むしろ、大好きなヴァイオリンをまた弾けること、気兼ねなく走ったりジャンプしたり……むしろそれ以上のことをさせてくれるこのゲームには私、感謝してるんです」
«そう、言って頂けることに、我々運営一同感謝します»
こうして、予想外な理由を知ったスイは自室で目を覚ました。
蜘蛛の糸に体がぐるぐる巻きになっている状態でうるうるした目がスイを見上げている。
「………この状況は一体?」
「シャー!」
「ひゃぁん!」
二匹はご機嫌に横になるスイを見下ろしながらクルクルと移動していた。
「………えぇー」
蜘蛛なりの「大好きー!」っていう表現である。
体がぐるぐる巻きになったまま、ゲームマスターの言葉を思い出していた。
«全プレイヤーにこの情報は伝えて不正がないことは言うね。ただ、かなりプライベートな話になるからオブラートに包んで伝えて、対象者には運営が個別に説明をする。»
知り得た情報をそのままには出来ない、特にゲームには大切なステータスに関することだ。
スイは頷き了承する。
それを見てからゲームマスターは再度頭を下げてから消えていった。
「………しかた、ないよねぇ…」
どう伝えるのかは運営次第だがさすがに配慮はしてくれるだろう。
このぐるぐる巻きを解きながらも考えていた。
まだ暑く日差しも強い為、黒の日傘をさして炎天下の中を歩く。
向かう先は大学病院で、事故の際に運ばれた病院もここである。
定期的に検診が必要で、今日、その検診の日であった。
予約はしていてもさすが大きな病院、それなりに待たされた後指示されレントゲンを撮る。
そして、先生とご対面だ。
「やぁ、久しぶりだね東堂さん。変わりはないかい?」
「お久しぶりです。特にはないですかね」
「そうかそうか。とりあえず見せてもらおうかな」
レントゲンを映し出すライトがついた後、中年太りした先生は翠に体を向けた。
少し腕をさすってから肘よりも上へと捲りあげ先生に見えるようにすると、その腕をとる。
「………うん、痛みはあるかい?」
「やっぱり寒い時とか、動かしすぎたら痛みは有りますね」
「うーん……1年様子見たけど、これ以上はまた手術をして入れ替えても回復は難しいと思う。」
「………そうですか。」
「まぁ、レントゲンを見る限りは悪化もしていないからこのまま経過観察かな。」
先生の視線に釣られるように見たのは4枚のレントゲン写真で、それぞれに両手両足が写っていた。
事故により最初は回復不可とまで言われた翠の腕は日常生活を可能にするくらいまで奇跡の回復を遂げている。
しかし、この回復により翠が受ける負担は軽いものではなかった。
まず、両腕は複雑骨折をしていて中には粉砕している場所もある。
これらを治す為に無数の医療用ボルトなどで人工骨と自身の骨を繋ぎ合わせる必要があった。
だが、人工骨を使う際拒否反応がおきたのだ。
これにより、一時期翠は生死の狭間を行き来することとなった。
拒否反応は、2種類用意されているうちの1つの人工骨からで、部位に合わせて付けているため拒否反応がない人工骨では耐久性が足りなく代わりの使用が出来なかった。
これにより、医師から提示された案は
自身の足の骨を腕に移植し、足に人工骨を埋め込む。
というものだった。
足の人工骨と腕の人工骨とでは種類が違う為拒絶反応も起きない。
その分、リハビリや翠の体にかかる負担も大きい。
しかし、そうしないと翠の腕は動くことすらままならない状態になると言われ、選べる選択肢はあまりにも少なすぎた。
義手などの提案もあった。
しかし、少しでも自分の手でヴァイオリンに触れたい。
なにより血の通った腕を失くしたくない。
こうして、翠は18時間にも及ぶ手術を受け過酷なリハビリを続ける事となった。
こうしてなんとか腕を動かし手を動かし指を動かせる事が可能になった翠。
その代償に体内にある沢山の医療器具に体にできた傷跡。
そして、定期的な受診だった。
それでも、リハビリが終わり自分の足で歩いた時は動く手足に感謝した。
まだ、私の人生は終わってない!
前向きに捉える翠に、家族や親友のあかねの存在はとても大きかった。
こうして経過観察を言い渡された翠は深く深呼吸した。
「…………悪化してない、よかった」
またいつ腕が動かなくなる、強い痛みが来る、手術をしなくてはならない。
そう言われるのでは、とハラハラしたものだった。
「…………もしかして、ゲームの怪力ってここからきてる?………なんてまさかねー」
ないない!とパタパタ手を振り、痛み止め処方、会計が終わり病院を後にした。
「よーし!景気づけにビールでも買おっかな!」
気分上々でコンビニに寄る。
「………らーっしゃいませー」
やる気のない店員を横目にビール6本パックとくんさきを手にレジへと向かった。
「………………700円くじ2回どーぞー」
差し出された箱に手を入れ2枚引き抜く。
どちらも当たりで、店員が取りに向かった。
1リットルの野菜ジュースに10本入り電池を一緒に袋に入れられる。
…………クジで電池って当たるんだ、わっ!1200円する!700円クジで1000円オーバーあたったラッキー。
無表情でかなり喜ぶ翠は袋を受け取り足早に帰宅した。
「っっ!ぷはー!!うまー」
暑い中のビール最っ高!
Tシャツハーフパンツに着替えてクーラーを付けた。
「…………冷えるな」
すぐにカーディガンと薄手の膝掛けを使い暖かくて涼しい空間を作った。
「…………いいね、休日」
まったりと過ごす幸せな日々を翠は噛み締める。
「ゲートオープン」
ギアを被り、ゲームを始める。
軽い浮遊感のあと、目覚めるのは自室のベッド……
その、はずだった。
最初の何も無い空間に立つスイ。あの時と違って明るく室内を照らしている。
あるものと言ったらスクリーンだけだ。
「……なんでここに?」
«やぁプレイヤーネームスイ。君がログインするのをまだかまだかと待っていたよ!»
現れたのはゲームマスターだった。
突然の事で驚き口をパクパクさせるスイに、ゲームマスターは朗らかに笑った。
«ごめんごめん、びっくりするよね»
まぁまぁ、座ってよ!
そう言っていきなり現れた白い丸テーブルに、同じデザインの二脚の椅子。
ゲームマスターは直ぐに座り、両手を組んでその上に顎を乗せスイを見上げる。
戸惑いながら座ると、ゲームマスターはニコリと笑った。
«いきなり呼び出してごめんね。話が終わったら直ぐにゲームに戻すからね»
「はぁ…」
«君の力の話をしないといけないから、ボクは君を呼んだんだ。»
そっと両腕の傷がある場所へと触れて口を開く。
«ボク達運営はね、君の有り得ない位の力を正直バグかと思ったんだ。失礼な事言ってごめんね。でもゲームバランスが崩れたらこまるから、僕らは原因を調べたんだ。»
衝撃的な内容に、スイは困惑する。
«それでね、わかったことがある。それは君のここ»
指さされた傷跡。
«君の腕では無くてね、腕の中にある医療器具に数値が反応しているんだ。»
「…………え?」
«うん、順を追って話すね。まず、ギアについてなんだけど医療にも用いられるのは知ってるかな?今ではゲームとしてと、体内の情報管理の為に家庭で使う人が増えたためにリーズナブルで手に入れる事が出来るようになったね。2面性をもつギアだけど、ゲームを開始するにあたり健康面や身体的データを取っている。これは、安全にゲームが出来る為にしている事。»
翠はそれに頷いた。
最初のゲーム規約にそれは書いてあったからしっている。
«そのデータを元に初期ステータスができる。脳波の測定、体に気付かないくらいの負荷を掛けて99パーセントの体のデータをとる。
これが通常のデータ習得ね。ただ、君の場合その両腕両足に埋め込まれた無数の医療器具、これにギアは反応したんだ。元々医療用だからね、特に医療用器具みたいな大きなものは見逃したりしない。手足の筋肉は落ちてて骨の状態もデータではいいとは言えない。むしろステータス的にはマイナス要素だ。でも、その人工骨と無数の医療器具。ギアは肉体の1部としてステータスに盛り込んだ。スイさんにとっては紛れもなく肉体の1部だしね»
「…………………」
«だから、あの腕力や脚力による爆発的な力が生まれていたんだ»
「………脚力?」
«うん、君の足にも人工骨の医療用器具があるだろう?それもステータスになるからね»
「でも、他のステータスに変わりはなかったですが…」
«あぁ、だって脚力って項目はないでしょ?だからステータスには表示されないよ。ねぇ、腕の力は強いから重たい武器を持つことが出来るけど、足の力がないと歩いたり走ったり、君はジャンプもしてるよね。あれ、全部出来ない事だよ»
まさかの新事実にスイはポカンと口を開けた。
«これはね、同じように体が不自由なプレイヤーとも比較してる。医療用器具や処置なんかの違いで君みたいな凄いパワーは発揮してないけど、少なからずステータスが上乗せされてた。それと同じように医療用器具を使っていなくて、でも体に不具合がある人のステータスが下がっているのも確認してる、……言い方ちょっと悪いかな。
ステータスは基本いじれないけど、アイテムなんかで上げることは出来るから、このステータスが下がっている人には救済処置をするつもりだよ»
「そう、なんですね」
呆然と頷いたスイを見てからゲームマスターは立ち上がりおもむろに頭を下げた。
«ボク達運営が、しっかり管理と情報収集をしていなかったからこういう結果になりました。様々な状態でのテスターをする事が足りなかったと痛感しています。そのせいであなたには多大な迷惑を掛けることになりました。大変申し訳ありませんでした»
小さな子供の姿だが、確かに運営の中身は立派な大人である。
彼は誠心誠意謝る。そんな人をスイが許さないはずがなかった。
「…………理由はよくわかりました。私の事は気にしなくて大丈夫です。」
«……………それと、許可なくあなたの体について調べた非礼を許してください。正直ここまでの内容であると認識が甘かった。»
「…………………もう、いいです。腕と足についてはもう私が決めて選んだ道ですから。むしろ、大好きなヴァイオリンをまた弾けること、気兼ねなく走ったりジャンプしたり……むしろそれ以上のことをさせてくれるこのゲームには私、感謝してるんです」
«そう、言って頂けることに、我々運営一同感謝します»
こうして、予想外な理由を知ったスイは自室で目を覚ました。
蜘蛛の糸に体がぐるぐる巻きになっている状態でうるうるした目がスイを見上げている。
「………この状況は一体?」
「シャー!」
「ひゃぁん!」
二匹はご機嫌に横になるスイを見下ろしながらクルクルと移動していた。
「………えぇー」
蜘蛛なりの「大好きー!」っていう表現である。
体がぐるぐる巻きになったまま、ゲームマスターの言葉を思い出していた。
«全プレイヤーにこの情報は伝えて不正がないことは言うね。ただ、かなりプライベートな話になるからオブラートに包んで伝えて、対象者には運営が個別に説明をする。»
知り得た情報をそのままには出来ない、特にゲームには大切なステータスに関することだ。
スイは頷き了承する。
それを見てからゲームマスターは再度頭を下げてから消えていった。
「………しかた、ないよねぇ…」
どう伝えるのかは運営次第だがさすがに配慮はしてくれるだろう。
このぐるぐる巻きを解きながらも考えていた。
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