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第2章 水の都アクアエデンと氷の城
イズナとナズナ 2
しおりを挟むまだイズナの友達は現れていない。
ゲームに入る時既に2人からはもう中に入るからね、と連絡を受けている為この人混みの中の何処かにいるのだろう。
イズナは楽しみな気持ちと少し不安な気持ちが混ざっていたが、ナズナに強く手を握られる事で落ち着きをとり戻した。
そんな中、2人に気付くプレイヤー達が現れ出す。
勧誘や友人との待ち合わせをしつつ、チラチラと2人に向ける視線が増えていった。
「見られてる」
「……………そうだね」
少し不満そうに言うナズナに頷くイズナ。
そんな2人の表情
すぐに変わった。
「スイ」
「スイさーん!」
走りながら手を振るスイに2人も振り返す。
ニコニコと笑いながら2人の元に来たスイは、待たせてごめんね、と風に揺れる髪を抑えながら言った。
「タクさん、リアルで用事が出来てしまって来れないみたいですよ。」
「そうなんだ、わざわざ伝えに来てくれたの?」
「はい、セラニーチェさんに言付けてすぐにログアウトしたみたいです」
「そっかぁ、悪い事しちゃったなぁ」
「…………………タク、ナズナスペシャル」
「やめてあげて!」
タク不在となったが、ただの初心者のレベリングにフェアリーロード3人がいるのだ、問題ないだろう。
「それにしても遅いな、私よりも早くログインしてるはずなのになぁ」
イズナが周囲を見ていると、フェアリーロードが集まっているという事で遠巻きに見られてはいるが、その中でもびっくりしてコソコソ話をする女性と少女がいた。
イズナと目が合い女性は少女の腕を掴んで歩き出す。
緊張からか歩幅は少し大きめで表情は硬い。
「………………あの、リアルでのクラスメイトですか?」
女性から発した言葉に、イズナは緊張しながら頷いた。
身バレしない用に、気づいたらこう声をかけると決めていたのだ。
見慣れないお互いの姿に照れ笑いをしながらお互い自己紹介をしたのだった。
「わたしは大福といいます。前衛剣使いで種族は白猫です。よろしく」
青い背中まである髪を揺らしながら頭を下げた女性。
そして次、茶髪ショートに黒猫の耳をつけた少女が手を挙げた。
「あたしはいちごよ、僧侶で回復してるー。種族は黒猫ね!」
合わせていちご大福である。
これは完全な偶然らしい。
お互いいちご大福が一番好きで語りだしたら軽く3時間経過する位には愛してる!いちご大福!!
……………らしい。
「そうなんだ、リアフレさんなんですね」
「はい!」
噴水広場にある芝生にレジャーシートを引きながら言うスイ。
イズナとナズナにバスケットや水筒を持ってもらい綺麗にレジャーシートを引いていく。
「はい、どうぞ!」
広げたレジャーシートにイズナとナズナが座った事で、友人2人も静かに座った。
ニコニコしているフェアリーロード達とは違いナズナの友人達は居心地悪そうにしていた。
イズナとナズナが持っていたバスケットはサンドイッチや、ピックで食べれるおかずが入っている。
もちろん、クリスティーナお手製である。
デザート付きにナズナの目が光ったが、以前食べ過ぎて流石にクリスティーナに怒られたナズナは必死に我慢してサンドイッチに手を伸ばした。
生クリームにいちごたっぷりのフルーツサンドだが。
「あの、すいません私たちまで」
「皆で食べるように多めに頼んだんで大丈夫ですよ」
「……………いただきます」
「わたしも、いただきます!」
もぐもぐもぐもぐ……………ごくん
「「なにこれ、美味しすぎる!」」
「クリスティーナの作ったやつは世界一美味しい」
ナズナがニコッと笑って言った事にも、イズナがナズナに1口頂戴と、やっぱり予想通りに食べだしたチェリーパイを狙って口を開けている事も
友人達は初めて見る光景に目を白黒させた。
「…………なんか、ここではイズナがナズナちゃんに凄い甘えてるみたい」
「………え?」
「いつもさく……、ごめん。イズナがナズナちゃんを引っ張ってるのに、いまは逆だなって思ってさぁ」
「わかるわかる!」
「それに、ナズナちゃんもいつもよりもっととっつきやすいよね。実はちょっと、かなり苦手意識がね、あったのよー」
ごめーん!と手を合わせるいちごに、ナズナは首を傾げていた。
2人の話に、イズナはそう思われていたの?とびっくりする。
私が思っていたのとみんなが考えてるのって違うのね。
いや、当たり前なんだけどさ。
こうして、残り1人の新規プレイヤーが来るのをスイ達はピクニックをしながら待っていたのだった。
「あ、あの!」
初期装備を身に付けた魔法職の人族が話し掛けてきた。
ソワソワとした落ち着かない様子に、キョロキョロと周りを見るその少女。
気付いたら、第3陣がどんどんと増えていてレジャーシートを広げてピクニックするスイたちはあきらかに浮いていた。
その証拠に先にゲームをしているプレイヤーも、今ログインしたばかりのプレイヤーも1度はスイ達を見る。
「………………もしかして、クラスメイトかな?」
初期装備を付けた少女がおずおずと言うと、ナズナは頷いた。
「そうだよー!私たちがクラスメイトね!こっちがイズナで向こうが片割れちゃん。片割れちゃんの隣の人はイズナのクラメンさんのスイさんね」
一気に言われてびっくりするが、片割れちゃんなどよく学校で出るワードに少女はやっと笑顔を見せた。
「はじめまして、よろしくお願いします。私は…………あ、サチっていいます」
照れたように言うサチは名前慣れないね!と笑いながら言った。
みんな頷き、最初はそうだよねーと肯定する。
「スイです。イズナちゃんと同じクランなんです。よろしくお願いしますね」
「はい、お願いします!……………えっと、片割れちゃん?なの?」
「…………………片割れちゃんってなに?」
スイにしがみつき、新たに出てきたレモンのケーキを食べている。
「あっ………………とぉ」
困ったように助けを求めるサチにナズナが立ち上がる。
「自己紹介しちゃってからレベリング行きましょ」
「そうだったね、私イチゴ」
「私大福」
「「2人あわせてぇ!イチゴ大福!!」」
どやっと言うが、食い物である。
お互いの名前で1番びっくりしたのは実は当人達であった。
「まずはここで!初心者が慣れるために最初に来る草原」
「ここで戦闘に慣れよっか」
最低限杖とローブを新調したサチは緊張した面持ちで頷いた。
出てくるのはウサギにフォレストウルフ
スイの苦い思い出が蘇る敵達である。
「あ、ウサギ可愛いね。倒すのかぁ」
サチが草を食べるウサギを見ながら言うが、全員が口輪揃えて可愛くないよ!と言う。
「え?こんなにかわい………い………」
ウサギが体を起こしてサチを見る。
………………………………ぐわぁ!
「きゃぁぁぁあああ!ウサギ!?ウサギィ!?」
数秒じっとサチを見たあと、形相が鬼のように変わり口を開く。
素早い動きとジャンプ力で一瞬にサチの目の前に来てパニックになるサチにスイは横で落ち着いてと伝えた。
イズナがサチとスイの前に出て剣で敵を抑える。
それを見ていたイチゴと大福はどこで手を出そうか迷って居たが、イチゴがサチの隣にナズナが近付いたことに気付き指を指す
あれ、見てと言うように。
「…………呪文」
「え?」
「呪文!早く!」
「は、はい!!」
焦りながら杖を掲げて最初に選ぶ属性、そして使える魔法を唱えだした。
「ファ…ファイアボール!」
「イズナ!」
サチが繰り出すファイアボールに合わせてナズナがイズナの名前を呼ぶと直ぐにその場を離れ、ウサギにファイアボールが当たった。
「………た、倒した……」
「………おめでとう、初討伐」
隣にいたナズナに言われてサチはゆっくりとナズナを見た。
倒したのよね?と言いながら。
ナズナの頷きにサチはやっと両手を上げて喜んだのだった。
少し離れた場所で見守るイチゴ大福の2人はそんなナズナを黙って見ていた。
サポートした事も、自分から動いた事も、大声を出した事も
全て自主的に動くナズナを2人は初めて見た。
「……………序盤の敵がこんなに強いなんて、これってほんとに進めるの?」
「進めるよ、その為にパーティを組んだりクランをつくるの」
草原から森へと敵を倒しながら向かう途中にサチが不思議そうに言った。
職種によっては明らかにソロは無理よね?と疑問が沸いたのだ。
それにイズナが笑いながら答えてみんなも頷く。
これは、Anotherfantasiaをするプレイヤー全員が最初に思うことだった。
初期モンスターにしては強い、倒せないと打ちのめされる。
しかし、攻略法を模索し仲間を集って1つずつクリアしていく醍醐味もあるのだ。
このゲームは協力ゲームを強く推している。
それは、1人だけで進める強い武器、防具だより
で進むだけなんて楽しくないでしょ?
やるならみんなで力を合わせて強い敵を何とか倒したいじゃないか。
それが運営の協力ゲームを推すための外せないポイントだった。
「……………そっかぁ」
森へと入り、サチのレベリングの為全員が次第に戦闘へと入る。
素早い動きで敵を切り裂くイズナも、中距離から繰り出される沢山の砲撃、時には蹴りを食らわせ敵をぶっ飛ばすナズナ。
そしてにこにこしながら味方のステータスをバカ上げしてイルカさんハープで敵を薙ぎ倒しちぎっては投げちぎっては投げをするスイに全員が顔を引き攣らせた。
「ちょっ………あの3人強すぎじゃない!?」
「「…………………有名クランのめっちゃ強いプレイヤーだよ。正直びびったわ」」
「えぇー!?」
翌日での教室
ジト目で見るクラスメイトに、桜はワタワタとしていた。
「なにあの強さ、反則」
「てか、フェアリーロードとかマジか」
「………どうやったら強くなれるの?」
「わ!私はそんなに強くない方だよ!」
「「「うそつけ!!」」」
「えー」
3人に質問攻めされている中、その話をたまたま聞いたクラスメイトの男子が首を突っ込んできた
「えぇ!?Anotherfantasiaだよな!?フェアリーロードの話!?」
「入れて入れて!情報カモンヌ!」
さらに起きる質問攻めに、桜が困っていた頃楓が桜に会いに教室に現れた。
「……………なに、これ。桜に迷惑かけてる?」
背後に般若を背負ったような楓に幸子達が気付く。
「あ、片割れちゃん」
「えと、おはよ」
「おはよう、昨日はありがとうね」
「!………いいよ。おはよ」
急に親しく話し出した3人が昨日のプレイヤーだと、前もって言われていた楓は頷き照れ隠しに顔をそむけながら小さく返事を返す。
そして、楓が来ても気付いていない男子達に楓はジト目になる。
「……………………これは、ギルティ」
足を動かしかけた楓に、桜がやっと気付きギョッとする。
「っ!まって!まってぇ!!リアルはだめぇ!!」
慌てて男子達から離れて楓に抱きつくと、チラっと桜を見たあと、リアルじゃなかったらいいんだね?と不吉な言葉を放った。
それから数日たった日の噴水広場での出来事である。
3人の男性プレイヤーが殺戮天使の餌食にあい空高く打ち上げられていた。
「次はいったいだぁれかなー。あなたの天使が舞い降りるぅー。イタズラしたらいけないよーおいたをしたらいけないよー。あなたの天使が舞い降りてぇー裁きの鉄槌下しちゃうぅー。」
ほの暗い笑みで怪しい歌を歌う天使様はもう破壊力がヤバすぎた。
近くを通り過ぎたタクが脂汗を吹き出してある場所を必死に隠していたのをナズナは知らない。
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