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第2章 水の都アクアエデンと氷の城

女王蜂その後

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緊急イベントはナズナの恐怖をまき散らして終了した。
あんなに可愛いのに!と悲鳴を上げている人も結構いたが、それもいい…と恍惚な表情をするヤバそうなプレイヤーも増えていた。

そして、女王蜂との会話が成功した為街への襲撃が止まり進行速度により起こる街の1部以上の消失が止まった。
第2の街全てが消える訳では無いが、それでも損失は大きかっただろう。








《…………本当によいのか?愛し子よ》

「はい、クランのみんなも良いって言ってくれてますから問題ないですよ」

《…………そうか、ならばそうさせてもらう》


現在、休業中になっているフェアリーガーデンに居るクランフェアリーロードと女王蜂に娘達。
その一室に、女王蜂はいた。
今回の騒動で女王蜂がプレイヤーに恐怖を覚えてしまい、この後今まで通りに森に戻るのに不安を覚えていた。
そして戻るとしてもあの氷の城付近の高い木の上に戻るのだろう。
行きにくい上に行けるプレイヤーが限られてしまう。
女王蜂もそれは困るよな、と思っていた。

そんな時にフェアリーロードに言われた言葉。

「私たちのクランハウスの一室に来ませんか?」

女王蜂は驚いた。それは心底驚いた。
しかし、願ってもない事だったのだ。
娘達の食事を取りに森にも帰りやすい場所、一室と言っても広いため、十分な蜂の巣を作るスペースもある。



「女王様が落ち着くまでゆっくりしていってね」

「そのままいてもいいのですよー」

セラニーチェがふふっと笑って飲むのはハチミツレモン。
濃厚なハチミツを使ったハチミツレモンである。
クラーティアはハチミツ入りのケーキを1口。
砂糖不使用でハチミツの甘味を引きたててみました!とクリスティーナは笑った。

《………感謝の印に》

全員に渡される「女王蜂の愛し子」の称号。
そして、スイには「女王蜂の愛娘」へと変わっていった。

「称号だ!」

「ああぁぁぁん!!品質向上!!」

クリスティーナ、大興奮である。

そして、スイには元々あった称号が書き変わっていた。
タップして内容を確認する。

「……………ハチミツ、ローヤルゼリー採取時、品質が全てプレミアムになる。
(特別仕様)スズメバチの召喚」

スズメバチの召喚?
首を傾げるスイに、それを聞いたリィンがスイの隣へと近づく。

「召喚、ですか?」

特別仕様と書かれたスズメバチの召喚を手に入れたのは、今回のクエストを通してスズメバチの好感度が一定以上上がった為であった。
通常の「女王蜂の愛娘」にスズメバチの召喚はついていない。






[プレイヤーが称号スズメバチの召喚を手に入れました。これにより、裏ルート街移動が解放されます。]

「「「「「街移動!?」」」」」

《なんじゃ、知らんのか?》


1度行ったことある街へはスズメバチの召喚で連れて行って貰うことができる。
街から街への転送は現在出来ず歩いて行くしか方法がない為、これは画期的である。

ちなみに、スズメバチの召喚は第3の街のスズメバチとの好感度一定以上で貰うことが出来る称号である。
1人持っていると10人まで一緒に移動が出来る。
ただし、召喚にも3時間のクールタイムがある為、往復には注意が必要である。

「え、すごい」

純粋にそう口を開いたファーレンに、スイは頷く。
2人でその説明を読み、スズメバチ召喚について話しているのをクラメンが優しーく見守っていた。


あんなに仲悪かったのにねぇ


仲良くなって…
とクラメンたちは喜んでいる。

《では、巣作りをする》

「わかった」

「なんかあったら呼んでくれ」

邪魔になるだろうと、部屋を出ようとするスイ達を女王蜂は止めて、スイにハチミツを手渡した。

《今渡せるのはこれだけ》

小さな瓶を1つ。
ストレージにも数は1つだった。
しかし、品質はプレミアムとなっている。

「!」

にっこり笑った(雰囲気)女王蜂にスイは思わず抱きついたのだった。



「ありがとうございます!!」

《こちらの言葉だ。それは》


こうして女王蜂はハチミツをクランフェアリーガーデンで作り始め、ハチミツを求めるプレイヤーが入れ替わりに現れる様になったのだった。
ハチミツは低価格で売り出され、場所代としてフェアリーロードに寄付すると女王蜂は太っ腹宣言をしたのだった。
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