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第2章 水の都アクアエデンと氷の城
ハチミツの入手
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噴水広場までの道のりをゆっくりと飛行しながらも向かうスイ。
コツを掴んできたのか、まっすぐに飛べるようになっていた。
「慣れてきたかな、なかなか難しいのね」
翼をフワフワ動かして前進するスイは空を見上げる。
そしてバサッ!と音を鳴らして大きく翼を動かしたスイは一気に上昇した。
「あ、そうか。3メートル縛りだっけ」
上昇したが、いきなりピタリと止まってしまう。あれ? と首を傾げたが納得。
前には進める、だが上にはいけない。
しかし、プレイヤーよりは遥かに高い位置にいるのも事実である。
そして、スイの履いているスカートは風で靡くのに、スカートの中は真っ黒になっている不思議現象が起きていた。
女性でも覗かれる心配のない安心設計である。
「まぁ、なんとかなるかな?」
慣れない移動にスイは悪戦苦闘しながらも金策とレベル上げの為に動き出した。
スイが受けたクエストは採取クエストだった。
氷の城から真逆に進むと出てくる大森林。
そこに定期的に出てくる蜂が作るハチミツ採取依頼である。
定期的に大量発生する蜂たちは、この時多くのハチミツを一気に作る。
あまり増えすぎるのも問題になる為、ハチミツ採取終了後、半分ほど蜂たちの討伐も依頼されるらしい。
「………パンケーキかなぁ、はちみつレモンも捨て難いよね」
ぶれない食への興味と期待にワクワクしながら大森林を進んでいくスイ。
その手にはいつもの愛用イルカさんハープが握られていた。
たまーに、ブンブンと素振りをしながら進むこと30分。
巨木の上についている巨大な蜂の巣が見つかった。
「………ヤバい大きさ」
蜂の巣はスイの3倍以上の大きさだ。
周りに飛ぶ蜂たちも大きさは尋常じゃない。
だって、人間と同じ大きさをしているのだ。
しかも、妙にデフォルメされていてかわいい。
「………………ギルド受付のお姉さんがめっちゃ笑顔だったのって、誰も受けないクエストだからとかじゃないよね?」
ハチミツ入手がなかなか難しく、価格高騰しやすい商品らしいが…………
まさか…………ね?
思わず口の端をヒクヒクとさせながら、スイはイルカさんを構えた。
「……はちさん、ごめんね?」
ゆっくりと音を紡ぐスイ。その音色に蜂たちの動きは止まりスイに視線を向けた。
クリクリとした目はだんだんと下がっていき、その場からバタバタと地面に落ちていく。
しかし、そのスピードはかなり緩やかだった。
「………ふぅ、たまたまだけど昨日作ってて良かったぁ」
睡眠のデバフ効果のある曲と、重力操作の曲。
重力操作の曲は、説明欄に魔曲と書かれていた。
作った時は文字がグレーダウンしていて弾けなかったが、今は何故か文字も白く問題無く弾くことが出来る。
不思議そうにしながらも、蜂たちを怪我なく地面に下ろせたし良しとしよう、と頷いて巣を見上げた。
ふわりと浮き上がり、巣を覗き見る。
その巣は不思議と半透明になり中が見える様になった。
………………そして、目が合う巨大蜂。
「!?!?!?ひゃあ!?」
びっくりしてかなりのスピードで下がったスイの前にゆっくりと現れたのは女王蜂であった。
他より大きく立派な触覚がある女王蜂は、首周りに真っ白なフワフワとした襟巻きのようなものをしている。
《………………》
地面を見て横たわる蜂たちを確認した後、女王はまたスイを見た。
《…………なにをしにきた?人間》
「喋った………」
優しげな声が直接頭に響く。
フワフワと飛ぶ女王は、スイの前まで来て見下ろしてきた。
スイの倍はあるその女王はスイの言葉を待っていた。
「………あ、あの………ハチミツを分けていただきたいのです。」
《……ハチミツ、ね。だから娘達を眠らせた、と?》
スっと目を細めて下を見る女王に、スイはヤバいかな…と冷や汗をかく。
「す、すいません。怪我をしないように眠らせてしまいまして」
《確かに、怪我はしておらぬな》
娘達と言う女王は、蜂たちから視線を上げてスイを見る。
その瞳からは感情を見い出せなかった。
《……お主は不思議な人間だな。今までの人間は娘達を殺し巣を破壊してハチミツを奪い…………わたしのややこまで殺して行ったのに》
殺さずに、頼み事をしてくるなんて。
そう言った女王はさらに近づき細長い手でスイの頬を撫でた。
その瞬間、視界が弾けた。
一瞬で変わったビジョンが映し出されるのも一瞬
だが、それで十分だった。
スイは流れる涙を止められず顔を真っ赤にしながら女王を見つめた。
衝撃だった。
魔物が話をした事もだが、この女王は今までされてきた事を鮮明に覚えていた。
娘達を殺され巣を破壊。
生まれたばかりの子供を連れ去られる。
何万回とそれは繰り返され女王は何度も何度も泣き崩れていた。
ミツバチは慈悲深い種族であった。
何度も何度も繰り返されるその採取と殺戮にも関わらず、人族に恨みを持たない。
世は弱肉強食。私達は弱い。
「…………なぜ」
《…………なぜ、か。そう生まれた、としか言い様がない》
ハチミツを作る為に女王は生かされていた。
何度も娘達を死に追いやられながらも、泣きながら必死に生きるのだ。
そして、最近の蜂を倒す際の残虐性が増していたのがあのビジョンに映し出されていた。
「…………プレイヤー………か」
《?》
この世界の人よりも強い力を持つプレイヤー。
蜂たちは更に怯えた。
レベリングとしても使われていた事があるようだ。
効率が悪く直ぐに使われなくなったようだが。
大きいが、どうやら戦闘力は低いみたいだ。
蹂躙され放題である。
コツを掴んできたのか、まっすぐに飛べるようになっていた。
「慣れてきたかな、なかなか難しいのね」
翼をフワフワ動かして前進するスイは空を見上げる。
そしてバサッ!と音を鳴らして大きく翼を動かしたスイは一気に上昇した。
「あ、そうか。3メートル縛りだっけ」
上昇したが、いきなりピタリと止まってしまう。あれ? と首を傾げたが納得。
前には進める、だが上にはいけない。
しかし、プレイヤーよりは遥かに高い位置にいるのも事実である。
そして、スイの履いているスカートは風で靡くのに、スカートの中は真っ黒になっている不思議現象が起きていた。
女性でも覗かれる心配のない安心設計である。
「まぁ、なんとかなるかな?」
慣れない移動にスイは悪戦苦闘しながらも金策とレベル上げの為に動き出した。
スイが受けたクエストは採取クエストだった。
氷の城から真逆に進むと出てくる大森林。
そこに定期的に出てくる蜂が作るハチミツ採取依頼である。
定期的に大量発生する蜂たちは、この時多くのハチミツを一気に作る。
あまり増えすぎるのも問題になる為、ハチミツ採取終了後、半分ほど蜂たちの討伐も依頼されるらしい。
「………パンケーキかなぁ、はちみつレモンも捨て難いよね」
ぶれない食への興味と期待にワクワクしながら大森林を進んでいくスイ。
その手にはいつもの愛用イルカさんハープが握られていた。
たまーに、ブンブンと素振りをしながら進むこと30分。
巨木の上についている巨大な蜂の巣が見つかった。
「………ヤバい大きさ」
蜂の巣はスイの3倍以上の大きさだ。
周りに飛ぶ蜂たちも大きさは尋常じゃない。
だって、人間と同じ大きさをしているのだ。
しかも、妙にデフォルメされていてかわいい。
「………………ギルド受付のお姉さんがめっちゃ笑顔だったのって、誰も受けないクエストだからとかじゃないよね?」
ハチミツ入手がなかなか難しく、価格高騰しやすい商品らしいが…………
まさか…………ね?
思わず口の端をヒクヒクとさせながら、スイはイルカさんを構えた。
「……はちさん、ごめんね?」
ゆっくりと音を紡ぐスイ。その音色に蜂たちの動きは止まりスイに視線を向けた。
クリクリとした目はだんだんと下がっていき、その場からバタバタと地面に落ちていく。
しかし、そのスピードはかなり緩やかだった。
「………ふぅ、たまたまだけど昨日作ってて良かったぁ」
睡眠のデバフ効果のある曲と、重力操作の曲。
重力操作の曲は、説明欄に魔曲と書かれていた。
作った時は文字がグレーダウンしていて弾けなかったが、今は何故か文字も白く問題無く弾くことが出来る。
不思議そうにしながらも、蜂たちを怪我なく地面に下ろせたし良しとしよう、と頷いて巣を見上げた。
ふわりと浮き上がり、巣を覗き見る。
その巣は不思議と半透明になり中が見える様になった。
………………そして、目が合う巨大蜂。
「!?!?!?ひゃあ!?」
びっくりしてかなりのスピードで下がったスイの前にゆっくりと現れたのは女王蜂であった。
他より大きく立派な触覚がある女王蜂は、首周りに真っ白なフワフワとした襟巻きのようなものをしている。
《………………》
地面を見て横たわる蜂たちを確認した後、女王はまたスイを見た。
《…………なにをしにきた?人間》
「喋った………」
優しげな声が直接頭に響く。
フワフワと飛ぶ女王は、スイの前まで来て見下ろしてきた。
スイの倍はあるその女王はスイの言葉を待っていた。
「………あ、あの………ハチミツを分けていただきたいのです。」
《……ハチミツ、ね。だから娘達を眠らせた、と?》
スっと目を細めて下を見る女王に、スイはヤバいかな…と冷や汗をかく。
「す、すいません。怪我をしないように眠らせてしまいまして」
《確かに、怪我はしておらぬな》
娘達と言う女王は、蜂たちから視線を上げてスイを見る。
その瞳からは感情を見い出せなかった。
《……お主は不思議な人間だな。今までの人間は娘達を殺し巣を破壊してハチミツを奪い…………わたしのややこまで殺して行ったのに》
殺さずに、頼み事をしてくるなんて。
そう言った女王はさらに近づき細長い手でスイの頬を撫でた。
その瞬間、視界が弾けた。
一瞬で変わったビジョンが映し出されるのも一瞬
だが、それで十分だった。
スイは流れる涙を止められず顔を真っ赤にしながら女王を見つめた。
衝撃だった。
魔物が話をした事もだが、この女王は今までされてきた事を鮮明に覚えていた。
娘達を殺され巣を破壊。
生まれたばかりの子供を連れ去られる。
何万回とそれは繰り返され女王は何度も何度も泣き崩れていた。
ミツバチは慈悲深い種族であった。
何度も何度も繰り返されるその採取と殺戮にも関わらず、人族に恨みを持たない。
世は弱肉強食。私達は弱い。
「…………なぜ」
《…………なぜ、か。そう生まれた、としか言い様がない》
ハチミツを作る為に女王は生かされていた。
何度も娘達を死に追いやられながらも、泣きながら必死に生きるのだ。
そして、最近の蜂を倒す際の残虐性が増していたのがあのビジョンに映し出されていた。
「…………プレイヤー………か」
《?》
この世界の人よりも強い力を持つプレイヤー。
蜂たちは更に怯えた。
レベリングとしても使われていた事があるようだ。
効率が悪く直ぐに使われなくなったようだが。
大きいが、どうやら戦闘力は低いみたいだ。
蹂躙され放題である。
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