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第2章 水の都アクアエデンと氷の城

公式イベント前夜

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ゲームマスターが現れてから1週間、公式サイトのイベントページでは参加人数や、チーム編成が乗っていた。
ゲーム参加の締切が切られ、運営側がチームを分けたのだ。

アカチーム、アオチーム、ミドリチーム、キイロチームと、幼稚園のチーム分けみたいなの名前ではあるが、かなりの参加者が集まっていた。

我らフェアリーロードはそのミドリチームでの参加となる。
そして現在、イベントを翌日に控えている。
フェアリーロードは全員クランハウスに集まり最終確認だ。

「とうとう明日だな、準備はどうだ?」

「できる範囲は準備したよ!装備も新しくしたし、レベルもついでに上げたしな」

「わたしもー!手軽に食べれるのたっくさん用意したわよ!!」

くねくね健在のクリスティーナが、期待してていいわよ♡と言い、全員が視線を外した。
期待はしてるがインパクトが大きすぎる。

「俺も、レベル上げてカガリさんに盾の動き教えてもらいました!」

ファーレンがにこやかに笑って言った。
今までにない柔らかな笑顔だ。
肩の力が抜けてやっと本来のファーレンらしさが出てきている。

「スイちゃんはどうですか?」

「あ、はい。2週間合ったので新しい音楽を作ったのと、あと………」

「あと?」

「内緒です」

リィンがスイを見て聞いてきたが、スイは楽しそうに口元に人差し指を当てて黙秘。
タクがスイにメロメロになり、クリスティーナがあぁぁん!ずーるーいー!とくねくね。
タクのあまりの崩れ様にナズナが素振りをはじめて、イズナが必死に止めるが………………

「天罰」

「oh……………………………!!!!!!」

ピクピクと震えてうずくまるタクが床に倒れ込み男性プレイヤーが震え上がった。
女性陣も顔を引きつらせるが、特にリィンは悲壮な顔をしている。

「…………ナズナちゃん、もう少し手加減してあげて………」

「リィン、手加減したら付け上がる」

ふるふると首を降るナズナ

悪    魔   だ………!!!!

まだ素振りをしているナズナに全員が恐怖する。


「と、取り敢えず、明日に向けての作戦しようぜ」

タクから視線を外して進めるカガリに、全員が頷いた。あわれ、タク。

「まずは、1番の要チームの総大将を誰にするかはわからないけど、俺たちは俺たちで動きを決めておこう」

「基本は固まって支援を貰いながら捌いていくのが1番ですけどー」

「だれでもするわよね」

「特にこっちにはスイちゃんがいるからね、狙われるのは必須」

セラニーチェがスイを見ながら言う。

「奏者っていうのと、もうスイちゃんっていうブランドみたいのが出来ちゃったからね」

「フェアリーロードに居るってのもあるな」

小さくすいません…と呟くと全員が笑った。

「何謝っているのですかー、むしろここはチャンスなのですよー」

「チャンス…?」

「はい!言い方が悪いですけど、奏者はまだまだ地雷職と思われ狙われます」

「でも、そこには私たちフェアリーロードがいるし、なによりスイちゃんはただの奏者じゃないからね」

「いくらでも、ひっくり返すことができるわよ」

ウィンクしてアレイスターが締めると、スイはふむふむと頷く。
そこでクリスティーナが手を挙げた。

「スイがただの奏者じゃないってなんですか?」

「あら、知らなかったのね。……………規格外よ。」

「そう、規格外だな」

「これが支援職かって思うのですねー」

口々に言う規格外の言葉にクリスティーナは首を傾げている。
どれくらい動けるのか後程クリスティーナを連れてフィールドに行ったスイの実力を少しだけ見たが、それだけでクリスティーナの口が開きっぱなしだったとだけ伝えておこう。

「私はいつもと同じく支援中心でいい……のかな?」

「いいとー思うぅぅぅ…」

タクがゾンビの様に起き上がり椅子まで這いずって行った。

「お…おぃ、大丈夫か?」

「これが大丈夫に見えるか、グレン………」

「「…………………まぁ、大丈夫だな」」

グレンとカガリがタクを憐れみながら見つめた。

「スイを総大将にって掲示板有るんだけど、それはどうする?」

その意見でるかもよ?
イズナがほら。と掲示板を表示すると、スイたんを守ろう!とでかでかと書かれていた。

「……………すげぇな。」

じゃあさ。こうなったら………………




フェアリーロードの作戦会議は雑談を踏まえながらも楽しそうに続いていた。
公式イベントは明日に迫っている、上位入賞を狙って全員はやる気に満ちていた。


『がんばろーーー!!!』
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