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第2章 水の都アクアエデンと氷の城
制裁と謝罪
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この日スイはクリスティーナと一緒に噴水広場に訪れていた。
ここにあるスイーツを見つつ話をして、そして街中を案内してもらう。
今回はこのプランで動くことになった2人。
「これ、おすすめ」
「これ?」
渡されたのは青い棒。
長細い袋に入っていて先だけが見えていた。
食べ歩きの出来る場所なのでその場で一口
「んま!……チュロスかー」
「そう、サクサクしっとりで美味しいよね」
ムキムキ女子が可憐なボインと歩きスイーツを食べる姿は周囲にはかなりのインパクト、衝撃を食らわせていた。
風でスイの髪を揺らして短いスカートがヒラヒラと揺れている。
パッとスカートを抑える横で、クリスティーナがくねくねしながらスカートを抑えた。
「もぅ!風のイタズラが凄いったら!」
くねくね度は二割増だが、話し方も動きもリアルと変わらないのにビジュアルが大ダメージを周囲に与えている。
リアルであるあかねの女子力は高い。
その為、容姿と動きなど合わせたら美少女に変わりない、筈なのに何処か残念。
そんな所もあかねの魅力なのだが、その残念が、ゲームの世界で爆発的威力を繰り出している。
「………………クリスティーナさぁ」
「ん?」
首を傾げて聞き返すクリスティーナ。
真っ赤な三つ編みがふわりと舞うが見た目はムキムキ。
ガタガタと顔を青ざめて視線を逸らすプレイヤーが後を絶たない。
「…………なんでもないわ」
「なによー」
リアルの様に作っていたらスイと並んで美少女がキャッキャウフフとスイーツをつついている可愛らしい光景になっていたのに
「あん!今度はお水が!濡れちゃったなぁ…まぁ乾くからいいか!」
……………………………本当に残念としか言いようがない。
「………がさ、どうなっ………奏者な………?」
「いや…………だから………さ、」
2人でスイーツを食べている時だった。
男性の話し声が少しづつ近づいてくる。
そこには奏者と言う言葉があって反射的にスイは振り向いた。
「「………………あ」」
「ん?どうしたの?」
「ファーレン?」
振り向き声を上げたスイ、そして立ち止まり声を上げたファーレン。
お互いしっかりと目が合った。
「うわ!やば!かわいー!なんだよフレか?」
ファーレンの隣にいた男性がグイグイとファーレンの腕を掴んでスイの方へと向かってくる。
「うわうわ!可愛いね!ファーレンのフレのアキラってんだ!よろしく!」
ガッ!とスイの手を掴み無理やり握手したアキラはニヤニヤとスイをみていた。
それはよく向けられる下心を含んだ目だとすぐに気付く。
「よろしく、あたしクリスティーナ!……初心者だから怯えさせないで、ね?」
クリスティーナが割って入りスイの手を奪い返した。
そしてそのまま手を握る。
こっそりと自分の後に庇いながら。
「わっ!いいじゃねーか、べつにー。なぁ?」
ファーレン、そしてスイに言うとクリスティーナは眉をピクリと動かす。
「こんな可愛い子に声かけないなんて。男が廃るってもんだよ!」
隠れるその小さなスイの体を舐め回すように見てから頷くアキラに、クリスティーナが少しづつ表情を険しくさせた。
「あ、そういやさ。ファーレンにきいたんだけどよー」
「あっ……」
「まさかまさか、奏者を選んだやつがいるんだと!しかもあの!あの!フェアリーロードのメンバーに入ったらしいけど元々フレがいたとか、贔屓だよな!」
つっかえねーらしいぜ?クエスト棒立ちだったらしい。
ないわー、奏者と一緒にクエストとかないわー
フェアリーロードの人達そんなやつ仲間にとかすげーな、足引っ張るだけじゃん?
奏者とか良く最低な職種にしてのうのうとしてるよなー
笑いながら言うアキラにクリスティーナは冷たーい視線を送った。
そして、スイをぐっと前に引っ張りアキラの前に立たせる。
「あなたの言う奏者とは、私の大好きな友人の事ですけど?」
「…………………え?」
クリスティーナの言葉にアキラは凍りつき、ファーレンは俯いた。
「随分な言い草だね?初めてあった人に礼儀はなってないし、言いたいだけ侮辱して。職種は好きなのを選べるし周りがとやかく言う事じゃない。ましてや、あなたにスイが迷惑かけた?なにかした?私にしたら貴方の方がずっと最低だわ。」
「あと、今回初めて聞いたけど、あなたもだよ。なんも知らない人に吹き込んでいい話かな?しかも聞いて知ったことなんて絶対尾ヒレとか付くじゃない。スイに迷惑掛かるとか思わなかったの?誰々が嫌いとか、人相手だもんそりゃあるでしょ。でもさ、言っていいことしていい事の判断も付かないの?」
まぁ、フレンドだから話をしたいとか気持ちもわかるけどさ、ないわよ。マジで。
鋭いクリスティーナの目がファーレンを射抜いた。
アキラは目を見開きスイを見てるしファーレンはただ手を握りしめて地面を睨みつけている。
「…………反論は?」
何も言わない2人にクリスティーナは何か言いたいことはあるか?と聞く。
呆然としていたアキラが顔を上げてスイを見た。
「い、いやぁ、まさか君がそうだったなんてー。こんな可愛くて楽器弾いたら可愛いだろうなー……はは」
「はぁ?」
おだてて褒めるアキラにクリスティーナのひくぅーい声が静かに響いた。
なんだなんだと集まる野次馬たちの前で、クリスティーナは静かにステータスを開いた。
「クリスティーナ?何してるの?」
「…………ん?うん、コールをね」
「コール?」
「うん、GMコールって言って、迷惑行動をした人を運営に…」
「まっ!まってくれよ!別にそこまでする事じゃ!」
クリスティーナの行動を止めようと声をかけ腕を掴むアキラ。
クリスティーナは乱暴にその腕を離させてアキラを睨みつけた。
「したでしょ?スイに嫌な気持ちにさせた」
「し、してないよな?な?」
「なにより!私が不愉快になった。友人を侮辱されて黙ってられる程人間出来てないの。」
指を指してアキラに言ったクリスティーナは、あなたはもうGMコールするって決めたの。そう言ってさっさとコールボタンを押した。
このゲームのGMコールはステータスに有るボタンを押すだけでコールが伝わり、直ちに運営がその前のやり取りの記録を確認するシステムになっていた。
その為、アキラの振る舞いは運営に伝わりその会話内容でファーレンの言動も遡り確認される事となる。
「…………そんなのあったんだ」
「知らなかった?セクハラとかも迷惑行動だから嫌だったらGMコールしなよね?スイはなんか心配になるなぁ」
存在を知らなかったスイは呆れて自分を見るクリスティーナに尊敬の眼差しを送った。
「…………っ!くそ!!」
アキラは何も言わずその場でログアウトした。
「逃げたか」
クリスティーナは、はんっ!と鼻を鳴らしている。
普段可愛いのに豪快で友達思い、そんな友達のクリスティーナはファーレンを見た。
「………で?あなたはなんか無いの?」
アキラと違い静かなファーレン。
何処か後悔している様子が見られたからクリスティーナは静かに話し出した。
「別にさ、誰だって言いすぎたとか第一印象がとかさ。あると思うのだよ。好き嫌いなんて絶対あるもん。でもさそれで相手を傷つけていい事にはならないんじゃない?嫌なら離れればいいだけでしょ?」
「…………はい」
「……………………んー」
静かに頷くファーレンを、クリスティーナは困ったようにみていた。
ファーレンの反省は良く見えているのだが、肝心のごめんが出てこない。
ファーレンがアキラに話したとしか情報がない。
スイに直接何か言ったのかわからないが、もし言ってるなら何がなんでもどうしてそういう事をいったのか、そしてスイに謝らせるつもりだったのだが。
「…………あの、私の事きらい?」
「………え?」
えと…と言葉を詰まらせながらファーレンに聞いたスイ。
少し前に出て顔を上げたファーレンを見る。
「最初から、なんだか睨まれてるなとは思っていたの。でも何かした記憶はないし。私の事きらい、かな?」
「………………ちがう、いや、きらいだった」
ファーレンの言葉にクリスティーナは目を細める。
「……憧れの人達に贔屓されて、ランカーのクランに入るのに地雷職を辞めようともしない。周りにちやほやされるアンタが嫌いだった。……でも、アンタは努力して奏者を使いこなしてみせた。無理だと思った事をしてさ。」
スイの目をじっと見て言うファーレンを、スイも黙って見ながら話を聞いた。
「……なんで、俺は出来ないのに。出来ないことが沢山あってやりたい事も沢山あるのに出来なくて…なんで、なんで、なんで……」
ぐっ!と手を握って言ったファーレンは困ったように表情を崩して笑った。
「リアルでも、ここでも俺は動けない。出来ないんだ。そう思ったらアンタが嫌いで嫌いで。でも羨ましくて。………………置いていかれたくなくて…」
「………置いていったりしないよ」
「………うん。」
ファーレンはスイに近づき、スイの両手をギュッと握った。
そして深々と頭を下げる。
「態度が悪かったのも、アンタに酷いことを言ったのも、全部俺が子供だから。焦って認めて貰いたくて。でもアンタを目の敵をすることじゃないししちゃダメだった。悪かった……………ごめんなさい。」
小さく小さく、ゆるして…と言ったファーレンに、スイは泣きそうになりながらファーレンの手を離した。
悲しそうに表情を歪ませたファーレンを、スイは力一杯ぎゅーっと抱きしめる。
「わたしこそ、あなたにそんな態度を取らせるくらい不快な気持ちにさせてごめんね」
スイは悪くは無い。
でも、ファーレンが不快な気持ちになった事は事実とスイも謝った。
「っ!」
小さく嗚咽を出しながら泣き出したファーレンはスイの小さな体に腕を回してスイが苦しいくらいにしがみつく。
表情を歪ませるも、すぐに笑ってファーレンを強く抱きしめた。
「………………なかなおり、でいいのかな?」
はい、と渡されたのはクレープだった。
2人は離れてクリスティーナからクレープを受け取る。
「迷惑かけて、すいませんでした」
「いいのいいのー!……謝んなかったらぶん殴るところだったけど♡」
うふっ!とほほに手を当てて言ったクリスティーナをファーレンは初めてしっかりと見た。
そう、ムキムキ女子を。む き む き 女 子 を!!
「!?!?」
くねくねと笑って言うクリスティーナに、ファーレンは1000のクリティカルダメージ!!!
それに気付いたスイはファーレンの口にクレープをねじ込む!!
!?!?!?!?
口に広がる生クリームとチョコバナナの味と目の前の衝撃に目がチカチカする!!
「どうー?おいしい?私の手作り!」
「!?!?」
愛がこもってるのよ♡と言ったクリスティーナ、ファーレンに第2波のクリティカルダメージを与える。それはもう、波のように第3波と続いてくるのだ。
スイは更にファーレンの口にクレープを突っ込む!!口が甘ったるい!!
手がベタベタだ!!
「……………………………すごい友達ですね」
「なんかごめん」
うふふ、と笑う絶好調なクリスティーナをスイは止めることが出来なかった。
ここにあるスイーツを見つつ話をして、そして街中を案内してもらう。
今回はこのプランで動くことになった2人。
「これ、おすすめ」
「これ?」
渡されたのは青い棒。
長細い袋に入っていて先だけが見えていた。
食べ歩きの出来る場所なのでその場で一口
「んま!……チュロスかー」
「そう、サクサクしっとりで美味しいよね」
ムキムキ女子が可憐なボインと歩きスイーツを食べる姿は周囲にはかなりのインパクト、衝撃を食らわせていた。
風でスイの髪を揺らして短いスカートがヒラヒラと揺れている。
パッとスカートを抑える横で、クリスティーナがくねくねしながらスカートを抑えた。
「もぅ!風のイタズラが凄いったら!」
くねくね度は二割増だが、話し方も動きもリアルと変わらないのにビジュアルが大ダメージを周囲に与えている。
リアルであるあかねの女子力は高い。
その為、容姿と動きなど合わせたら美少女に変わりない、筈なのに何処か残念。
そんな所もあかねの魅力なのだが、その残念が、ゲームの世界で爆発的威力を繰り出している。
「………………クリスティーナさぁ」
「ん?」
首を傾げて聞き返すクリスティーナ。
真っ赤な三つ編みがふわりと舞うが見た目はムキムキ。
ガタガタと顔を青ざめて視線を逸らすプレイヤーが後を絶たない。
「…………なんでもないわ」
「なによー」
リアルの様に作っていたらスイと並んで美少女がキャッキャウフフとスイーツをつついている可愛らしい光景になっていたのに
「あん!今度はお水が!濡れちゃったなぁ…まぁ乾くからいいか!」
……………………………本当に残念としか言いようがない。
「………がさ、どうなっ………奏者な………?」
「いや…………だから………さ、」
2人でスイーツを食べている時だった。
男性の話し声が少しづつ近づいてくる。
そこには奏者と言う言葉があって反射的にスイは振り向いた。
「「………………あ」」
「ん?どうしたの?」
「ファーレン?」
振り向き声を上げたスイ、そして立ち止まり声を上げたファーレン。
お互いしっかりと目が合った。
「うわ!やば!かわいー!なんだよフレか?」
ファーレンの隣にいた男性がグイグイとファーレンの腕を掴んでスイの方へと向かってくる。
「うわうわ!可愛いね!ファーレンのフレのアキラってんだ!よろしく!」
ガッ!とスイの手を掴み無理やり握手したアキラはニヤニヤとスイをみていた。
それはよく向けられる下心を含んだ目だとすぐに気付く。
「よろしく、あたしクリスティーナ!……初心者だから怯えさせないで、ね?」
クリスティーナが割って入りスイの手を奪い返した。
そしてそのまま手を握る。
こっそりと自分の後に庇いながら。
「わっ!いいじゃねーか、べつにー。なぁ?」
ファーレン、そしてスイに言うとクリスティーナは眉をピクリと動かす。
「こんな可愛い子に声かけないなんて。男が廃るってもんだよ!」
隠れるその小さなスイの体を舐め回すように見てから頷くアキラに、クリスティーナが少しづつ表情を険しくさせた。
「あ、そういやさ。ファーレンにきいたんだけどよー」
「あっ……」
「まさかまさか、奏者を選んだやつがいるんだと!しかもあの!あの!フェアリーロードのメンバーに入ったらしいけど元々フレがいたとか、贔屓だよな!」
つっかえねーらしいぜ?クエスト棒立ちだったらしい。
ないわー、奏者と一緒にクエストとかないわー
フェアリーロードの人達そんなやつ仲間にとかすげーな、足引っ張るだけじゃん?
奏者とか良く最低な職種にしてのうのうとしてるよなー
笑いながら言うアキラにクリスティーナは冷たーい視線を送った。
そして、スイをぐっと前に引っ張りアキラの前に立たせる。
「あなたの言う奏者とは、私の大好きな友人の事ですけど?」
「…………………え?」
クリスティーナの言葉にアキラは凍りつき、ファーレンは俯いた。
「随分な言い草だね?初めてあった人に礼儀はなってないし、言いたいだけ侮辱して。職種は好きなのを選べるし周りがとやかく言う事じゃない。ましてや、あなたにスイが迷惑かけた?なにかした?私にしたら貴方の方がずっと最低だわ。」
「あと、今回初めて聞いたけど、あなたもだよ。なんも知らない人に吹き込んでいい話かな?しかも聞いて知ったことなんて絶対尾ヒレとか付くじゃない。スイに迷惑掛かるとか思わなかったの?誰々が嫌いとか、人相手だもんそりゃあるでしょ。でもさ、言っていいことしていい事の判断も付かないの?」
まぁ、フレンドだから話をしたいとか気持ちもわかるけどさ、ないわよ。マジで。
鋭いクリスティーナの目がファーレンを射抜いた。
アキラは目を見開きスイを見てるしファーレンはただ手を握りしめて地面を睨みつけている。
「…………反論は?」
何も言わない2人にクリスティーナは何か言いたいことはあるか?と聞く。
呆然としていたアキラが顔を上げてスイを見た。
「い、いやぁ、まさか君がそうだったなんてー。こんな可愛くて楽器弾いたら可愛いだろうなー……はは」
「はぁ?」
おだてて褒めるアキラにクリスティーナのひくぅーい声が静かに響いた。
なんだなんだと集まる野次馬たちの前で、クリスティーナは静かにステータスを開いた。
「クリスティーナ?何してるの?」
「…………ん?うん、コールをね」
「コール?」
「うん、GMコールって言って、迷惑行動をした人を運営に…」
「まっ!まってくれよ!別にそこまでする事じゃ!」
クリスティーナの行動を止めようと声をかけ腕を掴むアキラ。
クリスティーナは乱暴にその腕を離させてアキラを睨みつけた。
「したでしょ?スイに嫌な気持ちにさせた」
「し、してないよな?な?」
「なにより!私が不愉快になった。友人を侮辱されて黙ってられる程人間出来てないの。」
指を指してアキラに言ったクリスティーナは、あなたはもうGMコールするって決めたの。そう言ってさっさとコールボタンを押した。
このゲームのGMコールはステータスに有るボタンを押すだけでコールが伝わり、直ちに運営がその前のやり取りの記録を確認するシステムになっていた。
その為、アキラの振る舞いは運営に伝わりその会話内容でファーレンの言動も遡り確認される事となる。
「…………そんなのあったんだ」
「知らなかった?セクハラとかも迷惑行動だから嫌だったらGMコールしなよね?スイはなんか心配になるなぁ」
存在を知らなかったスイは呆れて自分を見るクリスティーナに尊敬の眼差しを送った。
「…………っ!くそ!!」
アキラは何も言わずその場でログアウトした。
「逃げたか」
クリスティーナは、はんっ!と鼻を鳴らしている。
普段可愛いのに豪快で友達思い、そんな友達のクリスティーナはファーレンを見た。
「………で?あなたはなんか無いの?」
アキラと違い静かなファーレン。
何処か後悔している様子が見られたからクリスティーナは静かに話し出した。
「別にさ、誰だって言いすぎたとか第一印象がとかさ。あると思うのだよ。好き嫌いなんて絶対あるもん。でもさそれで相手を傷つけていい事にはならないんじゃない?嫌なら離れればいいだけでしょ?」
「…………はい」
「……………………んー」
静かに頷くファーレンを、クリスティーナは困ったようにみていた。
ファーレンの反省は良く見えているのだが、肝心のごめんが出てこない。
ファーレンがアキラに話したとしか情報がない。
スイに直接何か言ったのかわからないが、もし言ってるなら何がなんでもどうしてそういう事をいったのか、そしてスイに謝らせるつもりだったのだが。
「…………あの、私の事きらい?」
「………え?」
えと…と言葉を詰まらせながらファーレンに聞いたスイ。
少し前に出て顔を上げたファーレンを見る。
「最初から、なんだか睨まれてるなとは思っていたの。でも何かした記憶はないし。私の事きらい、かな?」
「………………ちがう、いや、きらいだった」
ファーレンの言葉にクリスティーナは目を細める。
「……憧れの人達に贔屓されて、ランカーのクランに入るのに地雷職を辞めようともしない。周りにちやほやされるアンタが嫌いだった。……でも、アンタは努力して奏者を使いこなしてみせた。無理だと思った事をしてさ。」
スイの目をじっと見て言うファーレンを、スイも黙って見ながら話を聞いた。
「……なんで、俺は出来ないのに。出来ないことが沢山あってやりたい事も沢山あるのに出来なくて…なんで、なんで、なんで……」
ぐっ!と手を握って言ったファーレンは困ったように表情を崩して笑った。
「リアルでも、ここでも俺は動けない。出来ないんだ。そう思ったらアンタが嫌いで嫌いで。でも羨ましくて。………………置いていかれたくなくて…」
「………置いていったりしないよ」
「………うん。」
ファーレンはスイに近づき、スイの両手をギュッと握った。
そして深々と頭を下げる。
「態度が悪かったのも、アンタに酷いことを言ったのも、全部俺が子供だから。焦って認めて貰いたくて。でもアンタを目の敵をすることじゃないししちゃダメだった。悪かった……………ごめんなさい。」
小さく小さく、ゆるして…と言ったファーレンに、スイは泣きそうになりながらファーレンの手を離した。
悲しそうに表情を歪ませたファーレンを、スイは力一杯ぎゅーっと抱きしめる。
「わたしこそ、あなたにそんな態度を取らせるくらい不快な気持ちにさせてごめんね」
スイは悪くは無い。
でも、ファーレンが不快な気持ちになった事は事実とスイも謝った。
「っ!」
小さく嗚咽を出しながら泣き出したファーレンはスイの小さな体に腕を回してスイが苦しいくらいにしがみつく。
表情を歪ませるも、すぐに笑ってファーレンを強く抱きしめた。
「………………なかなおり、でいいのかな?」
はい、と渡されたのはクレープだった。
2人は離れてクリスティーナからクレープを受け取る。
「迷惑かけて、すいませんでした」
「いいのいいのー!……謝んなかったらぶん殴るところだったけど♡」
うふっ!とほほに手を当てて言ったクリスティーナをファーレンは初めてしっかりと見た。
そう、ムキムキ女子を。む き む き 女 子 を!!
「!?!?」
くねくねと笑って言うクリスティーナに、ファーレンは1000のクリティカルダメージ!!!
それに気付いたスイはファーレンの口にクレープをねじ込む!!
!?!?!?!?
口に広がる生クリームとチョコバナナの味と目の前の衝撃に目がチカチカする!!
「どうー?おいしい?私の手作り!」
「!?!?」
愛がこもってるのよ♡と言ったクリスティーナ、ファーレンに第2波のクリティカルダメージを与える。それはもう、波のように第3波と続いてくるのだ。
スイは更にファーレンの口にクレープを突っ込む!!口が甘ったるい!!
手がベタベタだ!!
「……………………………すごい友達ですね」
「なんかごめん」
うふふ、と笑う絶好調なクリスティーナをスイは止めることが出来なかった。
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