Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう

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第1章 はじめまして幻想郷

楽器を手に入れろ

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結局の所はスイの粘り勝ちだった。
ため息を吐いて椅子に座るサーヴァはスイを見て満足したかー?と問いかけた。
笑顔で頷くスイにサーヴァは諦めたように笑って楽器選びを促す。

しかし、スイはここでも粘りを見せた。

「サーヴァさん、私攻撃出来る武器が欲しいです。」

「あ?だから、奏者はサポート…-」

「でも、あるんですよね?」

最初に言っていた奏者は基本サポート職。
基本ってことは、基本に当てはまらないのがあるんだよね?

ね?

そう笑って言ったスイの押しは強く、 乱暴に自身の頭を掻いたサーヴァは立ち上がり店の奥へと歩いていく

「来いよ、クソガキめ」

「!はぁい」

思わずガッツポーズをしたスイはニヤニヤと笑いながらサーヴァの後に続いた。
憎まれ口を叩きながらも、どこか嬉しそうにしているサーヴァはチラリとスイを見てから奥の部屋へと足を進めた。



店の奥。扉を開けて階段を下がると木の扉が出てきた。
その扉を開くと店先には並んでいない楽器が並んでいる。
見た目が煌びやかだったり、ゴツかったり、禍々しかったり外見に特徴のある楽器ばかりだ。

「これはお前が言う楽器だ。奏でる音で攻撃するも良し。楽器自体を武器にするもよし。」

ただ、重いがな。

サーヴァはそれだけ言って扉に向かった。

「欲しいの1個探し出せ。それが今日からお前の楽器だ。わかったな?クソガキ」

ニヤリとわらってから階段を上がっていったサーヴァにスイは頷いた後武器へと視線を向ける。

多くあるのが後衛からの支援のだろう。でかいのが多い

「すご、ドクロ柄」

物色しながら見てまわり感触なんかも確かめる。
握りやすさ持ちやすさ、もちろん弾きやすさもだが、1番はスイが気に入るかどうか。
手に持ってみて、時には音を鳴らしてみてスイは楽器を見続けた。

そして、見つけた巨大なハープ。
全体が薄い緑で弦も緑だった。波とイルカがモチーフなのだろうそのハープを一目で気に入り手に取る。
その楽器は妙に手に馴染んだし、思っていた以上に軽い。
これなら持って歩ける。
頷きこれに決めた!と、軽く弦をはじき音を出すと綺麗に響いていた。

「これがいい」

軽々それを抱えて階段を小走りに上がっていった。
うん、走れそうだ。

「サーヴァさん!これがいいです!」

「おま………はぁ!?」

振り向きスイを見た瞬間椅子から転げ落ちたサーヴァはその体制のまま口をパクパクと動かした。
首を傾げてサーヴァを見る。

「どうしました?」

「どうって、お前がどうした!?」

「何がですか?」

指さすサーヴァに眉を寄せて聞くスイ。
何をそんなに焦ってるのか?と首を傾げるスイに、とうとうサーヴァは体の力を抜いて全身床に倒れ込んだ。

「もぅ……お前いやだ………なんなの」

「んなっ!なんでですか!」

「なんでそんなん軽々抱えてんだよ!馬鹿力か!!」

サーヴァが言うのは、このハープは完全後方からの支援楽器。
持てないものだった。
スイのうっそだぁ………と呟く声が店に小さく響いたのだった。

両手で持つハープを見てからもう一度サーヴァを見ると化け物を見たような顔をしている。

「……まぁ、なんだ。それでいいんだな?」

「これがいいです」

「わーったよ。」

頷くサーヴァは出口指さして手で払う仕草をした。

「終わったんなら早く出てった出てった」

「え?お金……」

「あそこにあるやつは店頭に並ばねーやつだ。商品じゃねーからいらねぇよ。ちゃんと武器解除してしまえよ」

「…はい。ありがとうございます!!」

ペコりと頭を下げてから店の出入口に向かうスイをみるサーヴァ。

「おいクソガキ」

小さく呼ばれたスイは振り返る。
椅子に座り小さなテーブルに肘をついて頬杖をついて足を組む。
そんなサーヴァは軽く手を振って言った。

「また来いよ」

「はい!また来ます!!」

「おー」

頭上で光る職業クエストクリアの文字を視界に入れながら、もう一度頭を下げて店を出ていった。



「あ、無闇矢鱈に魅了使うなって言い忘れたな……」


誰もいなくなった店内で、サーヴァはポツリと呟いたのだった。











今日はそろそろログアウトしようか。
そんなことを考えながら大きな楽器を持って街中を歩くスイ。
周りは少しザワついていた。
まさか、あれ奏者か?
え?待って待って、なんであれで歩けるの?
初期装備か、地雷職選んだなー。
可愛いのに、なんて残念。

そんな声がチラチラと聞こえるがスイは気づいていなかった。
後に新規ユーザーが地雷職にしたと少し騒がれる事になるのだがそれはまた後の話。
緑の少女が、機嫌よく歩く姿を数人のプレイヤーが見送ったのだった。
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