Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう

文字の大きさ
上 下
3 / 214
第1章 はじめまして幻想郷

キャラメイクと設定

しおりを挟む
フィオナは焦っていた。シャルロットは何か誤解をしている様だ。どうにかして、誤解を解かなくては……。

「シャルロット様っ、待って下さ……」

止めようと声を上げるが、興奮気味の彼女の耳には届かない。
そんな中、シャルロットが手を振り上げた。すると瞬間物凄い勢いの風が吹き抜ける。フィオナとオリフェオが呆気に取られる中、先程の鳥とは比べ物にならい程大きな鳥が現れた。全長1メートル以上はあるだろうか……。更に翼開長なら、フィオナの身体の倍近くありそうだ。

「いらっしゃいませ~、アトラス」

アトラスの大きさにフィオナは、息を呑んだ。鋭い目付きでこちらを見ている。アトラスは首から下は茶や黒だが、その上は白く首回りはモフっとしていた。迫力はあるが、少し可愛いかも知れない。

グワッ‼︎

呑気にそんな事を考えていると、アトラスが、威嚇する様に鳴いた。その声にフィオナは身体をビクりとさせる。やはり、怖い……。

「さあ、アトラス。そこの下郎を懲らしめなさいませ!」

シャルロットの声を合図に、アトラスが羽をバタバタと広げると、そのまま飛ばずに突進して来る。その勢いと迫力に、フィオナの身体は強ばり動けない。
すると、瞬間身体がフワリと浮いた。オリフェオがフィオナを抱き上げたのだ。立たせてくれると、いきなり突き飛ばされた。

「っ⁉︎」

地味に痛い……。

突然の事に踏ん張れず、フィオナは少し離れた場所に尻餅をついた。いくら何でもこれは酷い、と思いながら顔をあげると、オリフェオはフィオナをまるで庇う様に前へ出てアトラスと対峙していた。

「⁉︎」

もしかして、助けてくれた……?

だが、あんなに大きく獰猛そうな鳥相手に、彼は丸腰だ。このままではオリフェオが、危険だ。

「オリフェオ殿下っ」

フィオナがそう叫んだと同時に、アトラスがオリフェオまで到達しそのまま襲い掛かる。

「え……」

と思われたが、オリフェオを素通りしてフィオナに向かって来た。

「ア、アトラス⁉︎何してますの⁉︎」

「待て‼︎相手は私だっ」

シャルロットとオリフェオの焦る声が聞こえて来た。フィオナは慌てて立ちがろうとするが……まさかの腰が抜けて立ち上がれない……。こんな時に、本当に情けない……。

そうしている間にも、アトラスが迫って来るのが見える。

もしかして、このまま食い殺されてしまうのかも知れない……そんな事を他人事の様にボンヤリと思った。

最期に、ヴィレーム様に会いたかったな……。

気が付けばアトラスが目の前にいた。シャルロットが手を構え、何かしようとしているのが視界に入る。オリフェオが急いでこちらへ向かってこようとしているのが見えた。何時もより流れる時間がゆっくりと感じた。

グワッ‼︎

「ヴィレーム、さまっ……」

フィオナは身を守る様にして、身体を縮こませる。目をギュッとキツく瞑り顔を伏せた。





◆◆◆


ガチャンッ。

「あ……」

ヴィレームの手からカップが滑り落ちた。まだ半分程残っていたお茶と割れたカップの破片が床に散らばる。

「何をなさっているんですか。仕事を増やさないで下さい」

怒られた……。
普通こう言う時、主人の心配をするものではないか?と不満に思うが、クルトはそう言う奴だ。ため息を吐く。

「ため息を吐きたいのは私の方です」

「……」

割れたカップを片付けながら、更に嫌味を言われた。ヴィレームは、暫くクルトが片付けている様子をボンヤリ眺めていた。

今日は頑張った甲斐あって、大分仕事が捗った。今夜はもう絶対仕事はしない!フィオナが帰って来たら、二人でのんびりイチャイチャして過ごす!
そんな風に考えたら、無意識に頬が緩んできた。

「ヴィレーム様、顔がダラシないですよ。まだまだ仕事がございます。気を抜かずにず、確りなさって下さい」

「……分かってるよ」

はぁ……早く、フィオナ帰って来ないかなぁ……。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

処理中です...