美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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ググネヴァ 商業化

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 大雪が降った日、ガガディは特殊な進化を遂げてググネヴァという新種が生まれた。
 Revolution! と冗談みたいな出来事が起きて増えたググネヴァは、調べた所、繁殖はしないようで完全に食用となる。
 大人のみで、レア個体の子供のRevolution! はないようだ。
 
 飼育していたガガディの個体が完全に変化し、戦う事でガガディもググネヴも肉質が上がる。 
 意味がわからない。

 そして変化したことにより、ガガディの個体数が減り追加発注するため350体の大口購入を伝えたらセイシルリードとブランシェットが急遽庭に訪問した。

「…………これは、ググネヴァ……? 」

 セイシルリードに芽依は箱庭を見せた。
 口で説明するより早いと思ったからだ。
 驚きながらも新種をまずは遠くから観察するセイシルリードと、同じく新しい幻獣に目を丸くするブランシェット。

「まぁ……新しい幻獣が生まれる瞬間なんて、滅多に見れないのよ。凄いわねぇ」

 感心するブランシェットに、芽依は微妙な表情をする。
 箱庭でのコミカルなガガディとググネヴァは、未だに鼻息荒く戦いを挑んでいて、子を守る母は凄まじい力でググネヴァを吹き飛ばし、群れを囲っている柵を一緒に弾き飛ばしていた。

「ぎゃ!! またかっ!! 」

「えっ!! お嬢さん! あぶないわ! 」

「ブランシェット、僕達のメイちゃんが危ないわけないじゃない? 」
 
 芽依は、もー!! と叫びながら走っていくのを呼び戻そうとするブランシェットだが、片手を柵に伸ばしながら魔術を試行するフェンネルが笑みを浮かべながら言った。
 この魔術は芽依を守るためでなく、柵を直し補強する為のもの。

「もうっ、またなの……いいかげんにしないと……ご飯抜きにするよ!! 」

 そう言って出てきたのはシュミットを噛んだことによって現れた蝶ネクタイを付けたトウモロコシ。 
 散弾銃のようにトウモロコシを飛ばし破裂させググネヴァを吹き飛ばした芽依は、腰に手を置いて息を吐き出した。

「まったく、すぐ喧嘩するんだから」

 大根の桂剥きがガガディを押さえつけているが、それは傷口を抑えていた。
 すると、どうやらお腹の調子が悪かったガガディだったらしく、慌てて走り去って行った。

「…………あ、もしかして大根様の成分が腸の活性化を促したのかな」

「え、それ凄すぎない? 接触だけで? 」

 箱庭を見ようとした芽依をそっと抑えて隠すフェンネル。
 瞬間は見ないであげようよ……と慈悲を乞われたので、仕方なく見るのを辞めた。

 しかし、大根様の威力はここでも激しく発揮するのがわかり、芽依は桂剥きされてやせ細った大根様をそっとしまった。

「…………凄いですね、食べる幻獣の新種はここ300年は居なかったのですが……さすがお嬢さんですね」

 セイシルリードがググネヴァに触れて色々な場所を見てから笑った。
 繁殖はしないから増やすための労働はなく、出荷のみ。
 しかも豪雪の日限定なら、冬だけの珍品になりえる。

『とりあえず、食ってみるか? 』

 解体用の黒エプロンをしたメディトークがノシノシと歩き、セイシルリードが持つググネヴァのレベルを芽依の箱庭で確認。
 まぁまぁだな……と呟き、セイシルリードの隣に向かうと、嫌な予感がしたのか暴れ出すググネヴァ。
 しかし、我らがメディトークは甘くない。
 がっつり首を足で押さえつけ横倒しにして、ゴキっ! と音を鳴らすと横たわったまま動かなくなった。
 箱庭を見ると、目をバツ印にして上には抜けた魂がいる。
 フェンネルと一緒に見てからググネヴァを見ると、セイシルリードが素敵な締めですね、と、にこやかに笑って褒めていた。

「……流石セイシルリード。販売の時の状態が最高みたいだね。凄い笑顔」

「商魂たくましい……あれ、庭関連じゃないけどいいの? 」

「食べるだけじゃなくて飼う事で相乗効果が出たり、ググネヴァを餌にしたらどんなことが起きるかとか、色々試験するんだと思うよ」

「……なるほど」

「なにより、メイちゃんの庭から生まれてるからね」

 Revolution! と可愛く言うフェンネルに、何故かイラッときた芽依が飛びかかり服に手をかけるのを、キャーキャー言いながら止めるフェンネル。
 そんな2人を相変わらず、あらあらまぁまぁと笑って朗らかに見ているブランシェット。
 穏やかでいつも寄り添ってくれるブランシェットも、煌めく羽が背中にあって、人外者なんだよなぁ……と今更ながらに見つめた。

「…………メイちゃぁぁぁん! 」

「あ、ごめんはんぺん……」

「お腹に謝らないでぇ! 」

 お腹に話し掛ける芽依に、もぅ! と声をあげるフェンネル。

『お前ら、遊んでないで手伝えや』

 来い来い、と複数ある足が呼んでいる。
 空中にふよふよしながら、おいでおいでしている足に目掛けてフェンネルが走り出す。
 ドン! と体当たりして足にお腹を乗せて2つ折りのようにプラン……とぶら下がるフェンネル。
 黙って見下ろす巨大蟻というシュールな姿にブランシェットが思わず笑っていた。
  


 シュミットも合流して、メディトークと2人メインに話し出したのはググネヴァの販売についてだった。
 全くの新種なので、どの部位を食べれるのか売る部位は、設定金額はどうするか。
 ググネヴァ自体を1頭丸ごと売る時の金額、生きたままか絞めた後に売るのか。
 そして、芽依の庭での育成と、他の庭での育成とで成長速度や過程を観察した方がいい……等、販売における様々な話し合いを持たれている。
 新種は、ただ出来ました、売ります! では駄目なようだ。
 それは勿論オルフォアやアリステアへの連絡もである。
 芽依には分からない事ばかりで、ほぼメディトークとシュミットで完結していて、あとから逐一芽依に知らされる。

「こうなったが、大丈夫か? 」

「はい!(よくわからないから)大丈夫です」

 家族には絶大の信頼を寄せる芽依には、悩むといった事はなく全てを受け入れ態勢万全だった。



 
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