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マッタリタイムからの夕飯
しおりを挟むチェックインは15時頃だった。
夕飯は部屋で食べるため、ゴロゴロと休憩タイム。
外出着だった為、みんなそれぞれ部屋着に着替え終わると芽依はいそいそとシュミットの背中側に座った。
「…………なんだ? 」
「いえ、気にしないでください」
「いや、気になるだろ? ……おい、引っ張るな」
座椅子にクッションを置いてモコモコにして座っている芽依の胸元に寄りかかるようにシュミットを引っ張った。
片足を立てて芽依に寄りかかるように体を預けたシュミットの体に腕を回す。
「何してるのメイちゃん」
「至高の肌触りを堪能してるの」
シュミットの部屋着はだいたいがモコモコフワフワしている。
ちゃんと男性用の落ち着いたデザインなのだが、何よりも肌触りが良い。
部屋着のシュミットがいる時は、隣が空いてたらだいたい滑り込んで腕などをこっそり触っている。
今日は広い室内だから、触り放題だ! と全身で感触を楽しんでいた。
今日もシンプルな黒のトレーナーと白のパンツで伸縮性抜群。
逆に予想外なのが、ハストゥーレだ。
グレージュのチェック柄のパジャマを着ていた。
実は完全オフの時はパジャマっ子である。
ゆるく結んだ三つ編みを前に垂らしてオーバーサイズのパジャマを着るハストゥーレの可愛さはたまらない。
フェンネルは白地に青い花が書いてある浴衣を着ている。寝巻き代わりに愛用している浴衣だが、起きる時にははだけているフェンネル。
お泊まりの時は、大抵朝に噛みつかれている。
メディトークは薄手のセーターにパンツのスッキリとした服装で、髪をハーフアップにしていた。
シュミットに抱きついている芽依は、モコモコの猫耳パーカーに膝上のパンツのセットアップ。
ハイソックスを履いて保温もしている。
肌を見せる格好ではあるが、そんな芽依に全員慣れているから強く言われる事はだいぶ減った。
なにより既製品なのだ。需要が出てきた証拠である。
ちなみに、いつもお世話になっている呉服屋うささんで購入。
色違いに購入した服はパピナスが着ているが、発育が違いすぎて可愛い服の筈が色んな意味で凶器みたいになっていた。
みんな普段よりだいぶ緩い服装に態度でまったりタイムを味わっている。
「今日は何するの? 」
「特にねぇな。飯食って風呂はいって寝るくらいじゃね? 」
「え、勿体ないよ」
「明日もあるんだ、今日はゆっくりすりゃいいだろ」
本を読みながら言うメディトークに、そうかなあ? と首を傾げた。
よくよく話を聞いたら、明日帰るのではなく明後日帰るらしい。
三が日全て温泉を満喫するのだとか。
「あ、観覧車乗る? 前ハス君と乗ったよね」
「あ! 行きたい! 夜の海も素敵だったなぁ」
フェンネルと話をしていると、無意識だろうシュミットが芽依の指に指を絡めてくる。
シュミットは意外と無意識に芽依に触れてくれる。
言ったら恥ずかしがるので言わずに放置するのがかしこい方法である。
「じゃあ、ご飯食べてから……お風呂先? 観覧車? 」
「観覧車にしとけ。風呂入ってからは湯冷めしちまうぞ」
「はーい」
メディトークを見て返事をするイイコな芽依とフェンネル。
話をした結果、フェンネルと保護者枠としてシュミットが一緒に行く事に。
今から楽しみだね、とワクワクしてフェンネルと顔を見合わせた。
「……すごい豪華」
観覧車へ行く時間もある為、少し早めの夕食が部屋に運ばれてきた。
お刺身がメインらしく、中央にドン! と置かれたお造りは凄まじい大迫力。
6人分な筈だが、10人分はありそうた。
個別には、芽依の希望で米が用意されているのだが、端において魔術で炊くようでグツグツと音が鳴っている。
火の調整も自動でしてくれるようで、静かに待つだけだ。
3つ繋がった小皿には箸休め用のマリネやサラダ等が乗っている。
ローストビーフや揚げ物等ずらりと並び、ローストビーフの皿と同じ大きさに乗ったデザートも置いてある。
そして、濃厚な林檎の食前酒だ。
芽依は目を輝かせて全体を見るが、ちらちらと食前酒を見ているのに気付き皆苦笑する。
「食べよう? 」
「ああ」
「いただきまーす! 」
「ご主人様、私のも飲みますか? 」
「大丈夫だよ、ハス君のはハス君が飲んでね、ありがとう」
「メイさま……美味しそうなご飯を前に断食をした方がよろしいですか? 」
「いや!! 食べて?! 」
騒がしい食事が開始した。
メディトークが小皿に刺身を取寄せ芽依に渡す。
お刺身の中心には溢れんばかりのイクラもあって、ご飯が炊くのを待つのだが、ソワソワしてしまう。
「ローストビーフとろける……あ、大根と梅のサラダうまぁ」
「……ホタテ美味しいです」
トロリと目を細めて零れたハストゥーレの本音に全員がせっせとホタテをハストゥーレの皿に運ぶ。
慌てふためくハストゥーレに、ほっこりしながら、いいんだよ、いいんだよ……と進める皆にハストゥーレの頬が赤く染まった。
「ねぇメイちゃん……」
「なーに? 」
「メディさんとご飯どっちの方が好き? 」
ニヤニヤとしながら聞くフェンネルに、芽依は箸を止める。
そしてにっこりと笑った。
「メディさん。私好みの味付けだし、隠し味は愛情だしぃ? 」
無言で頭を叩かれた。
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