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プレゼント交換
しおりを挟むカナンクルでは毎年行われるプレゼント交換。
芽依はプレゼントを渡したい人の人数がそれなりに多いためケーキセットにしようと考えていた。
様々な仕掛けが出来るこの世界のケーキ。
それをこっそりと用意するのが楽しみの一つだし、1年に1回の対価を必要としないプレゼントを貰える日だ。
誕生日ともまた違う嬉しい日。
「………………あれ、誕生日ってお祝いしてないね」
ふと思い出す芽依。
この世界に誕生日という概念はあるのだろうか。
いや、歳をとるからあるのだろう。
それをお祝いすることが無いのかもしれない。
「ねぇフェンネルさん。皆は誕生日のお祝いはしないの? 」
「誕生日のお祝い? なぁに、それ」
「あ、知らないのか」
首を傾げて聞くフェンネルに、常識の違いがまたひとつ。
「私たちは誕生日おめでとうってお祝いをするの。ちょっと豪華なお料理に、プレゼント貰って生まれてきてくれてありがとうって」
「………………へぇ、素敵なお祝いだね。生まれてきてくれてありがとうかぁ」
「うん。でも、みんなは無いんだね」
「うん、そもそも誕生日って年初めにみんな迎えるでしょ? 」
「……………………なるほど、昔の日本的な感じか」
つまり生まれ月や日は関係なく、元旦にみんな歳をとる考え方が主流のようだ。
個別の誕生日は存在しなく、一律みんな歳をとる。
そこにお祝いをするという概念はない。
「私たちは生まれた月日を誕生日としてお祝いしてるんだよ。だからみんなそれぞれバラバラなんだぁ」
「生まれた日ぃ? …………覚えてないなぁ。もう2000年以上前だし……」
ここで初めて聞いた年月に芽依は吃驚した。
そういえば、最初にセルジオが言っていた。
人外者の最上位ともなれば寿命はないようなものだと。
そう思うと、メディトークもシュミットもそうなのだ。
まだ3人より年若いハストゥーレは中位の妖精の為寿命が決まっているようなもの。
そんな4人から祝福を受ける芽依の寿命も、既にいくらかわからない。
たぶん、殺されない限り死ぬことはないだろう。
「………………私、凄い人達と家族になったんだね」
「え? 僕って凄いの? 」
キョトンとするフェンネルは、2000年を超える期間を生きた妖精には見えないくらい美しく透明だ。
普段一緒に芋を掘っているとは思えないくらい綺麗な妖精。
「…………うん。凄いね。そんな果てしない長い時間を過ごすのはしんどい時もあるでしょ? 」
フェンネルの大事な友人だって見送ったし、胸が軋む思いも沢山したんだろう。
フェンネルは優しすぎるから、それを消化出来ないこともあったのだろうな、と芽依は艶やかなフェンネルの頬を撫でる。
「……なぁに? 」
「ご褒美。2000年も頑張ってきたフェンネルさんに」
「…………うん。僕ね思うんだ。きっとこの長い年月を狂っても生き続けたのはね、メイちゃんに会うためだったんだろうなって。いつか、僕が死ぬ時はメイちゃんの手で殺して欲しいな」
「それは無理だよ。どんな事があっても私がフェンネルさんを殺すことなんてないよ」
「…………そっかぁ、じゃあ僕は未来永劫メイちゃんの隣にいるんだね。こんな幸せな事ってないね」
ギュッ……と抱き締めて芽依の頭にフェンネルの頭を乗せる。
小さくふにふにする芽依を抱き締めて、息を吐いた。
「僕、メイちゃんの奴隷になった時に一生分のプレゼントを貰ったね」
「……可愛いなぁ、フェンネルさんは」
「えー? 」
クスクスと上機嫌に笑うフェンネルに、芽依も笑った。
寂しい人生を送っていたフェンネルには、奴隷という暖かな場所と、愛おしいご主人様のプレゼントでもう隙間もないくらいに幸せいっぱいだ。
「そんなフェンネルさんには、今年も素敵なプレゼント」
そう言って渡したのは、雪の降る日に同じ毛布に包まれて眠るフェンネルと芽依が砂糖菓子で飾られた可愛らしいケーキだった。
目を輝かせてそれを見るフェンネルは、すぐさま時間停止をする。
「大事に飾るね!! 」
「いや、食べて? 」
こうして、フェンネルだけでなく家族や庭の住人、領主館にいる人たちやセイシルリード、ニアにヘルキャット、ユキヒラたち移民の民とその伴侶等、お世話になっていた人達ひとりひとりに用意したケーキを渡した芽依は、幸せな気持ちで胸をホコホコさせた。
頂いたプレゼントは、大体は消耗品だった。
可愛らしいハンドクリームだったり、良い香りバスボムだったりと芽依を大層喜ばせる。
カナンクルだからと解禁された酒に酔った芽依がバスボムを持ってハストゥーレの腕に絡みついた。
「えへへへぇ、良い香りだよぉーお風呂行こっか、お風呂ぉぉぉ」
「ご主人様……あの、引っ張ってはいけません……あの……」
お風呂場に連れていかれるハストゥーレをすぐさまフェンネルが回収してメディトークの有難いお叱りが開始されるのもいつもの事だった。
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