美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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今後の方針を模索する

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 シュミットを含めたパール公国の今後の対応を模索する事について、日を改めた翌日。
 キリキリと痛む胃を抑えながら、ずらりと並ぶ芽依達を見るアリステア。
 その周りには、目を見開き驚くセルジオとシャルドネに、口に手を当てているブランシェットがいた。
 その眼差しは全員シュミットを見ている。
 まるで当然かのように芽依の隣に立つシュミットは完全に自然体で、腕にパソコンを抱えて立っていた。

「アリステア様、急な話に時間を取ってくれてありがとうございます」

「あ……ああ……」

 ぺこりと頭を下げる芽依の表情は真剣で、いつもは見ないその表情にアリステアは眉をひそめ、新たに持ち込まれる話に覚悟を決めた。

 用意された椅子に座り、差し出された暖かな紅茶の香りに癒される。
 少し息を吐き出してから、隣のメディトークを見ると、巨大蟻は大きなクッションにポスリと座った。
 芽依たちも椅子に座ると、シュミットはカタカタとパソコンを触り出す。

「…………今回の話はメイと……シュミット様からの話という事だろうか? 」

 アリステアが不可解だとメディトークを見ると、小さく頷いて返事をするメディトーク。

『正確に言えば、あの人外者のチビからパール公国に問題が起きている事を言われ近付くなと警告がカテリーデンであった。それについて、内容の把握の為に芽依からシュミットに仕事として情報を買うことにしてるから、それを中心に会議を重ねてぇ。俺らには知らねぇ事が多すぎる』

「ま……待ってくれ! 取引をしたのか?! シュミット様に?! ……確かに、信頼のおける情報先だが! その、支払いは……。 今ギルベルトに掛け合い白の奴隷を増やすよう手配を……」

「アリステア様、それよりも早く確実な情報収集先があるのに待つんですか? ミカちゃんやパーシヴァル様は勿論、パール公国はもう傾いていて一刻の猶予もないんでしょう? なら、シュミットさんに頼む方が効率的ですよ」

 どうにか止めようとするアリステアに芽依は首を横に振る。
 今はほかの事に気を使う時ではない。

「アリステア様、ミカちゃんとアウローラさんはドラムストの領民です。いち早く助けないといけない人です。しかも、アウローラさんは消息がわからず無事かもわかりません。今は対価を考えるのは後にしましょう」

 芽依の言葉に目を見開くアリステア。
 それはセルジオたちもで、パチパチパチとパソコンで何かを表示しているシュミットを横から覗き込む芽依を見ている。
  
 来たばかりの頃から見ていたはずなのに、自分の生活に必死だった芽依は、今やドラムストのことを考えて今、自らの足で進み出そうとしている。
 その考えはアリステア達とはまた違う中枢にいる人の考え。ドラムストの領民を守ろうと足掻く1人の移民の民の姿。見慣れない芽依の姿。

『……対価についてはシュミットと話済みだ。コイツが身を削るような対価を払うような話をするわけがないし、それを許すような俺たちじゃねぇ。そこの心配はいらねぇよ』

「お嬢さん、貴方の気持ちはとても嬉しいのだけど、庭の仕事を中心にする貴方にばかり負担をかけさせてしまって本当に申し訳ないわ。それは私たちの仕事のはずなのに……なによりも情報も行動もいち早くこなさないといけないのは私たちなのに」

 ブランシェットが眉を寄せて申し訳なさそうに話す。
 アリステア達も既に白の奴隷に緊急依頼をして動いてもらい情報を集めていた。
 来年の初め、ミカ達がドラムストに戻るまでと期間は短い。短期決戦にはなる。
 だが、既に何十年とこの仕事を本職にしているシュミットに数年白の奴隷として生きてきたギルベルトの人外者がかなうはずもなく。

「なら、情報の擦り合わせからしようか。大切なのは報連相、ね?  メイちゃん」

「そ……そうです、ね」
 
 体を前に倒してメディトークの向こう側から話しかけるフェンネルに、顔を引き攣らせる芽依。
 これについては昨日怒られたばかりで反論の余地もない。
  
「じゃあ、まずはパール公国の問題から……」

 こうして議題に上がるパール公国の内情は、思ったよりも酷いものだった。
 ここ数週間で送り続けていた支援物資の受け取り拒否をアリステアたちドラムストに連絡が来た。  
 その結果、パール公国の領民の半数は餓死しているらしい。
 契約精霊や妖精はさらに人数を減らし、現在2名のみ。
 それも時間の問題だろう。だれも泥舟に乗り続ける人はいない。

「パーシヴァル様から拒否を? 」

「名義はパーシヴァルだが、声明文を出したのはティムソンだろう、パーシヴァルが支援物資を受け取り拒否するはずが無いからな」

 セルジオが言うとブランシェットも頷く。
 そして、シャルドネからもたらされた次の情報に芽依は息を飲んだ。

「今現在のパール公国の公王は、病に伏せっていて行動不可であるらしいです」

「え、病に伏せって……」

 芽依がすぐさまシュミットを見ると、へぇ……と口の端を持ち上げた。

「良く調べたな、現在公国の王については隠蔽している。公国についての最大の秘匿情報だ」

「……どうして」

「同じ王族であるパーシヴァル公子にすら伝えられていない。なんでも、もう何十年も会うことすらはばかられているらしいな。仕事をこなしティムソンがそれを支持して国は支えられていると都合よく言ってはいるが、そもそも何故それを不思議に思わないのか。既に中枢が食われている」

 シュミットは、パン! とキーボードを鳴らして言う。
 基本的に他国への干渉は開戦の始まりになりかねないので不穏な国ほどつつく事は出来ない。
 近しい国とは言ってもドラムストからは距離があり、ミカとアウローラというドラムスト関係者がいないのなら、たとえ優しいアリステアであろうとここまで入り込む事はしない。

「………………じゃあ、既に」

「もう公王は何十年も表には出ていない。ティムソンが巣食ってその権力をパーシヴァルに渡さずに動けるだけの公王からの信頼を、かなり前から既に受けていたのだろうな」

『……計画は年単位に行われていて、内側から食いつぶし、もうそれも最終段階ってところか』

 そして、シュミットのパソコン画面がずらりとと空中に映し出された。 
 その情報量は膨大でアリステアは目を見張る。

「……いったい、どうしてそんな事をしようと思ったのかしらね」

 一つ一つ、国の傾く様子を書かれている文字の羅列。
 中にはイラストや表などもあり、見やすく分類されていた。
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