美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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機能しない報連相

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 メディトークとハストゥーレは庭の玄関から戻ってきた。
 手には麻袋が握られ、ジャラジャラと音をたてている。
  中身はお金だったようで、硬貨が重なりジャラジャラと金属音を奏でている。

「アリステア様に話を聞いた方がいいよね? その時にシュミットさんにも聞いた方が1回ですむかな……」

 これからの動きを確認する芽依は振り返りメディトークを見る。
 芽依に一切目を向けず、麻袋から取りだした硬貨を指先に挟んでいた。
 クルクルと器用に回している。

「メディさん? 」

 返事が来ないのに首を傾げると、ゆっくりと目線が芽依を捕える。
 スっ……と細められた瞳はいつもよりも怒りの感情が乗っていて冷たく射抜いていた。

「メイ……どこであのウサギに会った? 」

 硬貨を指で弾いて高く飛ばす。
 器用に指先で挟むように取り、指の間でクルクルと回すメディトークは芽依を見ていない。
 それが妙に不穏なのだ。

「えっと……レストランで」

「森のか? 」

「う、うん」

「いつ」

「え? いつだったかな……」

「メイ」

 近付いてきたメディトークを見上げると、ガッ! と頭を掴まれ力を入れられる。

「報連相……それくらい、知ってるよな? シュミットの時もだが、何回言やぁわかんだ? なんで言わねぇんだよお前は!」

「痛い!いたた!! 痛いです!! 」

「痛くしてんだよ! 何回言ったらこの頭の中は理解すんだ? あ?! 」

 掴んだまま左右に揺すられて体も揺れる。
 それを聞いていたシュミットは、弾かれたように芽依を見た。

「……俺のところに来る時もいきなり消えるのはわかるが、連絡しなかったのか? 何も言わずに? 帰宅後も ? 」

 シュミットは芽依に詰め寄り、メディトークと共に圧をかけられる。
 心配をさせるとわかっていて、終わったことだからと伝えない芽依だが、それはかなり危険なことだ。
 今回の巨大ウサギは人参欲しさにカテリーデンに来たが、それについても芽依を探し当て行動範囲や行動パターンを知る必要がある。
 さらに、移民の民だからこそ伴侶やその周りにいる人、生活環境に至るまで調べ尽くすのだ。

 巨大ウサギはそこまで考えての行動ではなかっだが、危害を加えるには十分な捜索内容。
 そばに居るとは言っても、常に張り付いている訳では無い。
 入浴やトイレなど必ず1人になる時間があるが、その時に何かしらが起きる可能性があるからだ。
 移民の民が病むのは、伴侶が四六時中、入浴やトイレにまで付き添う人がいることも関係している。
 流石にプライバシーの侵害だ。
 だが、移民の民が攫われる時、高確率で伴侶がそばにいない時に起きる。
 芽依も、誰もそばにいない時に起きているからこそメディトーク達は気を揉むのだ。

 この巨大ウサギが現れたことにより、何度も言われていた報連相がまったく機能していないことを再度確認してしまったメディトークは、シュミットにある相談を持ち掛けることになるのだった。
 
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