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皆でピクニック 3

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 フェンネルが地面に敷いたのはレジャーシートである。
 モコモコとした材質で手触りがよく暖かい。
 しかしその高級レジャーシートを雪の上に直接敷いた時、芽依は発狂しそうになるが、これは雪用レジャーシートらしく使い方はあっているのだとか。

「びっくりしたぁ」

「あれ、ごめんね。知らなかったんだね」

「ピクニック初めて」

「そっかぁ、じゃあ楽しもうね」

 ニコッと笑って、入ってと促され芽依は靴を脱いでレジャーシートに座った。
 座り心地は良くフワフワな長毛のジュータンのようである。
 さらに、寒さがなくなった。

「…………あれ、暖かい」
  
「保温維持されるのです」

 隣に来て置いてあるバックを避けたハストゥーレは、コートをお預かりしますと両手を出してきた。
 膝立ちで両手を出す可愛らしさに両手で顔を覆う芽依は、うーうーと小さく唸っている。

「ご主人様? 如何しましたか? まさか、体調が優れませんか?! 」

「ちょっと不整脈がバコンと来ただけだから大丈夫だよ」

「大丈夫ではありませんね?! 」

 慌てだすハストゥーレの肩をメディトークがグイッと引き、メディトークの体にバスンと当たる。
 心配そうに見上げると、呆れたメディトークがビカビカと文字を光らせる。

『アイツは一種の病気を患ってるだけだから気にすんじゃねぇ。幸せそうにしてるだけだ』

 病気と聞いてビクリと体を揺らしたが、幸せそうにしてると聞いて安心して芽依を見た。
 確かに手を離した芽依の顔はしまりのない笑みを浮かべている。

「……ご主人様が幸福そうで良かったです」

『……そういう奴だよなぁ』

 ふわりと笑うハストゥーレの頭を撫でながら息を吐き出したメディトークが、準備するかと動き出し、まだ若干クネクネしている芽依からコートを剥ぎ取った。


 レジャーシートは十分な広さがあり、巨体なメディトークが座っても十分な広さがある。
 それこそ寝転んでも余裕があるくらいに。
 そこにいそいそと取り出したのが酒。
 そんな残念な芽依にメディトークは呆れながら食事用にと持ってきたお重などを取り出していた。

「そんなに雪降ってなくて良かったよねぇ」

 フェンネルがコップを用意しながら言うと、ハストゥーレが同意する。
 チラチラと降る雪は少ないがやむことは無く、美しい景観を彩っている。
 魔術が敷き詰められたレジャーシートは保温の他にも機能は充実していて地面からの雪の侵略を防ぎ、さらに今現在降る雪もレジャーシートには落ちてこない。
 素晴らしいレジャーシートは普通に売られていて、夏物より価格は高いがお手頃価格なんだとか。
 ただし、このサイズは規格外の為値段が跳ね上がっている。

「うわっ! ふっかふか、甘さもいいねぇ」

「美味しい? 良かったー」

 早速ごま餡のあんまんを食べたフェンネルは目を見開いて絶賛した。
 口の中に広がるねっとりとしたごま餡の甘さに、生地が少し甘めなあんまんはホッコリとする甘さだと力説している。
 メディトークもあんまんを掴み、1口で口に入れると予想以上の美味しさに目を細めている。

『……美味いな』

「メディさんからの合格点いただきました」

「ご主人様、こちらの肉まんもとても美味しいです」

「よかった、いっぱい食べて! 今度はまた違う味作ろうかな」

『……他も作れんのか』

「肉まん系ならね」

 へへっと笑って言った芽依に呆れたように笑ったメディトーク。
 混ぜる、切る、包む、蒸す等は他の料理にもあるのに何故他の料理では失敗するのだろう。

「…………あー、幸せだなぁ」

 肉まんに合わせて中華風のメディトークお手製ご飯を食べる。
 まさかのチマキに芽依のテンションが爆上がりしたり、肉まんを気に入ったハストゥーレがそればかり食べて栄養が偏るとメディトークに怒られたり、酒に酔った芽依がフェンネルに襲いかかりあむあむしたりと、和やかなピクニックを開催している。

「和やかじゃないよね?! 僕また齧られてるんだけど!  」

「これも運命……あむあむ」

「乗り上げないで! ちょ……お腹はやめて!! 」

「……恥じらう乙女か、お前はぁ…… 私のお餅を隠すでないぃぃぃぃ」

「もう! 酔っ払い!! 」

「よいではないかー……」

「良くは無いよね?!  」

 またフェンネルをひっくり返して上に乗り上げる芽依。
 何故最高位の妖精であるフェンネルを毎回簡単にひっくり返して抑え込めるのか、フェンネル自身も不思議であったが、座った目で笑う芽依に体がぞわりとする。

「うわっ! 今なんかゾクゾクした! 」

「それが喜びよ、愛いやつめぇぇ」

「キャラ崩壊!! 」
  
 服を握りしめながら芽依を下ろそうと奮起するフェンネルと、腹を撫で回そうとする芽依の攻防は呆れるほどにホワホワとしている。
 こんなにも色が含まれそうな事をしてるのに、楽しそうに笑う芽依と、嫌がりつつも本気で抵抗しないフェンネルにふくれっ面になるハストゥーレ。
 もはや酒盛りの定番と化している。

『…………どさくさに紛れて足食うな』

「ばれたぁ」

 うへへぇ……と笑う芽依が幸せそうなら良いか……と最近は止めるのも面倒だと酒を飲みながら眺めるメディトークは口の端をクイッと持ち上げ機嫌良く酒を飲み干した。

 楽しく酒盛りしながらゆったりとした時間を過ごす芽依達。
 敷いているレジャーシートの下に潰されている雪は、凄まじい速さで溶けていき、お開きの時間にはレジャーシートのあった場所に雪は一切無かったのだった。
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