美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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本来は華やかな祭り

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 美しい装いのアリステア。
 それはここに参加している人皆が着飾っていた。
 しかしそれは、豪華絢爛では無く、街中にいる市民が少し着飾ったようなものでエプロンドレスの女性が多い。
 中にはパンツ姿の女性も、逆に男性がエプロンドレスを着ている人もいるのだが、無礼講なのだろう。

 本来、この祭りは踊って食べて、皆で収穫を祝う物なのだ。
 美味しい食事に華やかな飾り付け。
 キャンプファイヤーを付け、皆で夜中まで踊り狂うのだ。
 たまたま去年の収穫祭の前、呪いだったり人外者同士の喧嘩だったりで祝祭を押してしまい簡素的な物になったのだ。

 不思議とそれはドラムストだけじゃなく、他の領地や国も同じで祝祭の力が全国的に足りなかった故のシロアリ進行はなるべくしてなったのかもしれないとアリステアは話していた。
 当時わからなくても、後々にそれが原因で起きる事象というのも良くある事なのだそうだ。

 今回は飢饉が起きた事で数年後にも食料難は続く可能性がある為、今回の祝祭はしっかりと形式通りに執り行うようだ。
 芽依の野菜をふんだんに使われる為、そらるについてもアリステアから感謝された。

 収穫祭には祭壇に置く様々な食材が並び、夜にになって料理が並ぶ。
 その野菜の殆どを芽依の庭が受け持ったのだ。

 広大な第2の庭がある稼働中だから出来ることなので、芽依も安心したものだ。

 そして、自領では出来ないこの祝祭に参加するべく集まった様々な領主や国王が賓客として席についているのだが、誰もが祭壇に並ぶ大振りの野菜から目を離せないでいた。

「………………はぁ、だから他国や他領の参加に頷きたくは無かったのだ」

「そうは言いましても、断ったら角が経ちますし、後々の収穫にも影響がでますからね。ここは仕方ないと思って受け入れた方がいいですよ」

「わかってはいるのだがな……」
 
 この野菜を見て、再度野菜の支援をされるのが目に見えている。
 特に芽依の野菜はかなり大ぶりで味も良い。
 庭持ちごと引き込もうとする可能性だってあるのだ。
 その面倒事が迫っていると思うとアリステアも胃が痛くなるものだ。

「…………はいアリステア様。美味しい人参ジュースです」

「…………ああ、ありがとう」

 白い服を汚さないように野菜のエキスたっぷりの人参ジュースを飲んだアリステアはホッと息を吐き出した。
 果物みたいな芳醇な甘さがある人参ジュースは、野菜で作っているようには思えない。
 しかもフェンネルの庭は無農薬である。体に悪いはずが無いのだ。

「………………相変わらず美味しいです、フェンネル様」

「そう?良かった。何だか最近甘みが強くなってきてるんだよね。やっぱりメイちゃんと庭を繋げたからかなぁ」

 ね?と芽依を見て笑うフェンネルに芽依は困ったように笑った。
 芽依はその原因が分からないからだ。

「おおアリステア!!今日はよろしく頼むぞ!」

「………………パーシヴァル」

 つい最近まで見ていた顔がまた現れた。
 アリステアに挨拶をしてから直ぐにハストゥーレとフェンネルを見る。
 下心のある眼差しにメディトークが遮るように前に出た。
 芽依も2人の間に入り手を繋ぐ。

「やぁやぁ皆も久しぶりだ。また数日泊まる予定だからよろしく頼むよ…………なぁ、いい加減そっちの二人を……」

「捻り切りますよ」

「シャ、シャルドネ!!目がマジだぞ?!」

「本気ですからね。メイさんに迷惑をかける事は辞めてくださいね」

「シャルドネさん素敵ー」

「おや、光栄です」

 パーシヴァルに向けていた顔つきを緩めて芽依を見るシャルドネに、思わず手を叩いた。

 ギリィ……と歯ぎしりするパーシヴァルだったが、次第に響く振動に芽依があら?と首を傾げると、今度はブランシェットが張り付いた笑みを浮かべる。

「……アリステア、今回は急な参加表明だったのに受け入れを感謝するぞ」

 煌びやかでいて、体を守るような頑強な鎧に似た物を着ているギルベルトが、頭を下げながら用意されている部屋に入ってきた。
 ギルベルトには少し窮屈な室内だが、ちゃんと先に挨拶にくるのは彼の真面目さにも由来するのだろう。

「ああギルベルト、よく来たな」

「………………後で相談をしたいんだがいいか?」

「まぁ、予想はしていたよ」

 苦笑するアリステアにギルベルトも今回ばかりは申し訳なさそうに笑った。
 そして、ブランシェット見た瞬間、たるみきった笑みにゾワゾワと悪寒が走ったブランシェットは、何も言わずビンタをお見舞いしギルベルトは吹き飛び壁に激突したのだった。

「……ブランシェット」

「ごめんなさいね、でもアリステア仕方ないわ、気持ちが悪かったのだもの」

 頬に手を当てて首を傾げるブランシェットに出会って早々のビンタにギルベルトは嬉しそうだ。
 フェンネルは顔をひきつらせ、ハストゥーレは恥ずかしい物を見せている気分になり珍しく芽依の腕を引いて後ろに隠した。

「…………ん?ハストゥーレじゃないか!元気にしていたか?」

 ハストゥーレに気付いたギルベルトはどしんどしんと足音を立てながら近づいてきてハストゥーレの肩に手を乗せる。
 懐かしい会合だと喜んだのはつかの間で、少し眉を下げて笑ったハストゥーレに目を丸くした。

「ご主人様」

「あ、ああ、なんだ?」
  
「いや、君じゃないでしょ?ハス君のご主人様は」

 フェンネルは直ぐにツッコミ芽依の腕をとって前に来るように促されると、ハストゥーレは蕩けるような笑みを芽依に向けた。

「くっ…………今日のハス君いつもの3倍は輝いてるっ!!」

『それは分かってるから少しは相手してやれや』

「分かってるんだー、メディさん分かっちゃってるんだー」

「ねぇ、僕も褒めてくれてもいいんだよ?」

 芽依とフェンネルにニヤニヤと話しかけられるメディトークは額に青筋を浮かべて軽くお仕置をされた2人は、ヒンヒン泣きながらハストゥーレの背中に隠れた。

「ご……ご主人様、フェンネル様」

「ハス君の可愛らしさを若干強めに言っただけなのにぃ」

「僕も褒められて当然だと思ったのにぃ」

 そんな奴隷2人と戯れる芽依にギルベルトはポカンと口を開けていた。
 しかも1人はフェンネルである。
 カナンクルの数日間を浅い付き合いとは言え見たギルベルトはかなり驚いている。
 しかも、白の奴隷のハストゥーレは張り付いた笑みしかしなかったのに、クルクルと表情が変わっている。
 後ろにいる女性の白の奴隷を見たギルベルトは、やはり無表情に近い口端を上げている奴隷を見てから頭を抱えたのだった。


「なんだ、俺は何を見ているんだ」

「…………メイのあれは、ああいうものだと認識する以外は無いな」

 呆れたように口端を歪めたセルジオを見てから、2人にもちゃもちゃと構われ笑顔を見せるハストゥーレを黙って見ていた。









 
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