美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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トラブルは彼女から

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 なんとか挨拶と祝福を終わらせ投影等の魔術を切ったアリステア達は息を吐き出してからミカを見た。
 キラキラと輝く眼差しをアリステアに向けているが、その隣にセルジオが来るとハートが乱れ飛びセルジオに当たる。
 物理的に。

「………………なにあれ」

「アウローラ様は光の中位精霊です。光属性が持つ恋の能力が移民の民の方へ提供されているとお見受けします」

「え、なんかぶつかっては落ちてるよハート……真ん中から真っ二つになって真っ黒に変色してハラハラと砕け散ってますけど……」

「セルジオ様は最高位精霊ですので、あのような魔術を使った魅了は効果がないかと」

「魅了!……まさかの色仕掛けだった」
  
 何度も真っ赤なハートがセルジオに向かっては弾かれ黒く変色しバラバラになっていく。
 ご丁寧に真ん中からギザギザに割れてから散るのだ。

「……なんか可哀想になってくるね」

「いけません、可哀想など思ったら付け込まれます」

 真剣な表情で言うのだが、綺麗なハストゥーレは今日可愛らしいに極ぶりしているらしい。
 あの長い髪を可愛らしく編み込みにして祝祭ようの豪華なネイビーと白の髪飾りをつけている。
 ストレートクリスタルルビーの宝石が使われた花と小枝を煌めかせたその髪飾りはハストゥーレの緑の髪に美しくグラデーションのように輝くのだ。
 
 そして、全体的に緑色を使った緩い天使様服のヒラヒラした服にはあの蝶々のブローチが付いていて、芽依の所有の印が2つも付いている。
 真剣な表情だが、短く細い眉がキュッと持ち上がり、丸みを帯びている頬が微かに赤くなる。

「………………無理かもしれない」

「ご主人様、あまり言いたくは無いのですが魅了を使う者はあまり良い性質を持っていない方が多いのです。ご主人様が囚われたら、私はどうすれば……」

 胸元の服を握りしめ俯くハストゥーレに、芽依はくらりとする。
 掴んでいる場所はあの蝶々のブローチがある場所なのだ。

「だって……そんな色仕掛けをされたら簡単に陥落しちゃうよ!!」

「え?え……?」

 ハストゥーレの両腕を掴んで力説する芽依を隣にいた笑い上戸の花嫁さんも力強く頷いている。
 顔を見合せ頷き合う2人、良い友人になってくれそうだ。

「だから!私は貴方の側で働きたいの!今まで働いたことないけど、多分大丈夫だから!アリステア様なんでも言ってって言ったでしょ?」

 騒がしいミカの声を背後に芽依は可愛らしくも困惑するハストゥーレを見ていた。

「これは物凄い色仕掛けですね」

「ヤバいですよね、この外見にこの仕草、これで無自覚ですよ」

「奴隷の話は聞いてたけど見る目変わっちゃいました」

「奴隷ぃ!?って思ったけど健気にご主人様って言われたら……もう……たまらないですよ」

「う……羨ましい……」

「ミ……ミチル……ちょっ……」

「今大事な話中です!レニアスはちょっと待っててくださいら!!」

 心配そうに声をかける伴侶にミチルと呼ばれた花嫁さんは声を掛けた。
 その声色は優しくて、やっぱり仲が良さそうだ。

「えと、みちるさん?ですか?よろしくお願いいたします。貴方とは仲良く出来そう」

「ええ、私も仲良くなれると思ってました。よろしくお願いします、めいさん」

「あ……名前」

「良く聞くから」

 ふふ、と笑うみちるに、芽依はアハと笑った。
 そして、伴侶のレニアスを見る。

「よろしくお願いします。庭を作ってるから何かお困りならいつでもどうぞ!」

「!!庭、そうだ、ちょっと相談したい事があるから後で話いいかな?」

「お!勿論です!」

 頷くと、後ろからまたミカの声が聞こえてくる。
 なにか必死に訴えているようだが、アリステアはそれを許可していないようだ。

「……なんなんですかね」
  
「色仕掛けに敗れたので正攻法に変えたんじゃないですか?」

「それ、上手くいくと思います?メイさん」

「無理じゃないですかね、見てくださいよあのセルジオさんの嫌そうな顔」

「……今日妙に色気ありません?セルジオ様」

「…………………………あー、美味しい物でも食べたんですかねぇ」

 そんなたわいない話をしつつ見ていると、ミカと不意に目が合った。
 燃えるようなキツイ眼差しを向けられ、みちるは思わず、うわっ!と声を上げる。

「……もー面倒なの嫌なんだけど」

「大丈夫ですご主人様、私がそばに居ます。メディトーク様よりご主人様の安否を頼まれましたので」

「メディさん……トゥンク」

 今そばにいないメディトークにトゥンクとなりつつ、この集まりは果たして何時解散なんだろうとアリステアを見ているが、その答えは勿論ない。
 アリステア達が落ち着かなく話をしている様子を間違っても領民に見せれないよねぇ……なんて思っていると、シャルドネが部屋を出ようとしていて芽依はハッとした顔をして追いかけた。

「ご主人様!?」

「ハス君、おいで!シャルドネさんに用事があるよ!」

「はい、只今!」

 芽依はハストゥーレに手を伸ばすと、ふわりと笑ったハストゥーレが芽依の手を握った。
 そのまま芽依の前に行き先導するように走り出す。
 ふわりとハストゥーレが纏う布が揺れる様子が綺麗で芽依はその流れる布を一瞬眺めてしまった。

「………………アイツ」

 手を繋いだ芽依とハストゥーレがシャルドネを追い掛けて行ったのをセルジオが見送る。
 手を繋ぐ2人に小さく舌打ちをして機嫌を下降させると、アウローラはそろそろまずいとミカの肩に手を触れた。

「もう、アウローラやめて!今はセルジオ様と話してるの!見て分からないの!?」

「ミカ、我儘はやめましょう。貴方は空回りをして周りに迷惑をかけているのよ?」

「なっ!!そんなこと…………」

 ミカはアウローラを見上げると、周りの視線に気付き唇を噛み締めた。
 俯き大好きなプリーツスカートを握りしめ、バタバタと部屋を出ていったのだった。

 
「いた!シャルドネさーん!」

「……おや。今年もよろしくお願いいたしますね」

「はい、よろしくお願いいたします。」

 お互いがぺこりと頭を下げると、シャルドネはハストゥーレを見た。
 仲良く手を繋ぐ様子に笑みを深める。

「良かった、大丈夫だとは思いましたが白の奴隷はお気に召しましたか?」

「シャルドネさん、ハス君です。奴隷って言わないでくださいね。仲良くやってますよ」

「これは失礼いたしました。ではハス君……とは呼びにくいので私はハストゥーレと呼ばせて頂きますね」

「どうぞご自由にお呼びください」

 胸に手を当て頭を下げるハストゥーレに微笑んでから芽依を見た。

「それで、如何しましたか?」

「以前備蓄の場所について見に行く話をしてたじゃないですか。私の方も保管をもう少し考えたいなと思いまして、どのような保存方法か実際に見てみたいなと思ったんです」

「…………なるほど、たしかに貴方の箱庭は時間経過をすると言っていましたね。あの量を備蓄出来なければ勿体ないことになりますし、カルヴィ対策としても重要ですね」

「カルヴィ?」

「ええ、あまりに食べ物を痛ませ破棄しますとカルヴィという食べ物から派生する妖精が怒り呪いをかけるのですよ」

「ひっ!呪い!!」

「ええ、それはすぐにでも対策が必要になりますね」

 長い廊下の真ん中で話し合いをする2人。
 そんな芽依の斜め後ろにはハストゥーレもいて、新年すぐのゆっくりと流れる時間に身を任せながら話をしていた時だった。

 バタバタと走ってくる軽い足音が廊下に響き芽依とシャルドネ、ハストゥーレは振り返える。
 真っ赤な顔で泣きながら走るのはミカで、3人を見つけたミカは立ち止まった。

「……また、またあなたなの!?何回私の邪魔したら気が済むのよぉ!!」

「え……ええ……」

 スカートを握りしめボロボロと涙を零しながら声を上げて泣き出すミカに芽依は動揺する。
 えぇ……なんか泣きだした……とシャルドネを見上げるとシャルドネも困ったように見つめ返された。

「…………あ、あのね、私なにもしてないのよ?」

「し、してなかったら!私が、こんっな惨めな……ひっく……思いをする訳ないじゃん!!」

「えー、逆恨み」

 ギャン泣きしながら言われたが、芽依は実際になにもしていない。
 ただ普通に生活をしていただけだ。

「あんたなんか!あんたなんか!!」

 胸に手を持ってきてギュッと握り叫んだ時、カッ!と光が溢れた。

「っ!ご主人様!!」
  
 光が溢れる。
 様々な色がミカから飛び散り真っ直ぐに芽依に向かっていき、ハストゥーレが叫んで芽依を力一杯押したのだが、その光は不規則に動き芽依を追いかける。
 押された芽依は尻もちを着いて一瞬目を閉じたのだが、次目を開けた時には知らない場所に座り込んだ状態で呆然としていた。

「……………………え、ここどこ」
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