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しおりを挟む朝からカロリー過多な情報に生徒はヒィヒィしながらもはじまった体育祭。
最初の全員参加の綱引きや、個人種目などが目の前で繰り広げられているのだが、亜梨子やミラージュを気にしてチラチラと視線が集まっている。
しかし、肝心のミラージュは万里や男子たちと話をする事が多く、相変わらず一華達もたまに行っては話をしている。
亜梨子は桃葉と郁美と一緒にいてあまりミラージュとは話していなかった。
あれだけ亜梨子がボロくそ言ったのでミラージュの気持ちが持ち直し、通常運転に戻ったのだ。
ミラージュは亜梨子と一緒に居たい気持ちもあるが、人前でイチャつくのは嫌だという亜梨子の意志を尊重するらしい。結果、今までと余り変わらなかった。
「いいのか?彼女んとこ行かなくて」
「ん?亜梨子は今まで通りがいいんだってさ」
「そうなのか?お前を彼氏にして一緒に居ないとは思わなかったな」
「まぁ、今じゃなくても会えるしね」
ふんふん、とご機嫌に鼻歌を歌うミラージュの隣でチラッと見た万里。
「今日家に行くって言ってたしな」
「ぐふっ」
ちょうどポカリを口に入れた瞬間言われて軽くむせたミラージュに周りは鋭い目を向ける。
「……ミラージュ、おい!今日付き合って家行くとかどういう事だ!!」
非モテたちは変な妄想をしながらもミラージュに迫ると、ミラージュは片手を振って否定した。
「ちょっ、なんか勘違いしてない?」
「何の勘違いだよぉ!!あれか!?もうちゅーしたのか!告白してちゅーか!?そうなのか!!ミラージュ!!」
「うわぁ、めんどくさぁ」
掴みかかりガクガクと揺さぶられるミラージュはされるがまま揺らされているが、次のアナウンスでその男子から脱出した。
[次は仮装リレーが始まります。選手の皆さんは整列をお願いします]
亜梨子は今しがた聞こえたアナウンスに立ち上がり移動を始める。
「では、行ってまいります」
「行ってらっしゃい!」
初めての亜梨子の個人種目である。
仮装リレーに出る男女がいる場所に行くと、視線を集めたが、体育祭中にあんな騒ぎをしてしまったのだからと反省中の亜梨子は文句も言えず口を閉ざした。
「…………ねぇ、ミラと付き合ってるって本当?いつから?一緒にいる所見た事ないんだけど本当は付き合ってないんだよね?」
いきなり知らない人に訝しげに言われた亜梨子は、眉をひそめた。
初めて見る人にいきなり突っかかるように言われた亜梨子。
「……随分個人的な事を聞いてくるのですね?初対面ですよね?どなたか存じ上げませんが、それをお答えする必要性を私は感じません」
「なっ!」
亜梨子のキツイ言い方に話しかけてきた女子は絶句する。
周りの生徒もヒソヒソと話しているが、亜梨子は大切な人や友達がわかってくれたらそれで良いという思考回路な上に失礼な人は嫌いである。
「…………綺麗な人だけどこんなに優しさの欠片も無い人ならすぐミラ君に愛想つかされるんじゃない?本当に付き合っているなら」
ミラージュを好きな女子だろうか。亜梨子に聞こえるように言った言葉を聞き暫し考える。
「…………愛想つかされる」
呟いてミラージュの方を見ると、こっちを心配そうに見ている姿があり万里が横で呆れている。
少し離れた場所には桃葉と郁美、そして一華もいて皆が亜梨子を見ていた。
その結果、亜梨子は頷く
「愛想つかされる心配は今の所ないかと思われますね。友人含めて」
ミラージュを見てふわりと笑った亜梨子。
無表情ばかり見ていた生徒達は亜梨子の笑顔に絶句した。
綺麗な顔立ちの無表情からのギャップが凄すぎたのだ。
「…………………………なんなのよ」
苦し紛れにそういった女子は亜梨子に謝ること無く人並みに隠れる様に離れて行った。
そして始まった仮装リレー。
亜梨子は3番目の走者で、横1列に5人で並んでいる。
前にある紙を開き書かれているお題に合った服を置かれている籠から取り体操服の上から着て、走りゴールという至極普通の仮装リレーである。
靴も用意されている為、今履いている靴は手に持って走らなければならない。
「……走りやすい服がいいですね」
前を走る白鳥の着ぐるみや、ドレス、海賊など様々いて、全員分の衣装を用意したらしくゴールした生徒はまだ着用していた。
[では、スタートします。よーいパァァァン]
スタート時に鳴らすピストル音が響き亜梨子は走り出した。
長机にある5枚の紙から1枚取りその場で見てみると、魔法使いと書かれている。
顔を上げて少し離れた場所に置いてある籠へと走ると、同じく走り出した生徒達が籠を開けて中身を確認していく。
この籠は蓋付きで開けないと中身が分からないイジワル仕様になっていた。
亜梨子は3箱目にして魔法使いを見つけ出し、星柄の紺色のロングワンピースを頭から被り着て、赤いマントの紐を結ぶ。
とんがり帽子をかぶり、先の尖った編み上げブーツを履くと、履いていた靴を手に持ち、星柄の杖を握りしめた。
パッと周りを見ると、男子がドレスを着てガラスの靴を履き、また別な人はカボチャの着ぐるみに悪戦苦闘している。
どうやら、この第3走者はテーマはシンデレラらしい。
大きな靴で転ばない様に早足でゴールを目指す亜梨子は、杖を持つ手でスカートを持ち上げていた。
「………………なかなか、ハード」
3着で着いた亜梨子は、3と書かれた手作りネックレスを付けられ走り終わった列に誘導され、スカートが着くからと、しゃがむことなく残りのレースを見守る事となった。
「わぁ、亜梨子ちゃんの番だよ!ほら!」
「何引くのかな、髪型可愛いから私的にはドレスがいいんだけど……」
「桃は可愛かったらなんでもいーなぁ」
「………………………………あ、亜梨子可愛い、魔法使い?魔法使いかぁ……うん、可愛いからまぁいいか」
「なんだよ、シンデレラが良かったか?」
「亜梨子はなんでも可愛いよ……あ、走れてない、可愛い。でも、生着替えはちょっとなぁ……」
「あれを生着替えって言えるお前、まじでヤバいわ」
あれから仮装リレーは終わり写真を撮る人達が大勢いた。
その中には亜梨子もいて、郁美と一華、万里に散々写真を撮られている。
ミラージュの彼女ということで、知らない人に隠し撮りされていたようだが、それは亜梨子自身気付いていなかった。
ミラージュと桃葉も写真を撮りたかったのだが、次が借り物競争の為引きずられるように連れていかれた為、ミラージュは万里に桃葉は一華にスマホを放り投げて亜梨子の写真を頼んだのだった。
「金剛」
「はい」
「あたしと写真とろうよ、一緒に」
「はい、いいですよ」
「一緒に写メ撮れないミラの悔しがる顔見てやろうよ」
ニヤリと笑った一華に亜梨子も思わず笑って一緒に写真を撮った。
更に郁美や万里とも撮り、全員でも撮りと散々写真を撮っているのをミラージュと桃葉が遠い所から地団駄を踏んでいるのを見て一華はニヤニヤしながら見ているのだった。
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