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おまけ
しおりを挟む性分化が終わり体調が落ち着いた為、莉央は学校に登校した。
綾人は莉央に気付き、薬を飲んでいるにも関わらず溢れる色気に目を見開きコクリと生唾を飲み込む。
「…………香苗おはよう」
「莉央!おはよ……うっわ、あんた可愛いわね」
「…………家族に散々言われたよ」
はぁ、と溜息を吐き出してから香苗にフワッと笑った。
「アトマイザー、ありがとう。凄い役にたったわ」
「そっか、良かった…………辛いもんね凄く……」
「…………うん、辛くて堪らなかった」
「だよね…………あ!」
香苗もあの地獄の時間を知っていて、終えているのだ。
2人は顔を突合せて頷いている。
そんな莉央を見て声を上げた香苗は莉央の腕を掴み引っ張ると、耳元で囁いた。
「あの数日、お兄さん大丈夫だった?」
「…………あー」
「まさか!」
「いやいや!違うよ!…………兄さんは僕を気遣ってくれてたよ、ずっと」
それはそれは幸せそうに笑って言った莉央に香苗はあら?と目を見開き、ニヤニヤと笑った。
「…………ふぅーん、莉央ったらそんな幸せそうな顔しちゃってー」
「え?なんか変!?」
「いやぁ、お兄さん、もしかして莉央の番かもね」
「な!なななな何言ってるの!?」
「………………なんだ、心配する必要無かったね。良かった」
莉央の雰囲気や兄の気遣いがあったと聞き香苗は安心した。
あの状態のΩを見たαがよく我慢できたなと香苗は思う。
それだけで十分な気遣いであるのだ。
「あとさ、これ」
「香水?柑橘系の……」
「兄さんに香苗の話したら、オススメって……僕の事考えてくれたから嬉しかったらしい、ありがとうって渡してだって……ただ、僕とお揃いになるんだけど嫌じゃなかったら」
新しい箱に入った柑橘系の香水。
こんな匂いだよ、と手首を差し出すと香苗はスンスンと匂いを嗅ぐ。
「…………わぁ、やばい。莉央のお兄さんスゴすぎ。ありがとう、アトマイザーのお返しがこんな凄いのなんて……お礼言っといてね」
「良かった気に入ってくれた。言っとくね」
「莉央、絶対お兄さん逃がしちゃだめだよ!」
「………………もー」
2人のΩが顔を近づけ笑い合う衝撃の可愛さにαだけでなくβも未分化も、全てが2人を見ていた。
ゴクリ……と喉を鳴らすα、そして綾人は真っ直ぐに莉央を見ている事に気付き香苗はびくりと体を震わせ莉央の腕を掴む。
「り、莉央……綾人に気を付けてね……莉央が休みの時から綾人あんたの話ずっとしてたから」
青ざめて言う香苗に、莉央は、あ!と声を上げてまた鞄を漁った。
そして笑顔で取り出したのは凶器だ。
「これも兄さんから。香苗のも用意してくれたよ!防犯ブザーと催涙スプレーにスタンガン!ほら、キーホルダータイプの小さいのだから携帯に便利だよって」
これは皆に聞こえるように言いなさいと里美に口酸っぱく言われた為、自己防衛だとクラスメイトに聞こえるように言った。
「あと抑制剤のピルケースだってさ」
「……莉央のお兄さん徹底してるね。私は嬉しいけど」
「もしもの時は遠慮しないで一思いに殺りなさいって言ってたよ」
「殺りなさい、ね」
苦笑して話す香苗に莉央は満足そうに笑ったが、里美を知る綾人は苦虫を噛み潰したような表情をして莉央を見つめていたのだった。
「……里美さんに渡したくない」
ほの暗く呟き親指を噛み締める綾人だったが、里美の鉄壁のガードと、莉央自身が綾人に少しも心を傾けなかった事により、幼い初恋は泡と消え、綾人は暫く泣き暮らすことになるのだった。
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