5 / 9
3日前
しおりを挟む土曜日、何故かぐっすり眠ってしまって目が覚めたのは昼をすぎた時間だった。
今日は両親が休みなのに起こしに来ないなんて珍しい……そう思いながら体を起こすと尋常ではない汗をかいている。
「…………え」
右手を見るとべっしょりしていて、布団もぬれている。
気持ち悪い感触にブルリと震えてベッドから出ると汗がしたたり、下に水溜まりが出来るほどに発汗しているようだ。
「な……なにこれ」
「起きたか?」
「兄さん!?」
「………………ああ、汗をかいてるな。動けるようならシャワーを浴びてくるといい、その間にシーツを変えておくから」
「え……いや、自分でするから」
「いいから、行ってこい」
「うん……」
ジャブジャブのパジャマのままでは床を汚してしまうと、シーツを変え始めた兄の隣でパジャマを脱ぐ莉央。
前は気にしなかったのに、里美が隣にいるだけでただの着替えが何故か恥ずかしい事をしている気になってしまう。
張り付いた服は体の線を見せ、ぷっくりと生理現象で立った乳首も形がしっかりとわかる。
太ももに流れる汗が気持ち悪く濡れていてギクリとしたが、それを脱がなくてはどうしようもない。
恐る恐るズボンを脱ぐと、最低な状態は回避されホッとしたが目の前の兄の広い背中とふわりと香る甘い香りにズクリと下半身が熱くなる。
自分の為にべしょ濡れになったシーツや布団を替えてくれるというのに、そんなことを考える自分が凄く恥ずかしく汚らしく感じた。
(こっちを見てほしい、僕の全部を見て欲しい)
その異常なまでの気持ちの昂りと、兄に向ける感情に戸惑った莉央は脱ぎ捨てた服を濡れたシーツの上に投げ捨て慌てて部屋を出ていったのだった。
「…………莉央?」
慌てて出ていった莉央に里美は振り向くが、そこにはすでに莉央の姿は無くて、うーん、と悩んでからまたシーツを敷き直す。
そして引き出しを開け、真新しい着替えを手にして部屋を出た。
着替えを持ち脱衣場に行くと、むせ返る甘い香りに顔をあげる。
莉央の押し殺したような甘く艶やかな声が小さく浴室に響いていて、里美は思わず口元を手で覆った。
「…………ん…………んぁ……」
「…………………………………………」
「はぁ…………は…………あ……にぃ……さ……」
「……………………」
溢れかえるΩのフェロモンとシャンプーの香りが混ざり合い里美はくらりと目眩を覚える。
抱き締める服を強く握り眉根を寄せると、小さく深呼吸をした。
(…………確定だな)
シャワーの音と、莉央の秘やかな喘ぎを聴き確信した里美はそっと着替えを置く。
少しずつ早まっていく莉央の声を聞き、自分自身の熱も急速に上げられ下唇をはむ。
(不味いな、このままここに居たら莉央の所に押し入りそうだ)
ゆっくりと物音を立てないように里美は細心の注意を払い脱衣所を出ようとするが、一際大きな莉央の声を聞きグッ……と体に力を込める。
(…………くそっ、可愛い声出すな、バカ ……)
火照った体に多少の脱力感を感じつつ、莉央はシャワーを終え脱衣所に来てギクリと体に力が入った。
準備されている着替えを手に持ち、一気に顔が赤く火照る。
「…………ま、まさか…………聞かれ……!……!?」
まだ濡れている全裸のままヘナヘナと床に座り込み服を顔に押し付けて身悶えた。
シャワーを浴びてから3時間が過ぎた。
すでに食事も済ませて部屋でゆっくりしていた莉央は、少しずつ上がりだした発熱となんとも言えない不快感がザワザワと身体中を巡っている。
眉を寄せてソファに座る莉央は、クッションを強く握って耐えようとしていて、すぐ近くには香苗から貰った柑橘類の香りのアトマイザー。
部屋は甘酸っぱい香りで溢れていて多少の落ち着きはあるが、持て余す体は必死に熱を求めている。
性分化が近い未分化の体は、これから新しい性に生まれ変わる為、体の中から変化が始まっていた。
その変化に対応する為、組み変わるからだの負担を少しでも逃がそうと熱が出ているのだ。
これは性分化の数日前から起こる現象で人口の7割程がおきる変体の特徴で、それはαβΩ関係なしに起きる。
兄にもこれは過去起きていて、最初は熱だけだが、不快感はそのうち耐え難い熱を持ち、性分化まで耐えなくてはならないのだ。
以前里美から聞いた熱とは、この耐え難い体の熱も含まれているのかと、今更ながらに納得する。
体の不調によって、本人や家族は第二の性が何に変わるかはある程度想定できる。
変わる性別の状況に近い体の変化が起きるからだ。
αの場合は強い欲を吐き出したくなる性的欲求が強まり、βはさほど変わりは無い。
ただ熱が高くなりやすく、40℃を越し倦怠感があるくらいだ。
そしてΩは、ヒートに近い症状が現れる。
体が火照り触れて欲しい欲求が増すのだ。
体が切なくて仕方ない。
莉央は自分の体の変化に眉を寄せていた。
兄みたいな強いαになる。
兄みたいなかっこいいαになる。
そう思っていたのに、自分の体は真逆に生まれ変わろうとしているのにわかりぞッとした。
「…………やだ…………やだやだ……Ωになんてなりたくない……なりたくないのに…………んぅ…………」
体が火照り下半身がどんどん熱を持つ。
真っ赤になっていく顔をクッションに押し当てて力無くソファに倒れる。
その時に擦れる服の感触にすら体は素直に快感を拾い、そんな情けない自分に涙が流れた。
「………………も、やだ…………」
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる