[完結]サクリファイス~主従の契約

くみたろう

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エピローグ

永遠の愛

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あれから、 何十年たっただろうか。
カーマインは、はぁ…と空を見ながら息を吐き出した。

「……………ベル」

 カーマインはその年老いた手で優しく小瓶を触った。
キラキラと光る砂と共に入っている小さな花。
それを眩しそうに見つめた。
その傍らには、 ベルライナが居なくなるその瞬間まで付けていたベレッタがある。

「あ、 お父さんまだそこにいたの!?体冷えちゃうよ!」

「ああリーサ、 ここは気持ちよくてね」

「わかるけどね」


 窓を開け放ち外の風を体に受けるカーマイン。
その隣には、 大人になったリーサが立っていた。
既に子供を産み、 その子供も先日子供を産んだ。
カーマインはひいおじいちゃんになっているのだ。
リーサは年老いた自分の父親の手を優しくさする。

「…………ねぇ、 本当に無理しないでね。最近体調悪いでしょ?」

「……………ああ」

「……お母さん、 心配するよ」

「そう言われたら無理出来ないな」

小さく笑うカーマインに、 リーサは安心したように笑った。
再婚もしないでただ1人を愛し抜く父親を、 リーサは尊敬し愛している。
だからこそ、 ジーヴスと住むこの家に頻繁に訪れるのだ。

「…………なあリーサ」

「なに?」

「……………………いや、 なんでもない」

「?変なお父さん」

「ママー!」

「はいはい!今行くわ!…………お父さんも中に入ろう?」

「もう少ししたらいくよ」

「絶対よ!?」


 今日はたまたま曾孫を見せに一緒に来ていたリーサの子供に呼ばれて中に入っていく。
そんなリーサの後ろ姿はベルライナによく似ていた。
既にリーサも年老いているのに、 さすが親子なのだろう。
カーマインは目を細めて小瓶を見る。
そして優しく優しく撫でた。

これは、 ベルライナが消えた時に残った砂と花。
それを小瓶に入れて持ち歩いているのだ。








「…………なあベル、 君が最後まで生き抜けと言ったから俺は頑張ったよ。君が居ない絶望の毎日をただ愛しいリーサを育てる為だけに頑張り抜いたよ……君は本当に俺をよく見てるよね、 リーサを任せられる人が現れて安心出来たら俺は君の元に行こうとしていたのに…それすら君は許してくれないんだから









ねえ、 もういいかな。
俺はもう、 十分頑張ったと思うんだ
だからさ、 もう君の所に行ってもいいかな

ねえ、 会いたいんだ
君に触れて、 抱きしめたいんだよ……
こんなじいさんになって君は驚くだろうけど
ねえ………………
もう、 いいだろう?

1人は寂しいよ………………………」


 痩せ細り骨と皮だけになったカーマインの手を宙に伸ばす。
何かにすがりつくように、 ゆっくりと。

 その手を、 温もりが包み込んだ。










「………カーマイン様、 お迎えにあがりました」

「…………ベル」

 カーマインの前に立ち、 その手を握るベルライナ。
ふわりと笑って、 やせ細った頬に手を当てた。

「おひとりにしてしまって申し訳ございません。寂しかったでしょう?」

「……ああ、 寂しかったよ……ベルが居ない日々は……半身がいないポッカリと心に穴が空いたような気持ちで…」

「はい」

「ただただ君に会いたくて…」

「……はい」

「…………ベル……愛してる」

「私も、 愛しています、 カーマイン様」

 椅子から立ち上がったカーマインは、 ベルライナの体を強く抱きしめた。
ベルライナもその背中に腕を回す。

 厚みのある、 以前と変わらないカーマインの体に。


「………リーサをありがとうございます、 いい子に育ってくれてベルは嬉しいです。」

「ああ、 俺達の自慢の娘だ」

「はい」

「………………それじゃあ、 行こうか」

「…………はい、 これからはずっと一緒です」



 手を繋ぐ2人は振り返る、今までカーマインが座っていた椅子に。
そこにはぐったりと座る年老いたカーマインの姿があった。
床にはベルライナの砂と花が入った小瓶が転がっている。

 カーマインはその小瓶に手を伸ばすがそれに触れる事はできなかった。
優しく撫でるように手を動かしたカーマイン、 諦めて顔を上げるとぐったりと座るカーマインの頬にベルライナがキスを送っていた。

「ベル……」

「…………お疲れ様でした、 カーマイン様」

 頬を優しく撫でてから、 今隣にいるカーマインの手を握った。
そして、 微笑むのだ。







これからは、 永遠に一緒だ、 と。







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