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第4章 唯一の宝
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日に日にベルライナの花は開いていく。
それを無駄だと分かっているのに、 カーマインは指先で数回擦る。
消えない、 よね………と自嘲気味に笑いながら。
残り短い3人の時間を無駄にしないように、 出来るだけ同じ時間をすごした。
家でゆっくりしたり、 外に出かけてリーサに刺激を与えたりと楽しそうに動くベルライナにカーマインも次第に微笑む。
「そうだね、 悲しんでいるなんて時間がもったいないね。」
「はい!一緒に生きましょう、 命の火が消えるまで、 いえ、 消えてもベルはずっとカーマイン様と一緒です」
「……うん」
少しでも長く生きたい、 そばに居たい。
「……私を忘れないでください。私の声を、 温もりを…ここにいた事を…忘れないで…」
ベルライナはカーマインにすがりつき口にする。
気丈にしていても、 消えるとわかっていて怖くない人はいない。
震える声で伝え、 震える指先でカーマインの腕を握る。
そんなベルライナを優しく抱きしめ口付けるのは、 花が咲いてから7ヶ月がすぎた頃からだった。
「…………リーサ」
「ん?」
積み木を重ねているリーサは、 ベルライナに呼ばれて振り向いた。
表情がコロコロ変り今は笑っている。
「………リーサはママが好きですか?」
「しゅきー!」
積み木を離し、 ベルライナに抱き着くリーサを抱き上げて頬にキスをした。
キャッキャッと笑うリーサは上機嫌だ。
「ママもリーサが大好きですよ。……リーサ、
忘れないでくださいね、 ママがリーサを大好きよ、 愛してる」
蕾が出てから繰り返し伝えていた大好き、 愛してるという言葉、 その感情。
リーサに全身で伝えるベルライナをリーサはとても大好きだった。
「……………リーサ、 傍に居られなくてごめんなさい。あなたの成長をずっと見ていたかった」
命の火が消える日が近い。
「…………ベル」
「カーマイン様」
「…………………………君は居なくなるんだね………こんなの、 信じられないよ…」
「……………」
座るベルライナの後ろから抱きしめるカーマインの腕に、 ベルライナはそっと手を当てた。
蕾が現れてから約1年、 ベルライナの命の火は消えかかっていた。
リーサはいつも通りにベルライナに抱き着きぐずりながらも眠りに落ちた。
何度も何度も愛していると伝えながら。
小さくリーサもぉ…と言う声を聞きベルライナは泣き笑いをする。
ベッドにそっと寝かせたあと、 カーマインに抱きすくめられた。
「……リーサを産んで2年、 あっという間でした。」
「……そうだね」
「………幸せでした、 本当に永遠に続くのではと錯覚するくらいに」
「……そう、 だね」
ベルライナはカーマインの腕を緩め向かい合った。
眠るリーサ以外いない2人の空間。
寝室のベッドに座る2人は顔を見合わせ微笑んだ。
「……愛してるよ、 ベルライナ」
「…はい、 私も愛しています」
「ベルライナ……君が居なくなるのは寂しいよ」
「……カーマイン様」
「…きっと君以上に愛せる人はいない」
「………………いいんですよ、 カーマイン様。カーマイン様の人生はまだまだここからです。ベルに縛られなくても、 いいんですよ」
「なんだよ、 浮気して欲しいの?」
「そんなこと、 ありません……」
コツリと額を合わせて至近距離で見つめ合う。
カーマインは優しく優しく笑った。
「………リーサの事は大丈夫、 俺がちゃんと育てるから」
「はい……おひとりで無理はなさらないで下さいね」
「ああ………」
「…………………………」
「……………………………………」
もう、 残りの時間は極わずか。
しかし、 2人は言葉が出てこなかった。
口を開いては閉じ、 口を開いては閉じ。
「……………ベル、 ベルライナ………」
「は………んぅ……」
そっと口付けてくるカーマインをベルライナは受け入れ目を閉じた。
「…………カーマイン様、 1つ約束して下さい…」
「なに…………?」
「決して……ご自分で死を選んだりしないでください……最後まで生き抜いてください」
「………ベル」
「……………約束、 です」
「……………わかったよ、 ベルには負けるな」
ぎゅう……とベルライナを抱きしめたカーマイン。
その背中に腕を回したベルライナは幸せそうに笑った。
愛してます、 永遠に………………私のカーマイン様
それを無駄だと分かっているのに、 カーマインは指先で数回擦る。
消えない、 よね………と自嘲気味に笑いながら。
残り短い3人の時間を無駄にしないように、 出来るだけ同じ時間をすごした。
家でゆっくりしたり、 外に出かけてリーサに刺激を与えたりと楽しそうに動くベルライナにカーマインも次第に微笑む。
「そうだね、 悲しんでいるなんて時間がもったいないね。」
「はい!一緒に生きましょう、 命の火が消えるまで、 いえ、 消えてもベルはずっとカーマイン様と一緒です」
「……うん」
少しでも長く生きたい、 そばに居たい。
「……私を忘れないでください。私の声を、 温もりを…ここにいた事を…忘れないで…」
ベルライナはカーマインにすがりつき口にする。
気丈にしていても、 消えるとわかっていて怖くない人はいない。
震える声で伝え、 震える指先でカーマインの腕を握る。
そんなベルライナを優しく抱きしめ口付けるのは、 花が咲いてから7ヶ月がすぎた頃からだった。
「…………リーサ」
「ん?」
積み木を重ねているリーサは、 ベルライナに呼ばれて振り向いた。
表情がコロコロ変り今は笑っている。
「………リーサはママが好きですか?」
「しゅきー!」
積み木を離し、 ベルライナに抱き着くリーサを抱き上げて頬にキスをした。
キャッキャッと笑うリーサは上機嫌だ。
「ママもリーサが大好きですよ。……リーサ、
忘れないでくださいね、 ママがリーサを大好きよ、 愛してる」
蕾が出てから繰り返し伝えていた大好き、 愛してるという言葉、 その感情。
リーサに全身で伝えるベルライナをリーサはとても大好きだった。
「……………リーサ、 傍に居られなくてごめんなさい。あなたの成長をずっと見ていたかった」
命の火が消える日が近い。
「…………ベル」
「カーマイン様」
「…………………………君は居なくなるんだね………こんなの、 信じられないよ…」
「……………」
座るベルライナの後ろから抱きしめるカーマインの腕に、 ベルライナはそっと手を当てた。
蕾が現れてから約1年、 ベルライナの命の火は消えかかっていた。
リーサはいつも通りにベルライナに抱き着きぐずりながらも眠りに落ちた。
何度も何度も愛していると伝えながら。
小さくリーサもぉ…と言う声を聞きベルライナは泣き笑いをする。
ベッドにそっと寝かせたあと、 カーマインに抱きすくめられた。
「……リーサを産んで2年、 あっという間でした。」
「……そうだね」
「………幸せでした、 本当に永遠に続くのではと錯覚するくらいに」
「……そう、 だね」
ベルライナはカーマインの腕を緩め向かい合った。
眠るリーサ以外いない2人の空間。
寝室のベッドに座る2人は顔を見合わせ微笑んだ。
「……愛してるよ、 ベルライナ」
「…はい、 私も愛しています」
「ベルライナ……君が居なくなるのは寂しいよ」
「……カーマイン様」
「…きっと君以上に愛せる人はいない」
「………………いいんですよ、 カーマイン様。カーマイン様の人生はまだまだここからです。ベルに縛られなくても、 いいんですよ」
「なんだよ、 浮気して欲しいの?」
「そんなこと、 ありません……」
コツリと額を合わせて至近距離で見つめ合う。
カーマインは優しく優しく笑った。
「………リーサの事は大丈夫、 俺がちゃんと育てるから」
「はい……おひとりで無理はなさらないで下さいね」
「ああ………」
「…………………………」
「……………………………………」
もう、 残りの時間は極わずか。
しかし、 2人は言葉が出てこなかった。
口を開いては閉じ、 口を開いては閉じ。
「……………ベル、 ベルライナ………」
「は………んぅ……」
そっと口付けてくるカーマインをベルライナは受け入れ目を閉じた。
「…………カーマイン様、 1つ約束して下さい…」
「なに…………?」
「決して……ご自分で死を選んだりしないでください……最後まで生き抜いてください」
「………ベル」
「……………約束、 です」
「……………わかったよ、 ベルには負けるな」
ぎゅう……とベルライナを抱きしめたカーマイン。
その背中に腕を回したベルライナは幸せそうに笑った。
愛してます、 永遠に………………私のカーマイン様
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