[完結]サクリファイス~主従の契約

くみたろう

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第4章 唯一の宝

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「ベル………おはよう」

「………………おはよう……ございます」


 同じベッドで目を覚ました2人。
先に目を覚ましていたのはカーマインで、 静かに眠るベルライナの顔を見つめていた。
目覚めたベルライナに声を掛けたカーマインにベルライナは動かない頭で挨拶を返す。
それにカーマインは幸せそうに笑った。

「………可愛い」

そう言い、 額に口付けをしながら。







 ジーヴス達が帰ってきて4日がたった。
カーマインとベルライナはいつもの日常に戻っている。
いつもと同じ、 それが2人にはこれ以上無いくらいに幸せ。
いや、 全てが同じではない。
ベルライナと気持ちを通じたカーマインはいつも幸せそうに微笑みベルライナを見つめる。
その甘い雰囲気に、 ベルライナは嬉しいが落ち着かず身をよじる。
ふと触れ合う手や、 頬への口付け。
気紛れにするその行為はカーマインの愛しい気持ちがだだ漏れで、 むしろ隠そうともせずベルライナに向けていた。

 それを恥ずかしそうに受け入れるベルライナ。
ただただ幸せだった。








ボーンボーンボーン


「………誰かきたね」

「見て参ります」

 ソファに座るベルライナの膝に頭を乗せて話をしていたカーマインは、 インターホンに反応する。
頭を撫でていたベルライナはカーマインに一言断ると、 うんよろしく、 と言って座り直した。


「大変お待たせ致しました…………クーフェン様!?」

玄関の扉を開けたベルライナが見たのは土下座しているクーフェンだった。
しゃがみこみクーフェンの肩に手をあてると、 そのままの姿勢で話し出した。

「ベルちゃん、 あの時は本当にごめん!気が動転していたとはいえ本当に酷いことを言った!帰ってきたことに心から良かったって思ってるよ、 でもサテライトが居なかったからあんな言葉が出てしまった……」

 謝るクーフェン。
カーマインも玄関に出てきてその様子を見る。

「本心ではないにしても、 あの瞬間ちょっとでもその気持ちがあったのかもしれない。でも!私はサテラが大好きだけど、 ベルちゃんも大好きなんだ!…………………ごめん、 ただの言い訳だ。怒ってるよな、 あんな事を言った私を…許してくれとは言えないけど……どうしても謝りたかったんだ。…………ごめんなさい!!」

 頭をあげることなく謝り続けるクーフェン。
きっと自責の念にも悩まされたのだろう。
ベルライナはカーマインを見ると優しく頷いていた。
土下座をするクーフェンの前に座り、 手を握る。

「クーフェン様、 私は怒ってなどいません。どうか立ってください。ほら、 体が冷え切ってしまっています、 暖かいお茶で体を温めましょう。………………サテラも心配してしまいますよ」

「……………ありがとう」

  サテラなら呆れてしまうかもしれないよ…と頭を上げながら力なく答えた。
泣き腫らしたボロボロのやつれた表情、 顔色もわるい。
更に痩せたようだ。

「………クーフェン、 ご飯は食べてるの?」

「え?………あー……いや、 えっと……だな」

「……………ベル」

「はい、 すぐに」

クーフェンは目を泳がせながら言うが、 カーマインはすぐにベルライナに声をかけた。
微笑み頷くベルライナはすぐにキッチンへと向かう。
そんなベルライナを、 カーマインは愛おしいと一瞬で分かるような表情で見つめていた。

「…………君たち……」

「ん?」

「……………いや、 なんでもない」

「ほら、 立ってクーフェン。中に入ろう」

「うん」

カーマインはクーフェンの腕をつかみ立ち上がる。
そして、 以前よりも細くなったクーフェンを見てカーマインは

「…………お前、 小枝なみだね」

「失敬な、 丸太なみだよ」

「丸太に失礼だろ」

そう言いながら家に入って行った。


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