[完結]サクリファイス~主従の契約

くみたろう

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第1章 リアルドとジーヴス

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「…………繁殖か」

椅子に深く座り呟くカーマイン。
ベルライナはそんなカーマインを静かに見つめた。

「ん?ああ違うよ。最近こんな話が多いなって思ってね」

手招きしながらカーマインが言う。
それに従い近付き手に触れるベルライナを促すように隣に座らせた。

「この間のアイリス様も番の話をされましたね」

「適齢期はわかるけど、 こうも一斉に動くかな」

あー…と声を出しながらベルライナの膝に頭を置くようにズルズルと倒れ込む。
ふにふにと柔らかい膝に頭を預けたカーマインはベルライナを見上げた。

「しかも店だよ?ローズがなんだか可哀想になるよ」

「……私たちジーヴスの中でも店にいいイメージはありません」

「そうだよね」


店とは、 ジーヴスが子を成すためだけに存在する場所、 宿り子店。
通称、 店と呼ばれる場所だ。
通常ジーヴスに結婚の概念がない為、 子を成す事に愛情は含まれない。
しかし、 番というものがある。
リアルドが持つジーヴス同士を引き合わせ番にさせて子を宿すこと。
そんなジーヴス達を番と呼ぶ。

この番システムには擦り合わせが必要不可欠である。

女性のジーヴスに負担が多くかかる為、 妊娠中どうやって助け合うか。
妊娠期間中手助けがあるなら給付の分け方はどうするか。

等だ。
全てがリアルドの意志により決定する番システムは、 何かと決め事が多い。
リアルド同士が結婚、 または付き合っている等であるならば、 さほど問題はない。
男のジーヴスがその分補う為だ。

だが、 番の為だけに知り合ったリアルド達は損得を考える。
だからこそ、 ジーヴスを店に連れていくリアルドが年々増えていった。

それくらい面倒と捉えられる番システムだが、 店で適当に宛てがわれたジーヴス寄りも、 自ら選び何度も会話を交えて決めたジーヴスの方が性能の良いジーヴスが産まれるのだ。
だからこそ、 番システムはいつまでもなくなることはない。

そして店とは、 番を持たないジーヴスの繁殖を手伝う場所である。
適当に選ばれたジーヴスと、 ただ子を宿すだけの場所。

ここ、 宿り子店のジーヴスはセリで売れ残り15歳になったジーヴスが連れてこられる場所だ。
物好きのリアルドが、 取り替えるとセリに訪れジーヴスを置いていく人も居る。
そんなジーヴスも宿り子店に運ばれる。
既に他のリアルドに教育が施されていて買い手がつかない為だ。

ジーヴスは13歳を過ぎると買い手が一気に減る。
だから、 12の歳になり買われないベルライナは絶望したものだ。
1度入ったら生涯を終えるまで何度も何度も子を成し続けないといけない、 そんな場所に入る可能性がある。絶望しかないだろう。
男のジーヴスはあまり体に負担は無いが、
女のジーヴスは最後にはボロボロの肉体、 精神状態になるまで働き続ける。

そんなジーヴスが収容されている宿り子店に適齢期のローズが連れていかれ次世代の為に腹に子を宿した。
あの体調不良は妊娠したことによる副産物である。

「………宿り子の店は、 嫌です」

「連れて行ったりしないよ。変な心配をする子だね」

手を伸ばし茶色のサラサラの髪を優しく撫でたカーマイン。
そして、 これからバタバタした毎日が始まるのか、 と息を吐くのだった。
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