1 / 1
思い出の中に
しおりを挟む
ガチャ
「……ただいまー。」
何か返ってくるわけではないのに、必ず言ってしまう。
僕は、ため息をつきつつ、携帯を取り出しながら、荷物を下ろし、ソファーに腰を掛けた。
(特に連絡なし…か。)
携帯を置き、冷蔵庫を漁りにキッチンへ
特に何も無いので、お茶を1杯コップに注ぐ。
ゴクリッ
♫~(着信音)
相手は分かっている。
パタパタと足早に音の鳴る方へ向かう。
素早く持ち上げ、画面をみる。
やはり、見覚えのある名前。親友だ。
「もしもしー。どうしたー?」
「うん、そっかそっか、お疲れー。おー、こっちは、さっき……」
ーーーーーーーーーーーーー
「ん?あー、高校の時の?あんまり覚えてないなー。そうだっけ?」
ザザ、ザザザ
嫌な音がした。
「…………もしもーし??」
応答は、ない。電波の悪いところにでもいるのだろうか。
いや、ありえない。
お互い家にいる。
しかも今は、無線LANというものでWi-Fiをビュンビュン飛ばしているのだ。
とりあえず一度かけ直そう。そう思い耳から小さな箱を退ける。
タップして画面をみる。
なるほど、飛んでいるはずのやつらを捕まえられなくなったらしい。
トラブルだろうか。まあ、なんでもいい。そのうち復活するはずだ。
僕は以前、家で圏外になることなど、普通のことのように何度も起こった。その時は、携帯が古くなっていたせいだった。
今回も同じ様な類だろう。
………いやいや、それは違う。僕の携帯は先日購入したばかりの新品だ。そんなことはありえない。
新品で不備が生じてはショックが大き過ぎる。
頭を抱えながら、携帯を見ていると
ふと、聞き慣れた騒がしい話し声がどこからかしてきた。
外には、誰もいない。テレビも付けていなかった。
声の聞こえるところを探すと携帯がある。
幻聴だろうか……
ザザ、ザザザ
さっきと同じ音。その音を聴きながら意識が遠のく
ザワザワ話す声が大きくなってきた。ゆっくりと目を開けてみると、懐かしい風景が広がっていた。高校卒業前まで見ていた景色だ。振り返りよく見れば制服を着ている。
さっきまで電話していたはずの親友も。
「なんの話ししてたっけ?」
僕は何故か、そう言った。
「席替えの話だよ?」
どうやら僕が今座っている席の前の席の話、つまりは、『席替えをする前の席』について話をしているようだ。
なぜそんな話しを始めたのかについては、触れないでほしい。
おそらく、特になんの理由もないだろうから。
僕は、戸惑いながらも僕らを2人を抜いた、36人を1人1人座らせていくことにした。顔と名前が一致しない人や、顔すら出てこない人もいた。
僕は、かなり楽しんでいた。
思い出の引き出しを開けて出して閉まってを繰り返し、徐々に埋まっていく席を見るのは心地が良い。
時間を掛けてクラス全員を座らせた。
僕は、思わず、喜びの声を上げた。
電話を耳に当てペンを持ち、同級生の名前で埋まった紙の中の小さな四角を眺めながら。
電話口から親友の声がしてきた。
「あれー?なんの話だっけ?」
「なんか、人がいっぱい居たような…寝てたのかな??」
僕は、少し笑いながら
「席替えの話」
と、だけ答えた。
久しぶりの電話。
もう、2時間を過ぎている。
あっという間だ。
そろそろ、終わるかと思ったが、次は高校卒業前の席について話すようだ。就寝が何時になることやら。だが、悪い気はしない。むしろ、ワクワクしている。
僕らの話が尽きることはない。
ーーーーーおわりーーーーー
「……ただいまー。」
何か返ってくるわけではないのに、必ず言ってしまう。
僕は、ため息をつきつつ、携帯を取り出しながら、荷物を下ろし、ソファーに腰を掛けた。
(特に連絡なし…か。)
携帯を置き、冷蔵庫を漁りにキッチンへ
特に何も無いので、お茶を1杯コップに注ぐ。
ゴクリッ
♫~(着信音)
相手は分かっている。
パタパタと足早に音の鳴る方へ向かう。
素早く持ち上げ、画面をみる。
やはり、見覚えのある名前。親友だ。
「もしもしー。どうしたー?」
「うん、そっかそっか、お疲れー。おー、こっちは、さっき……」
ーーーーーーーーーーーーー
「ん?あー、高校の時の?あんまり覚えてないなー。そうだっけ?」
ザザ、ザザザ
嫌な音がした。
「…………もしもーし??」
応答は、ない。電波の悪いところにでもいるのだろうか。
いや、ありえない。
お互い家にいる。
しかも今は、無線LANというものでWi-Fiをビュンビュン飛ばしているのだ。
とりあえず一度かけ直そう。そう思い耳から小さな箱を退ける。
タップして画面をみる。
なるほど、飛んでいるはずのやつらを捕まえられなくなったらしい。
トラブルだろうか。まあ、なんでもいい。そのうち復活するはずだ。
僕は以前、家で圏外になることなど、普通のことのように何度も起こった。その時は、携帯が古くなっていたせいだった。
今回も同じ様な類だろう。
………いやいや、それは違う。僕の携帯は先日購入したばかりの新品だ。そんなことはありえない。
新品で不備が生じてはショックが大き過ぎる。
頭を抱えながら、携帯を見ていると
ふと、聞き慣れた騒がしい話し声がどこからかしてきた。
外には、誰もいない。テレビも付けていなかった。
声の聞こえるところを探すと携帯がある。
幻聴だろうか……
ザザ、ザザザ
さっきと同じ音。その音を聴きながら意識が遠のく
ザワザワ話す声が大きくなってきた。ゆっくりと目を開けてみると、懐かしい風景が広がっていた。高校卒業前まで見ていた景色だ。振り返りよく見れば制服を着ている。
さっきまで電話していたはずの親友も。
「なんの話ししてたっけ?」
僕は何故か、そう言った。
「席替えの話だよ?」
どうやら僕が今座っている席の前の席の話、つまりは、『席替えをする前の席』について話をしているようだ。
なぜそんな話しを始めたのかについては、触れないでほしい。
おそらく、特になんの理由もないだろうから。
僕は、戸惑いながらも僕らを2人を抜いた、36人を1人1人座らせていくことにした。顔と名前が一致しない人や、顔すら出てこない人もいた。
僕は、かなり楽しんでいた。
思い出の引き出しを開けて出して閉まってを繰り返し、徐々に埋まっていく席を見るのは心地が良い。
時間を掛けてクラス全員を座らせた。
僕は、思わず、喜びの声を上げた。
電話を耳に当てペンを持ち、同級生の名前で埋まった紙の中の小さな四角を眺めながら。
電話口から親友の声がしてきた。
「あれー?なんの話だっけ?」
「なんか、人がいっぱい居たような…寝てたのかな??」
僕は、少し笑いながら
「席替えの話」
と、だけ答えた。
久しぶりの電話。
もう、2時間を過ぎている。
あっという間だ。
そろそろ、終わるかと思ったが、次は高校卒業前の席について話すようだ。就寝が何時になることやら。だが、悪い気はしない。むしろ、ワクワクしている。
僕らの話が尽きることはない。
ーーーーーおわりーーーーー
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。
よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。



魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる