異世界ラーメン屋台～俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい～

四杯目 火竜討伐

最終話 ラーメン屋、異世界で平和に暮らす

■ヴァルディール　ラーメンの館

　屋敷のブラウニーを何とかしてから数か月がたち、気づけば俺が異世界に来て一年がたっていた。
　今ではヴァルディールの屋敷に居を構えて、ザビーネを嫁に迎えて暮らしている。

「あっちの世界では考えられない状態だなぁ……」

　庭にあるハンモックで揺れながら俺は一年間のことを振り返っていた。
　急にダンジョンに出て来たかと思えば、提供したラーメンで冒険者が強くなり、その噂でもって夜市にも参加して、領主様にもよばれもする。

「どうしたんだい？」
「いや、今までのことを思い返していた」
「あたしとの出会いもかい？」

　ザビーネが寝ている俺にゆっくり近づきながら話しかけてきた。
　彼女のお腹は大きく膨らんでおり、俺の子供がいることを示している。

「ああ、幸せな一年だったなとな」
「あたしも幸せだよ。娼婦だったのに、こうして女の喜びを感じさせてくれたのだからさ」

　ザビーネが俺の手を取り、膨らんでいるお腹にあてると動いているのか振動が伝わってきた。
　向こうの世界では結婚とか考えられなかったのに、異世界に来て美人の嫁ができ子供まで生まれようとしている。

「おーい、タケシ。３時のおやつの時間じゃぞ」
「あいよ、今から作るから待っててくれ」

　そして、実子ではないものの可愛い娘のような存在もいてくれるので、俺の人生は悪くないほうに流れていた。
　クレープ用のキッチンカーを庭に召喚し、ヴァニラに対して作ってやる。
　そうしていると、来客がタイミングよくやってきた。

「タケシ様、クレープを作っているのですね。わたくしもいただきたいですわ」
「エリス様だけはずるいわ、私も食べさせてくれるわよね？」
「いただくっスよー」

　領主の娘のエリスにダンジョンでお世話になったAランク冒険者パーティの夜鴉の面々など、今日も俺の屋敷は千客万来だ。
　こんな平和な一日がいつまでも続くといいな……。

　異世界ラーメン屋台～俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい～　完