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四杯目 火竜討伐
第4話 ラーメン屋、火竜の胃袋を掴む
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■火山のふもと
落ち着いた火竜を冒険者達が囲んでいる。
皆、その表情は不安げだ。
「大丈夫だ。こっちが攻撃しなけりゃ手出しはしてこない」
『まぁ、あんなに甘いものは初めてじゃったからのぉ。ワラワの慈悲に感謝するのじゃ』
「……という風に言っている」
俺しかわからないドラゴン語を通訳しながら、冒険者達を説得した。
ともかく、この姿じゃ威圧的だから何とかしてもらいたい……こういう場合、ヒト化できたりするのが定番なんだが、どうだろう?
「なぁ、お前の今の図体じゃ食わせられない珍しい食べ物もあったりするんだが、人間の姿になったりできないのか?」
『ふむ、ワラワほどの竜であれば造作もないことなのじゃ……どれっ』
びゅうぅぅと竜巻が火竜の足元から起きたかと思と、そこには小学生くらいの女の子が立っていた。
髪は炎のように赤く、目は大きくて瞳が金色に輝いている。
頭には小さな角が二本生えていて、尻尾もお尻のあたりから伸びている。
服装はピンクのチャイナドレスをまとっていた。
スリットからは白い足がでているものの、胸のふくらみは年相当に膨らみかけといった様子である。
美少女ではあるものの、まとっているオーラというべきものはドラゴンらしい強いものだった。
「おー、存外可愛いじゃないか」
「これでもワラワは貴様ら人間よりは年上じゃぞ。敬うのじゃ」
えへんと胸を張るが威厳というよりも背伸びしている感が強い。
「じゃあ、早速……ラーメンをごちそうするぞ」
「『らぁめん』とは昔の〈異邦人〉が食べたいと言っておった奴じゃな。」
「お、じゃあ本物を食べるのは初めてか。今はフレイムホッグチャーシューのチャーシュー麺が人気だぞ」
俺がキッチンカーで調理を行い、ドラゴン幼女に渡す。
「いい匂いじゃなぁ。この匂いにつられてワラワは外に出て探しておったんじゃ」
「じゃあ、下の方の野営地で作っていたときか……どんだけ鼻がいいんだよ……」
「山の魔物は食い飽きておったんじゃ、仕方なかろう……うむ、美味い!」
火竜が火山から外に出ていた理由にもわかり、俺はやれやれと肩をすくめた。
「おいおい、報告を受けたんだがこのお嬢ちゃんが火竜だってのか?」
「さっきまでは竜の姿だったんだが、ラーメンを食べるためこの姿になってもらってる」
火竜の巣の方へ降りて行ったアルヴィンが戻ってきて、俺に訪ねてくる。
俺は現状と、その他いろいろとさっき聞いた話も混ぜて伝えた。
どうするのかはアルヴィン次第だが、殺し合いだけは避けてほしい。
「カエダマじゃったか? 早く寄こすのじゃ!」
「あいよ、気に入ってくれたようで何よりだ」
「長年食べたいと思っておったからのぉ。ワラワは美食家じゃから珍しい食べ物には目がないのじゃ。あの甘いのもくれ!」
「チュロスもだな。合わせて用意するよ。ほら、替え玉だ。じゃあさ、これからはたまにこっちのほうに来てやるからフレイムホッグを乱獲したり、バーナムをおびえさせたりしないでくれるか?」
ラーメンを食べていて交渉が成り立つようになってきたところを見計らって、目の前のドラゴン幼女に条件を提示する。
これでうまくいってくれりゃあ万々歳だ。
「ヒトの姿であれば街に行けるのならば、ワラワは街で暮らしてもよいぞ? 二百年くらい人里に降りてなかったから、どんな料理が生まれているのか楽しみなのじゃ」
「そ、そうか……」
「じゃあ、タケシに任せるな。いっそ、ヴァルディールに家もつか? ドラゴンをどうにかした功績で俺が管理しているところをやってもいいぞ?」
肩をグッと掴んでアルヴィンは言ってくる。
やってもいいぞと言っているが、これはやれという命令に近いものだ。
会社員時代に嫌というほど味わってきた空気なので、俺でもわかる。
「じゃあ、そういうことで……庭が広いとキッチンカー出せるんで、そこはお願いします。こいつも竜になって寝たりしたいだろうし」
「おお、なかなかわかっておるではないか。ワラワはお主が気に入ったのじゃ。名乗ってなかったの、火竜族の姫であるヴァニラじゃ。今後ともよろしくなのじゃ」
笑顔を向ける無邪気な火竜……よりにもよってお姫様に気に入られてしまった。
まぁ、何とかなるだろう!
自分でもわからない流れの時は身を任せるだけだ。
「チュロス! チュロスをよこすのじゃ!」
「はいはい、今用意するから待っていてくれ。アルヴィン達もラーメンくってくか?」
「ああ、そうさせてもらおう」
肩透かしを食らったような感じになったが、平和的に解決できるのが一番だよ。
落ち着いた火竜を冒険者達が囲んでいる。
皆、その表情は不安げだ。
「大丈夫だ。こっちが攻撃しなけりゃ手出しはしてこない」
『まぁ、あんなに甘いものは初めてじゃったからのぉ。ワラワの慈悲に感謝するのじゃ』
「……という風に言っている」
俺しかわからないドラゴン語を通訳しながら、冒険者達を説得した。
ともかく、この姿じゃ威圧的だから何とかしてもらいたい……こういう場合、ヒト化できたりするのが定番なんだが、どうだろう?
「なぁ、お前の今の図体じゃ食わせられない珍しい食べ物もあったりするんだが、人間の姿になったりできないのか?」
『ふむ、ワラワほどの竜であれば造作もないことなのじゃ……どれっ』
びゅうぅぅと竜巻が火竜の足元から起きたかと思と、そこには小学生くらいの女の子が立っていた。
髪は炎のように赤く、目は大きくて瞳が金色に輝いている。
頭には小さな角が二本生えていて、尻尾もお尻のあたりから伸びている。
服装はピンクのチャイナドレスをまとっていた。
スリットからは白い足がでているものの、胸のふくらみは年相当に膨らみかけといった様子である。
美少女ではあるものの、まとっているオーラというべきものはドラゴンらしい強いものだった。
「おー、存外可愛いじゃないか」
「これでもワラワは貴様ら人間よりは年上じゃぞ。敬うのじゃ」
えへんと胸を張るが威厳というよりも背伸びしている感が強い。
「じゃあ、早速……ラーメンをごちそうするぞ」
「『らぁめん』とは昔の〈異邦人〉が食べたいと言っておった奴じゃな。」
「お、じゃあ本物を食べるのは初めてか。今はフレイムホッグチャーシューのチャーシュー麺が人気だぞ」
俺がキッチンカーで調理を行い、ドラゴン幼女に渡す。
「いい匂いじゃなぁ。この匂いにつられてワラワは外に出て探しておったんじゃ」
「じゃあ、下の方の野営地で作っていたときか……どんだけ鼻がいいんだよ……」
「山の魔物は食い飽きておったんじゃ、仕方なかろう……うむ、美味い!」
火竜が火山から外に出ていた理由にもわかり、俺はやれやれと肩をすくめた。
「おいおい、報告を受けたんだがこのお嬢ちゃんが火竜だってのか?」
「さっきまでは竜の姿だったんだが、ラーメンを食べるためこの姿になってもらってる」
火竜の巣の方へ降りて行ったアルヴィンが戻ってきて、俺に訪ねてくる。
俺は現状と、その他いろいろとさっき聞いた話も混ぜて伝えた。
どうするのかはアルヴィン次第だが、殺し合いだけは避けてほしい。
「カエダマじゃったか? 早く寄こすのじゃ!」
「あいよ、気に入ってくれたようで何よりだ」
「長年食べたいと思っておったからのぉ。ワラワは美食家じゃから珍しい食べ物には目がないのじゃ。あの甘いのもくれ!」
「チュロスもだな。合わせて用意するよ。ほら、替え玉だ。じゃあさ、これからはたまにこっちのほうに来てやるからフレイムホッグを乱獲したり、バーナムをおびえさせたりしないでくれるか?」
ラーメンを食べていて交渉が成り立つようになってきたところを見計らって、目の前のドラゴン幼女に条件を提示する。
これでうまくいってくれりゃあ万々歳だ。
「ヒトの姿であれば街に行けるのならば、ワラワは街で暮らしてもよいぞ? 二百年くらい人里に降りてなかったから、どんな料理が生まれているのか楽しみなのじゃ」
「そ、そうか……」
「じゃあ、タケシに任せるな。いっそ、ヴァルディールに家もつか? ドラゴンをどうにかした功績で俺が管理しているところをやってもいいぞ?」
肩をグッと掴んでアルヴィンは言ってくる。
やってもいいぞと言っているが、これはやれという命令に近いものだ。
会社員時代に嫌というほど味わってきた空気なので、俺でもわかる。
「じゃあ、そういうことで……庭が広いとキッチンカー出せるんで、そこはお願いします。こいつも竜になって寝たりしたいだろうし」
「おお、なかなかわかっておるではないか。ワラワはお主が気に入ったのじゃ。名乗ってなかったの、火竜族の姫であるヴァニラじゃ。今後ともよろしくなのじゃ」
笑顔を向ける無邪気な火竜……よりにもよってお姫様に気に入られてしまった。
まぁ、何とかなるだろう!
自分でもわからない流れの時は身を任せるだけだ。
「チュロス! チュロスをよこすのじゃ!」
「はいはい、今用意するから待っていてくれ。アルヴィン達もラーメンくってくか?」
「ああ、そうさせてもらおう」
肩透かしを食らったような感じになったが、平和的に解決できるのが一番だよ。
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