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三杯目 疲れた体にガッツリチャーシュー麺
第10話 ラーメン屋、高級娼館で朝を迎える
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■月光楼 ザビーネの部屋
朝日が入らない薄暗い部屋で俺は目を覚ました。
見知らぬベッドで寝ていたことに気づき、起き上がろうとしたら隣には寝息を立てるザビーネの姿がある。
この世界に来てからは初めての、向こうの世界も併せれば半年くらいぶりに人のぬくもりを感じた夜を思い出した。
「そうか、ノリで金払ってやっちゃったんだったな……久しぶりだったから、だいぶ燃えた」
タバコを吹かすと格好がつくのだが、料理人は舌が命なので俺はタバコをやっていない。
もちろん、この異世界のタバコが向こうの世界のタバコと同じものとも限らないんだが……。
銀色の髪を持ち子供のように無邪気な顔で寝ている女をゆすって起こした。
「おい、頼むから起きてくれ。延長料金はさすがに困るぞ」
「んぅ……悪いねぇ、久しぶりに気持ちよく寝られたもんだからさ」
ザビーネは起き上がり、シーツで胸元を覆うと窓の方へと歩いていく。
俺は全裸のままでザビーネの後についていき、一緒に窓を覗けばヴァルディールの綺麗な街並みが広がっていた。
夜は早く寝るのがこの街の大半であり、明りがともっているのはダンジョンの周辺くらいである。
「街はこんなにも大きかったんだな……」
「ああ、大きな街さ。その中で一人一人一生懸命に生きている。私も、そして、貴方もね。軽い朝食を持ってこさせるわ。サービスだから安心して」
ザビーネがベルを鳴らすと、廊下で待機していたのだろうか、小さな女の子がドアを軽く開けて部屋を覗いてきた。
「朝食を2つ用意してもらってね。あと、お客様がでていったら部屋の片づけと私の湯あみの手伝いも頼むわ」
ザビーネの指示を受けた女の子は軽くお辞儀をした後、去っていく。
「冒険者が集められているな、昨日の今日だが動きが早い。さすが領主か」
「なんか大きな討伐でもするのかい?」
「ああ、火山地帯へ火竜を倒しにいくんだ。俺も後方支援要員となるがいくことになっている」
素っ裸なのも何なので、着替えながら朝食の到着を待っているとザビーネはうつむき、綺麗な顔を曇らせた。
どう声をかけようか迷っていると女の子が朝食を持ってきたので一緒に食べる。
しかし、先ほどと同じくうつむいたままなので、声のかけ方がわからなかった。
(彼女も、嫁もいたことがほとんどない俺に美女をどうこうするなんて、無理だ)
無言のまま朝食を食べえると、俺は部屋を後にしようとドアに近づいた。
トスンという軽い音がして、俺の背中に柔らかなふくらみが当たっているのを感じる。
「必ず、帰ってきてほしい」
「大丈夫だ、さっきも言ったが冒険者ランクの低い俺が前線に出たって役に立たないさ、後方で炊き出しとかやるだけだから安心してくれ」
若干情けないことを言っているかもしれないが、俺は異世界で強くなった覚えは全くない。
油断してやられるのだけはゴメンなので、安全マージンだけは確保していた。
「わかった、また【トリパイタンラーメン】食べたいからね」
「美容に効く、鳥だしのスープならここにある」
俺は〈アイテムボックス〉から鍋さら眠らせていたスープをザビーネの部屋に置く。
「も、もう! あんたって人はさぁ! こう、その……もういいよ。いって来なよ」
鍋のことについていろいろ言いたかったようだが、言葉にするのを諦めたザビーネはぎゅっと一度抱きしめてから離れた。
「ああ、いってきます」
夜鴉のホームでは何度も言っていたセリフだったが、今日は不思議と大切な言葉になった気がする。
朝日が入らない薄暗い部屋で俺は目を覚ました。
見知らぬベッドで寝ていたことに気づき、起き上がろうとしたら隣には寝息を立てるザビーネの姿がある。
この世界に来てからは初めての、向こうの世界も併せれば半年くらいぶりに人のぬくもりを感じた夜を思い出した。
「そうか、ノリで金払ってやっちゃったんだったな……久しぶりだったから、だいぶ燃えた」
タバコを吹かすと格好がつくのだが、料理人は舌が命なので俺はタバコをやっていない。
もちろん、この異世界のタバコが向こうの世界のタバコと同じものとも限らないんだが……。
銀色の髪を持ち子供のように無邪気な顔で寝ている女をゆすって起こした。
「おい、頼むから起きてくれ。延長料金はさすがに困るぞ」
「んぅ……悪いねぇ、久しぶりに気持ちよく寝られたもんだからさ」
ザビーネは起き上がり、シーツで胸元を覆うと窓の方へと歩いていく。
俺は全裸のままでザビーネの後についていき、一緒に窓を覗けばヴァルディールの綺麗な街並みが広がっていた。
夜は早く寝るのがこの街の大半であり、明りがともっているのはダンジョンの周辺くらいである。
「街はこんなにも大きかったんだな……」
「ああ、大きな街さ。その中で一人一人一生懸命に生きている。私も、そして、貴方もね。軽い朝食を持ってこさせるわ。サービスだから安心して」
ザビーネがベルを鳴らすと、廊下で待機していたのだろうか、小さな女の子がドアを軽く開けて部屋を覗いてきた。
「朝食を2つ用意してもらってね。あと、お客様がでていったら部屋の片づけと私の湯あみの手伝いも頼むわ」
ザビーネの指示を受けた女の子は軽くお辞儀をした後、去っていく。
「冒険者が集められているな、昨日の今日だが動きが早い。さすが領主か」
「なんか大きな討伐でもするのかい?」
「ああ、火山地帯へ火竜を倒しにいくんだ。俺も後方支援要員となるがいくことになっている」
素っ裸なのも何なので、着替えながら朝食の到着を待っているとザビーネはうつむき、綺麗な顔を曇らせた。
どう声をかけようか迷っていると女の子が朝食を持ってきたので一緒に食べる。
しかし、先ほどと同じくうつむいたままなので、声のかけ方がわからなかった。
(彼女も、嫁もいたことがほとんどない俺に美女をどうこうするなんて、無理だ)
無言のまま朝食を食べえると、俺は部屋を後にしようとドアに近づいた。
トスンという軽い音がして、俺の背中に柔らかなふくらみが当たっているのを感じる。
「必ず、帰ってきてほしい」
「大丈夫だ、さっきも言ったが冒険者ランクの低い俺が前線に出たって役に立たないさ、後方で炊き出しとかやるだけだから安心してくれ」
若干情けないことを言っているかもしれないが、俺は異世界で強くなった覚えは全くない。
油断してやられるのだけはゴメンなので、安全マージンだけは確保していた。
「わかった、また【トリパイタンラーメン】食べたいからね」
「美容に効く、鳥だしのスープならここにある」
俺は〈アイテムボックス〉から鍋さら眠らせていたスープをザビーネの部屋に置く。
「も、もう! あんたって人はさぁ! こう、その……もういいよ。いって来なよ」
鍋のことについていろいろ言いたかったようだが、言葉にするのを諦めたザビーネはぎゅっと一度抱きしめてから離れた。
「ああ、いってきます」
夜鴉のホームでは何度も言っていたセリフだったが、今日は不思議と大切な言葉になった気がする。
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