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三杯目 疲れた体にガッツリチャーシュー麺

第9話 ラーメン屋、ドラゴン退治を相談する

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■ヴァルディールの館 応接室

 俺達は街へ一度帰ってきた。
 村人がラーメンを名残惜しそうにしていたのが印象的だった。
 急ぎ領主の館にも行って、エリスとメアリーともお別れをしなければならない。
 商業ギルドにも寄ってきて、処理もしてきた。

「アルヴィン様、救援物資の依頼済ませてきました」
「お父様~、長らく離れていまして申し訳ございませんでしたわ」
「いろいろとございまして、帰りが遅くなりました。ただ、不自由なく過ごさせていただいております」
「そうはいっても、疲れているだろう? エリスとメアリーも風呂に入ってきなさい」

 俺が挨拶をすると、後ろからエリスとメアリーが挨拶にでてくる。
 出迎えたアルヴィンは二人を風呂に追いやってから、俺とゆっくり話しをするように椅子に座った。
 俺も椅子に座って、本来の伝えるべき情報を話はじめる。

「村が襲われた原因ですが、結論でいうと火山地帯に眠る火竜でした」
「火竜かぁ……厄介だなぁ……」
 
 椅子に深く腰掛けたアルヴィンはため息を大きくついた。
 元冒険者であり、火竜というものがどれだけ脅威なのかわかっている。

「よし、街を上げて対応をしよう。こっちまで被害がでることだけは防がなくてはいけないからな」
「すまないが頼む。報告も終わったから、俺はこれで……」
「まぁまぁまぁ、エリスもかえって来たから一緒に食事をしようじゃないか」

 立ち上がって去ろうとしたとき、アルヴィンが俺の手を引っ張って止めてきた。
 確かに、お昼を食べていないのでいい時間ともいえる。
 
「じゃあ、ご同伴にあずかります」
「おう、そうしていけ」

 ニイッと笑うアルヴィンの真意は俺にはわからなかった。

■ヴァルディール 街中

 昼食と共に、雑談をしてお茶をごちそうになりつつも鶏皮ラーメンを食べる庭園パーティをまた開きたいという要望も貰ってから館を後にした。
 街中はいまだ平和だが、冒険者ギルドはドラゴンの情報で対応に追われているだろう。

「俺はどうしたものか……〈アイテムボックス〉があるから、また物資輸送に利用されそうではあるんだよなぁ……」
 
 街をゆっくり歩きながら、俺は一人呟いていると背後から声がかかる。

「ちょっとお兄さん、遊ばない?」
「キャッチなんて、いつぶり……って、ザビーネだったか?」
「私が名刺を渡したにもかかわらず、1週間以上放置されたのは初めてだよ」
「すまん、ちょっといろいろ忙しくてなぁ……」

 美女に顔を覚えられているのは嬉しいが、会いに行けなかったことを責められているようでバツが悪い。

「別に責めちゃいないよ。ただ、寂しかったのは事実さ」

 ゆっくりしなだれかかって胸を押し付けてくるザビーネに俺の心臓は早鐘をうった。
 女としての魅力があることを自分でわかっていながら、やってくる大人の女のやり方である。

「わかった……ちょうど依頼の報酬も貰ったからいけなくはない、か?」
「足りなくなってもツケもできるから、安心しなよ」

 ザビーネは妖艶にほほ笑むと、周囲の男たちの視線を集めながら俺を連れて高台の上の高級娼館【月光楼】へと連れていった。
 その後のことはわかるだろ?
 一晩楽しませてもらったよ、かなり久しぶりだったけどな!
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