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三杯目 疲れた体にガッツリチャーシュー麺

第6話 ラーメン屋、村の癒しになる

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■フェルハイム村

 翌朝、俺達はフェルハイム村に入った。
 村を守っていた柵はボロボロで、モンスターの襲撃を受けたという生々しさを感じる。

「こいつは酷いな……」
「かなりの集団のようですね。安全であるといいのですが……」
「最悪、このキッチンカーの中にいれば安全だ。破壊不可能の能力があるんでな」
「それはすごいですわ! タケシ様のキッチンカーがわたくしも欲しくなりますわ」
「さすがにそれは仕事ができなくなるので、困るな」

 メイドさん改めメアリーを安心させるように俺はキッチンカーの性能を話す。
 信じてもらえるかはわからなかったが、エリスが素直に信じたし快適な旅をしてきたこともあって納得してくれたようだ。
 村の中までキッチンカーで進んでいくと、驚いた村長さんがガタイのいい男達と共に姿をみせた。
 男達は鍬や鋤を持っていて、キッチンカーを警戒している。
 だが、警戒は俺がアルヴィンからもらった旗を振ったことで解かれた。

「領主様からの救援の方々だったのですね」
「はい、父上の名代としてわたくし、エリス・ド・ヴァルディールが来ましたわ」
 
 キッチンカーから降りた俺達を迎えた村長の前にエリスが一歩出て、カーテシーを決める。
 ドレスではなく、動きやすい服ではあるものの挨拶は優雅だった。

「タケシ、周囲の警戒に【夜鴉】のメンバーを行かせたわ。この村へ先に派遣された冒険者チームと話がしたいんだけど、村長さん知っているかしら?」

 遅れて、馬に乗ってカリンが来るとタイミングよく先遣隊のリーダーらしい男が姿を見せた。
 男は筋骨隆々で、右手が銀色の義手になっている。
 鎧や顔の傷の具合が歴戦の猛者であることを示していた。
 
「俺が先に来た冒険者チーム【グリムリッジ】のリーダー、ダリウスだ」
「【夜鴉】のリーダー、カリンよ。情報交換をしたいけど、立ち話もなんだから食事しながらにしましょう」
「食事と申されても、この村は今、困窮状態でおりまして……」

 村長が申し訳なさそうにいうが、カリンが俺にウィンクをする。
 キッチンカーでもてなせという訳だ。
 このあたりの進行の仕方はさすがである。

「大勢の人が集まれる広場はどこですか?」
「ああ、あちらに家が壊れて逃げて来た者たちが集まっている場所があるぞ」
「それはちょうどいい。そっちに向かって移動させるんで離れていてください」
 
 俺は村長やダリウスたちを離してから、キッチンカーを走らせ広場へと向かった。

◇ ◇ ◇
 
 向かった広場では疲労の色の濃い村人や、怪我している村人を癒している僧侶の女性がいた。
 キッチンカーが近づいてきている音に村人たちが驚き、馬もなく動いている車に興味を持った子供が近づこうとするのを親が止めている。
 俺が広場の一角に到着してから、屋台を広げて準備を進めていると興味深げに人が集まってきた。
 ラーメンをゆで、スープを煮込む匂いが漂ってくると、広場のいたるところからお腹のなる音が聞こえてくる。

「メアリー、エリス、俺がどんどん作っていくからラーメン配っていってくれ」
「かしこまりました、タケシ様」
「わかりましたわ!」

 村人たちは温かいラーメンを受け取り、食べたことで元気を取り戻し、笑顔を浮かべていった。
 その姿をみるだけで、俺の心もあったかくなる。

「タケシ! 私たちにはギョーザと缶ビール頂戴!」
「つくりはするが、自分で取りに来てくれ」
「仕方ないわねぇ、まぁ、村人優先だからしょうがないか……」

 ダリウスと話し合っていたカリンがキッチンカーの近くまできて注文をすると、俺はラーメンを作りながら答える。
 冷蔵庫からチルド餃子を出して、焼いても行く。缶ビールも出してカウンターに置けば、カリンがすぐにとってダリウスに渡した。
 開け方に困っていたダリウスに飲み方を実践して見せて一口飲んだカリンは「くぅぅ~」っとビールのCMのような声を上げる。
 未婚の女性があげていい声じゃない気がするが見てないことにした。

「うまい! なんだ、この酒は! おい、ガロン。お前も飲んでみろ、飛ぶぞ!」
「ドワーフのワシを酒で飛ばそうなどと……うっっまっ!」

 ダリウスの仲間であるドワーフのガロンは缶ビールを飲むと目を見開いて驚く。
 ドワーフをうならせれるなんて、日本のビールも捨てたもんじゃなかった。
 その後は、酔いが回りきる前に救援物資を配るように俺はカリン達にお願いした。
 村の警戒に出てもらうためにも、アルコールは控えめにしてほしいというのもある。

「カリーン! モンスターが村のほうに近づいているっス!」

 空で巡回警備をしていたミアがカリンに空から大声をかけると、カリン達は酒で緩んでいた顔をキリッと引き締めた。
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