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三杯目 疲れた体にガッツリチャーシュー麺

第1話 ラーメン屋、領主から招待される

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■『夜鴉』ホーム タケシの自室

 夜市も終わり、しばらくした日の朝。
 コンコンという扉のノック音で目が覚めた。

「ん……こんな朝から、なんなんだ」

 ふぁと気の抜けた欠伸をしながら立ち上がり、扉を開ける。
 そこには手紙というには格式ばった封筒を持ったカリンが立っていた。

「おはよ、タケシ。あなたにヴァルディールの領主であるアルヴィン男爵から招待状よ。キッチンカーを庭園パーティで披露してほしいそうよ」
「領主様のお屋敷で庭園パーティなんて……どうしたものか、招待状来ているから断るのもなぁ……」

 俺は招待状を受け取りながら、頭を掻く。
 かしこまった場所とキッチンカーはあまり相性が良くないように思えるが、リクエストがあるならいかなければな。
 そういえば、この街に住んでいるのに未だに領主に会っていないのも確かに印象悪い気がしてきたぞ。
 招待状を開き、中身を確認した。

「開催日は1週間後で、時間は朝か昼頃までか……何か新しいネタを用意したいところだなぁ……」
「私も領主様に呼ばれているから、一緒にいくわね。当日は楽しみにしているわ♪」

 俺にウィンク1つとばすとカリンが俺の部屋から廊下へと出ていく。
 たしかカリンも元貴族だったか? 貴族の付き合い方について、また話をしておこう。

「さて、俺も朝飯食って、孤児院の方へ出向くか」

 うーんと伸びをした俺は首をゴキゴキと鳴らしてから、部屋を後にした。

 ◇ ◇ ◇

■孤児院前

 いつもの孤児院前でラーメンと餃子を作って、子供たちに出していく。
 美味しそうに食べていく子供たちを眺めながら、俺は悩み続けていた。

「貴族様相手だからなぁ……鶏皮醤油ラーメンの美肌効果は求められていると思うからだすけど、他にもう一つネタが欲しいなぁ」
「なーにー? 何を悩んでるのよー」

 珍しく俺が悩んでいるのを気にしてか、ルーミラが俺の目の前に飛んでくる。
 つんつんと鼻をつついてくるが、不思議と嫌じゃなかった。

「貴族の庭園パーティでこの屋台だすんだが、料理に一品何か増やしたいなとな……」
「ふぅーん。あ! 夜市の時に隣の店がクレープ出してたじゃない? あまーいの! ああいう甘いのタケシの屋台じゃださないの?」

 ルーミラの言葉で俺は目が覚めた。
 そうだ、メインの料理ばかりを気にしていたが、デザートというジャンルもあるじゃないか!
 俺はルーミラのアドバイスに従い、新しいメニューを探す。
 そして見つけた……向こうの世界で子供から大人まで大好きなを……。

「何なのそれ?」
「これはな……みんな大好き、チュロスだ」

 ルーミラの疑問に俺はイイ顔をしながら答えた。
 
「ちゅろす? また聞いたことのないものね……甘い奴なの?」
「そういうことだ。まぁ、食べてみてくれよ」

 俺が電子レンジで解凍し、トースターでこんがりと焼き上げたチュロスを皿の上に置き、チョコレートをかけてルーミラの前に置いた。
 チョコレートがかかっている部分を削り取ったルーミラが少しかじるように食べる。
 一口食べたら、目を大きくして驚き、そのまま二口、三口と食べすすめている様子を見る限り当たりのようだ。

「どうだ、甘くておいしいだろ?」
「タケシの料理ってどれも美味しいのはなんで!?」

 ルーミラが大きな声を出したことで、ワラワラと外で遊んでいた子供たちが集まってくる。
 子供たちに向けて、手に持ちやすい短めのチュロスを渡していった。
 
「みんなも、試食してくれ。美味しかったなら、これも毎日食べさせてやるぞ」
「あまーい!」
「おいしい!」
「もういっぽんちょーだい!」

 子供たちはやっぱり甘いものが好きなんだなと思い、俺はチュロスを追加で用意していく。
 その中にルーミラがちゃっかり混ざっていたのを俺は見逃さなかった。

◇ ◇ ◇

 ——数日後

 俺はカリンと共に領主の館の前にいる。
 服装はカリンに見立てて貰って、それらしいのを着ていた。
 キッチンカーで作るときは着替えるが、挨拶までは来ていた方がいいとのことである。

「さぁ、挨拶に行くわよ。挨拶といっても男爵は元冒険者だから、そんなにうるさくないわよ」
「そりゃ、気楽にできてうれしいねぇ」

 襟を整えて、俺は気合いを入れて館の中へと案内されるがままに入っていった。
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