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二杯目 お肌プルプル鶏皮醤油ラーメン
第6話 ラーメン屋、夜市の参加を決める
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■商業ギルド ギルドマスターの部屋
モミジさんが食べに来た次の日。
ちょうど店休日だったので、俺は商業ギルドを訪問していた。
来訪を告げるとギルドマスターの部屋へと案内される。
部屋へ入る前になんとなく身なりを整えてから、扉をノックした。
「入ってくれたまえ」
モミジさんの力強くも優しい声が扉越しに聞こえてくる。
俺は扉を開けて、中に入り一礼をした。
「お時間作っていただきありがとうございます」
「かけたまえ、こちらの資料を見てくれ」
モミジさんが執務机から立つと、応接用のテーブル前の椅子に座り直し、俺も対面側で座った。
秘書だろうか、理性的な眼鏡の若い男性から彼女は資料を受け取ると俺の前に差し出してくる。
「拝見します」
この役所で書類のやりとりをしているような感覚はブラック企業の仕事時代を思いだした。
痛くなる胸を押さえて、資料をみると夜市の参加条項が書いてある。
「一度限りの参加で金貨5枚って、高すぎやしませんか?」
思わず、参加費用の高さに俺は眉をしかめた。
1日開けるだけで、その費用は高すぎる。
俺は払えるが、原価を払っている人たちには重い出費になるのは明らかだ。
だが、中身を見る限りは場所によるものと、盗難防止等のために衛兵の費用も入っているようである。
内訳が明確に書かかれている分、理解はできるものの高いものは高い。
「それがね、販売時間は日が落ちてから朝日が昇るまでなので、そうでもないのさ。この街は冒険者も多いので、出入りの時間に差もあるから十分売り上げは立つ」
「そうなんですか……」
ふふんと得意げに鼻を鳴らしたモミジさんは楽し気にふわふわの尻尾を揺らす。
掴んでモフモフしたい衝動に駆られるが、ここで手を出したらいろいろ終わりそうなので我慢した。
「その際にはぜひ、この間の『びぃる』を出してくれ。あれはいいものだ」
「夜市だから、アルコールは出した方がいいですよね」
「あの時は飲めなかった酒にも期待しているぞ、値段は5銅貨くらいがいいんじゃないかな」
モミジさんがうんうんと頷きながら話を進める。
商業ギルドのお偉いさんの感覚なので、まずはこれに従っていればいいという安心感があった。
「夜市ってどれくらいの頻度でやっているんですか?」
「一月に1回程度だね、毎月満月の夜にやっているよ。今月のは終わったので、来月の参加のお誘いだよ」
基本的には一度参加したら何かがない限りは継続参加となり、費用を払って確定する形のようだ。
となればと、俺は〈アイテムボックス〉から金貨を5枚取り出して、テーブルに置く。
「継続参加するかはわからないですが、せっかくのお誘い1度は参加してみたく思います」
「キミならばそう言ってくれると思ったよ。かなり人がごった返すから、人手を増やすことも検討したまえ」
要件は終わったと、モミジさんは参加費の金貨を受け取ると俺を出口まで見送ってくれた。
俺は一礼をしてからギルドマスターの部屋を後にする。
「さぁて、人手を増やすか……どうしたもんかなぁ……」
後頭部を掻きながら俺は商業ギルドから、なんとなく街の酒場へと足を向けるのだった。
■ヴァルディール 酒場『一角亭』
ヴァルディールの中央広場から少し離れた静かな通りに位置する「一角亭」は、古めかしいが趣のある石造りの建物だ。
屋根には鮮やかな赤い瓦が使用されており、入り口には宿屋と酒場の二重の看板が掲げられている。
看板にはホーンラビット(角兎)のイラストが描かれており、訪れる客たちに勇気と安らぎを与えていた。
俺が一角亭に入ると、いらっしゃいませーと明るいウェイトレスたちの声が聞こえる。
「タケシさん、珍しいですね。何か食べていきますか?」
「そうだな、ホーンラビットのシチューとパンを1……2人前で」
「ふふん、それでいいのよ。タケシだけに美味しい思いはさせないわ」
看板娘であるエリーゼに注文をするとき、俺の目の前にルーミラが現れたので、人数を増やした。
この娘は見た目のわりによく食べるので、人間の1食分の食費がかかる。
しかし、呼び出さないのにやってこれるようになっているのはどういうことだ?
「昼時を少しすぎているからか、多少空いているな」
俺は空いているテーブル席に座って、周囲を見回すがパラパラとしか人の姿はない。
その方がゆっくりできると、俺はシチューの完成を待ちながら他のウェイトレスに声をかけた。
「ユウカ、マイナ、ちょっと来てくれ」
「は~い」
「ええ、今行きますわ」
小柄で可愛らしい容姿。赤みがかった茶髪のショートカットで、明るい笑顔がチャームポイントのユウカだ。
落ち着いた栗色の髪を肩まで伸ばしていて、灰色がかった瞳と柔和な表情が印象的なマイナ。
エリーゼと合わせて3人娘と呼ばれる人気ものの二人が俺のテーブルにやってきた。
「二人にさ、ちょっとした相談ごとがあるんだが……バイトやってみないか?」
「「エッチなのは嫌ですよ」」
「そんな仕事じゃない!?」
一体、俺はどんな奴だと思われたんだ。
二人の冷たい視線を受けて、さめざめとなく。
「やーいやーい、タケシのエッチ―」
ルーミラも悪ノリすんじゃない!
モミジさんが食べに来た次の日。
ちょうど店休日だったので、俺は商業ギルドを訪問していた。
来訪を告げるとギルドマスターの部屋へと案内される。
部屋へ入る前になんとなく身なりを整えてから、扉をノックした。
「入ってくれたまえ」
モミジさんの力強くも優しい声が扉越しに聞こえてくる。
俺は扉を開けて、中に入り一礼をした。
「お時間作っていただきありがとうございます」
「かけたまえ、こちらの資料を見てくれ」
モミジさんが執務机から立つと、応接用のテーブル前の椅子に座り直し、俺も対面側で座った。
秘書だろうか、理性的な眼鏡の若い男性から彼女は資料を受け取ると俺の前に差し出してくる。
「拝見します」
この役所で書類のやりとりをしているような感覚はブラック企業の仕事時代を思いだした。
痛くなる胸を押さえて、資料をみると夜市の参加条項が書いてある。
「一度限りの参加で金貨5枚って、高すぎやしませんか?」
思わず、参加費用の高さに俺は眉をしかめた。
1日開けるだけで、その費用は高すぎる。
俺は払えるが、原価を払っている人たちには重い出費になるのは明らかだ。
だが、中身を見る限りは場所によるものと、盗難防止等のために衛兵の費用も入っているようである。
内訳が明確に書かかれている分、理解はできるものの高いものは高い。
「それがね、販売時間は日が落ちてから朝日が昇るまでなので、そうでもないのさ。この街は冒険者も多いので、出入りの時間に差もあるから十分売り上げは立つ」
「そうなんですか……」
ふふんと得意げに鼻を鳴らしたモミジさんは楽し気にふわふわの尻尾を揺らす。
掴んでモフモフしたい衝動に駆られるが、ここで手を出したらいろいろ終わりそうなので我慢した。
「その際にはぜひ、この間の『びぃる』を出してくれ。あれはいいものだ」
「夜市だから、アルコールは出した方がいいですよね」
「あの時は飲めなかった酒にも期待しているぞ、値段は5銅貨くらいがいいんじゃないかな」
モミジさんがうんうんと頷きながら話を進める。
商業ギルドのお偉いさんの感覚なので、まずはこれに従っていればいいという安心感があった。
「夜市ってどれくらいの頻度でやっているんですか?」
「一月に1回程度だね、毎月満月の夜にやっているよ。今月のは終わったので、来月の参加のお誘いだよ」
基本的には一度参加したら何かがない限りは継続参加となり、費用を払って確定する形のようだ。
となればと、俺は〈アイテムボックス〉から金貨を5枚取り出して、テーブルに置く。
「継続参加するかはわからないですが、せっかくのお誘い1度は参加してみたく思います」
「キミならばそう言ってくれると思ったよ。かなり人がごった返すから、人手を増やすことも検討したまえ」
要件は終わったと、モミジさんは参加費の金貨を受け取ると俺を出口まで見送ってくれた。
俺は一礼をしてからギルドマスターの部屋を後にする。
「さぁて、人手を増やすか……どうしたもんかなぁ……」
後頭部を掻きながら俺は商業ギルドから、なんとなく街の酒場へと足を向けるのだった。
■ヴァルディール 酒場『一角亭』
ヴァルディールの中央広場から少し離れた静かな通りに位置する「一角亭」は、古めかしいが趣のある石造りの建物だ。
屋根には鮮やかな赤い瓦が使用されており、入り口には宿屋と酒場の二重の看板が掲げられている。
看板にはホーンラビット(角兎)のイラストが描かれており、訪れる客たちに勇気と安らぎを与えていた。
俺が一角亭に入ると、いらっしゃいませーと明るいウェイトレスたちの声が聞こえる。
「タケシさん、珍しいですね。何か食べていきますか?」
「そうだな、ホーンラビットのシチューとパンを1……2人前で」
「ふふん、それでいいのよ。タケシだけに美味しい思いはさせないわ」
看板娘であるエリーゼに注文をするとき、俺の目の前にルーミラが現れたので、人数を増やした。
この娘は見た目のわりによく食べるので、人間の1食分の食費がかかる。
しかし、呼び出さないのにやってこれるようになっているのはどういうことだ?
「昼時を少しすぎているからか、多少空いているな」
俺は空いているテーブル席に座って、周囲を見回すがパラパラとしか人の姿はない。
その方がゆっくりできると、俺はシチューの完成を待ちながら他のウェイトレスに声をかけた。
「ユウカ、マイナ、ちょっと来てくれ」
「は~い」
「ええ、今行きますわ」
小柄で可愛らしい容姿。赤みがかった茶髪のショートカットで、明るい笑顔がチャームポイントのユウカだ。
落ち着いた栗色の髪を肩まで伸ばしていて、灰色がかった瞳と柔和な表情が印象的なマイナ。
エリーゼと合わせて3人娘と呼ばれる人気ものの二人が俺のテーブルにやってきた。
「二人にさ、ちょっとした相談ごとがあるんだが……バイトやってみないか?」
「「エッチなのは嫌ですよ」」
「そんな仕事じゃない!?」
一体、俺はどんな奴だと思われたんだ。
二人の冷たい視線を受けて、さめざめとなく。
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